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人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

優れた経営者・リーダーは 「ベストプラクティス」を鵜呑みにしない(第98号)

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こんにちは、合同会社5W1H代表の高野潤一郎です。

先日、「ベストプラクティス(※)の収集に凝っている割には、問題解決や意思決定が苦手なままなのでどうにかしたいんです。」という相談をされた方がいらっしゃったので、今回は、少しその辺りの話について書いてみようと思います。

※ベストプラクティス
ある結果を手に入れるために、最も効率的あるいは効果的とされる実践事例、方法など

「状況の違い」を軽視・無視して、 「ベストプラクティス、結論」に飛びつく

「ベストプラクティス」や、特定状況下でしか通用しない「結論」に飛びつくことの多い人や組織というのは、一般的に「自分(たち)の頭で考えるのが苦手」なようです。
…他者/他社がうまく問題を解決したという話を知ると、他者/他社の状況と違った部分があっても、ほとんど自分/自社用に変更や修正を加えることもせず、ほぼそのまま他者/他社の解決策をマネをしようとする方が多いです。

この背景として、彼らが、特定の問題に対して特定の解決策がうまくいくには、「環境要因の影響が大きい」ことを軽視・無視する傾向があるため、せっかく問題解決に有用なヒントを含む他者/他社の事例を入手しても、自分/自社に適用するために活かし切れていないという状況があると認識しています。
…数学の「例題」の解き方をなぞることはできても、その解法の本質が何なのかについて理解できていないため、少し見かけを変えただけで「応用問題」を自力で解くことができない状況に似ていますね。

 

問題解決・意思決定の二重構造

一方、私が存じ上げている範囲でしかありませんが、有能な問題解決者・意思決定者と目される人々の共通点の1つとして、

  • 「改善を図る」「効率を高める」といった(現在の延長線上にある解決策を追求する)「線形思考」「シングル・ループ学習」のみならず、
  • 「問題認識の土台」や「前提」を問い直し、「関係者だけでは思いつかなかった認識や戦略へのジャンプ」を導くような「非線形思考」「ダブル・ループ学習

を組み合わせて、問題解決・意思決定に用いていることが多いという特徴を挙げることができると思います。

別な言い方をすれば、有能な問題解決者・意思決定者は、

  • 状況の変化に即座に対応できるような「具体的で柔軟性のある"処置"」と、
  • 対象とするシステム全体を見渡して、解決の方向を決める基準となるような「やや抽象的かもしれないけれど、汎用性と一貫性を備えた"処理"」

の両方を考慮した「二重構造」で問題解決・意思決定に当たっているというわけです。

そして、このことによって、時々刻々と変わる状況に対応しながら、大局的には望ましい方向に向けて、問題解決・意思決定を展開していくことができるのです。


 参考情報: 2010年06月07日配信のニューズレター記事:「問題設定のパラドクス、ブレインとコーチ

  • 解決策を実行するのは、感情や葛藤や人間関係上の課題など、心理学的側面の影響を受けるヒトであること」に配慮する
  • 「シングル・ループ学習」「ダブル・ループ学習」
  • その問題は、本当に解決すべきですか?
  • わかっていないと「問題」について相手に説明できないはずなのに、「相手がわかるように説明をするプロセス」を体験することによって、「初めて問題が把握できる」

ほか


 解決策、2種類を区別していますか?

では、上述のように、「二重構造の備えで問題解決・意思決定に当たる」には、具体的に、どうすればいいのでしょうか?

弊社では、(会社などの組織の問題を扱う場合であれば、もちろん、組織の使命や存在意義などを明確にした上でということですが)適切な問題解決が行えるよう、「問題」の種類を見極め、それに合った「解決」プロセスを選ぶことも最初の段階で大切ではないかと考えています。

…問題の「種類」を見極めた後で、問題の「構造」に視点を移していくということを指しています。

 

2011年05月20日配信のニューズレター:「新セミナー:妥協せず、対立を併存・超越して、問題解決」では、「問題」と呼ばれるものの種類として、次のようなものも挙げていました。


  • なぞなぞ(riddle):出題者が心に抱く答えが正解である問題。
  • バズル(puzzle):論理的にただ1つの正解が決まる問題。
  • 困難(difficulty):複数の問題がある状況。
  • トラブル(trouble):状況としての困難・悩み・苦しみ。
  • 問題(problem):取り上げて、討議・研究・解決すべき事柄。
  • イシュー(issue):問題の核心、争点。
  • パラドクス(paradox):一見、相互に矛盾しているように見える状況・考えなどが、併存できること。またその状況や考えの表現。
  • ジレンマ(dilemma):対象とする問題に対して2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも不利益を被ることがわかっているため、意思決定できていない状態。
  • 対立(conflict):相対して並び立つこと。利害関係の密接なものどうしが張り合うこと。⇔ 並立=同時に並び立つこと。
  • 挑戦(challenge):能力やスキルが試される新しい/難しい問題。

 ※「コンフリクト・マネジメント入門」セミナーでは、別の切り口から、これら問題を5種類に整理し直し、それぞれについて解説しています。 もちろん、5種類と言っても、先日ご紹介した「対立モード」とは別ですので、ご注意ください。


 

そして、「問題」に種類があるように、「解決」にも種類があります。

今のところ、弊社では、「解決」には、XとYの2つの内容が含まれるのではないかと考えています。

X-1)謎を解き明かすこと、正解を導き出すこと

X-2)事件や問題を、特定の状態に導き、片をつけること
(すっきりさせて始末すること、決着をつけること)

Y)問題や困難に応じて、その都度、適切に対処すること
(特定の状態に落ち着くのではなく、状況変化等に応じて判断し、適切な対応を行うこと)

 

つまり、同じ「解決」あるