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人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

正解がある時代には 「○○は必要か?効率的か?」が有効だった…(第128号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

11月1日に弊社Facebookページに投稿した記事:「グローバル人財」の「信頼性」と「信頼感」について、直接お目にかかった複数の方から賛同の声をいただけたので、今回は、これに絡んだ話をご紹介しようと思います。

 

「英語が多少使える、他者と置き換え可能な人財」は要らない

上述の投稿記事では、

「グローバル人財になる」「グローバル人財を育てる」と言う話をするときには、まるで「コモディティ」のような「言葉が通じるだけの、置き換え可能な、標準的な人材」をイメージするではなく、「市場競争力があり、高い付加価値を生み出せる、代替がきかない人財」(コンピューターやロボットに期待できない解、他の人には出せない解を出せる人財になる/そういった人財を育てること)をイメージする方が適切な場合が多いのではないか

ともお伝えしていました。

組織を運営する立場の人々からすれば、誰にでもできる仕事や単純作業をやってもらいたい場合、低賃金の外国人労働者を雇ったり、高給取りのシニアの社員を素直で柔軟で賃金が安くて済む若手社員に置き換えていったりすればいい、あるいは、口答えせず休まず正確に働いてくれるコンピューターやロボットに置き換えていけばいいと考えるようになっていくのは自然な流れのように思います。つまり、「英語が多少使える、他者と置き換え可能な人財」には、確かに「価値」があるけれど、そういった人財が市場に増えつつある今では、そういった人財の「付加価値」は相対的に非常に低くなってきているということです。

現に、グローバル企業間の人財獲得競争では、「年収600万円で3人採るより、1800万円出して、組織に何らかの便益をもたらしてくれることが期待できる、プロフェッショナル・マインドを持った本物のスペシャリストを1人採る」といった類の「一本釣り採用」の姿勢が珍しくありません。代替可能な「そこそこできる社員」を大勢抱えていることに意味のある組織なのか、そうではないのか、みなさんが所属している組織について真剣に考えることが求められる時代に、日本もなりつつあるのではないでしょうか。

この辺りの事情に配慮して、人財育成といったことを考えるなら、「大手研修会社から定期的に送られてくる資料から、何となく選んだ研修を実施して終わり」を繰り返している状況や、「コーチング研修を導入する場合も、何も本格的な内容までやる必要はないんです。さわりのところだけ半日くらいでやっていただければ大丈夫なんで…。」といった姿勢について改めて検討することも大切なのではないでしょうか?

※1 参考
第124号 あなたの組織にとって、○○研修とは「何のための手段」か?
第125号 「場数」の踏み方;「経営判断」としての人財育成

 

「発見的過程」を自力で進めることができる人財、育てていますか?

冒頭で紹介した投稿記事には、前段でご紹介した内容と併せて、次のような内容も書いていました。

「氷が溶ければ何になる?」と問うたときに、「水になる」と答えることはもちろん大切ですが、「春が来る」といった解を出せる感性も許容し、目的に応じて両者をバランスよく用いていくことが、高付加価値を生み出し続けるビジネス/組織には大切なのではないか

この辺りの考えは、「コンフリクト・マネジメント入門」でお伝えしているアプローチの1つや、「デザイン思考」に関するテキストを扱った、「変化促進研究会」(C研)での議論などが
元になっています。そこで、今号では、C研での議論について独自にまとめた図表1「知識のファネルとフレームワーク質問力®の対応関係」をご紹介しようと思います。

「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力」の対応関係

図表1:「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力®」の対応関係

知識のファネルでは、「謎→発見的過程→アルゴリズム」と問題解決の段階が進んでいく様子を表しています。

第126号"「正解がない」のではなく「適切な問いがない」? 鉄道と四輪駆動車"で登場していた、「正解がある問題に対しては『鉄道』型の問題解決策、正解がない問題に対しては『四輪駆動車』型の問題解決策」という話と関連させるなら、「鉄道型アプローチは、アルゴリズムの段階」「四輪駆動車型アプローチは、発見的過程の段階」に相当すると言えるでしょう。さらに、前段の話と関連させるなら、「鉄道型アプローチ・アルゴリズムの段階内だけで活躍する人財は、代替がきく年収600万円の人財止まり」であり、「四輪駆動車型アプローチ・発見的過程の段階で活躍したり、四輪駆動車型アプローチ・発見的過程の段階を鉄道型アプローチ・アルゴリズムの段階に移行したりできる人財は、代替がきかない年収1800万円の人財にでもそれ以上にでもなりうる」といった比喩で表現できるのかもしれません。(…「アルゴリズムの段階」と「発見的過程の段階」の違いを際立たせるための、少々乱暴な表現であることは否めませんが、その違いに関するニュアンスは伝わったのではないでしょうか。)

アナリスト(情勢解説者、特定分野の分析者)や株主などの顔色をうかがい、信頼性の高い「アルゴリズム」の実施にばかり専念する組織は、常日頃から変化を起こすリスクを避けようとすることで、それまでの「アルゴリズム」がまったく通用しないような出来事・状況(過去に対応した事例とは似ても似つかない事態)が突然発生するリスクを高め、また、状況変化に対応する能力(思考力、柔軟な適応力)を徐々に低下させている傾向にあります。(…あなたが所属する組織・部署の人々が、「正解は何?」「模範解答は何?」と、「自分で物事を考えず、静的な知識を求める人」ばかりだったら、その組織・部署は「アルゴリズムの段階」にどっぷり浸かっているのかもしれません。)

ちなみに、第5期前半のC研テキストに登場した事例の中で、高度な芸術性を誇るエンターテイメントとして有名なシルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)が、収益の約70%を、研究と新しいショーの開発に投資している(…「発見的過程」の段階への投資)という話があり、参加者の間で驚きを生んでいました。

さて、あなたが所属される組織では、「アルゴリズムの段階」を主に担う人財と「発見的過程の段階」を主に担う人財がどれくらいの比率でいらっしゃるでしょうか? そして、それは今後もそのままで良さそうでしょうか?

 

「○○は必要か?効率的か?」vs「○○は有効/妥当そうか?試す価値はありそうか?」

多くの組織では、短期的な視点に立ち、事業の継続性、一貫性あるいは効率性を重視するため、「信頼性と妥当性のバランスを図ろうとする取り組み」の事例を示されても、自組織の価値観を脅かすもの(あるいは、自己保身の障害など)と見なし、敬遠します。

一方、長期的な視点に立った戦略を持つ組織では、競合他社よりも早く「知識のファネル」を進んでいくこと、また、新たな活動に取り組むために時間や資本を自由に割り当てることに取り組むなど、「市場競争力を生み出すための活動」も重視し、「知識の探求と活用」「信頼性の追求(必要なもの・確実なものだけを着実に積み上げていこうとする姿勢)と妥当性の追求(試すだけの価値があることを実験しようとする姿勢)」「改善とイノベーション」のバランスを図ろうとします。(…効率性を追求することでもたらされた結果・便益を活用して、次の「謎→発見的過程」に取り組むなど。)つまり、真逆のようにも思えるアプローチのどちらか一方を妥協して選ぶのではなく、「問題解決・意思決定の二重構造」を意識して事に当たるのが大切 […第98号 "優れた経営者・リーダーは「ベストプラクティス」を鵜呑みにしない" より転記 ] なのであって、双方の選択肢よりも高い視座から、これまでになかった包括的なアプローチ [ 正(テーゼ:ある命題)と、反(アンチテーゼ:その命題と矛盾する別の命題)から、アブダクションなどを用いて、合(ジンテーゼ:それらを統合した命題)を生じるアプローチ] を生み出す可能性についても探求しようとするのです(※2、※3)。

※2 「アブダクション」に関する簡易解説
(「コンフリクト・マネジメント入門」資料より一部抜粋)

(1)演繹(deduction)の例
   ・すべてのドイツ人は真面目だ。
   ・ラインハルト(Reinhard)は、ドイツ人だ。
∴ ・ラインハルトは、真面目だ。
演繹では、前提が真であれば、結論も必ず真になる(…結論の内容は、暗黙の内に前提の中に含まれている)ため、演繹からは新しい情報は現れてこない。

(2)帰納(induction)の例
   ・ドイツ人のラインハルトは、とても真面目だ。
   ・ドイツ人のジークフリード(Siegfried)も、とても真面目だ。
∴ ・ドイツ人は、みんな真面目だ。
帰納では、2つの前提が真であっても、結論が真であるとは限らない。帰納は「一を聞いて十を知る」ように、いくつかの事例から一般化して結論を導く。

(3)アブダクション(abduction;仮説形成)の例
   ・すべてのドイツ人は真面目だ。
   ・ラインハルトは、とても真面目だ。
∴ ・「ラインハルトは、ドイツ人」なのではないか?
「ラインハルトは、ドイツ人」という仮説を思いついたことによって、「ラインハルトは、とても真面目だ」という事実がうまく説明される。アブダクションでは、「一般命題」と「事実命題」を矛盾なくつなぐ命題を、仮説として生成する。

※3 参考
第112号 「イノベーションのDNA」と、専門領域に依らない「質問力」
第127号 事例概説:英語を話し、マラソンを完走し、あの彼と親密になりたい

あなたが所属される組織では、「熟練、信頼性、効率優先」のアルゴリズムの段階だけにとどまっておらず、「独創性、妥当性、学習優先」の発見的過程の段階における活動も奨励し、イノベーターを育てたり、状況対応力を高めたりするといった形での人財育成に力を入れていらっしゃるでしょうか?

意識していないと短期的視点に引きずられ、ほとんどの組織が、事業の継続性・一貫性・効率性に直接役立つ活動ばかりを行なってしまいがちです。そういった動きに、「実験しようとする意欲」「新奇な状況に遭遇した時の自発的な対応」「柔軟な方向性の転換」「自己表現の機会に対する積極的な反応性」の向上に役立つ取り組みを調和させ、組織の長期的な反映に繋げるには、どのようにすれば良いのでしょうか?

正解がない時代の組織の方向性、人財育成の方針などを検討される際のきっかけとなるような話題が提供できたようであれば幸いです。

※4 発見的過程に取り組むことで期待できる別のご利益
(…C研での議論を基に整理)
人は創造的なプロジェクトに従事している時には幸福感を覚えている。チームが、さまざまな理由で自発的に、挑戦しがいのある問題解決のために集まったのであれば、そのチームのメンバーは毎日働きたいと思う。意義を感じられる課題、自分の能力を存分に発揮しなければいけないような挑戦しがいのある課題は、企業がイノベーターの流出を防ぐ際に最も効果的なツールかもしれない。

さて今回は、11月1日に弊社Facebookページに投稿した記事:「グローバル人財」の「信頼性」と「信頼感」に関連する話を軸に、「市場競争力があり、高い付加価値を生み出せる、代替がきかない人財」「発見的過程を自力で進めることができる人財」を育成することが大切、信頼性の高い「アルゴリズム」の実施にばかり専念する短期視野の組織は危険、「知識の探求と活用」「信頼性と妥当性」「改善とイノベーション」のバランスを図ることが大切などいった主張をご紹介しました。

こういった視点に立ってみた時、あなたは、「状況に対応しつつ学習する能力」の根幹を成す「フレームワーク質問力®」や、「課題設定力を養う合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」 について、どのような印象をお持ちになり、何を考えられるでしょうか? 何か少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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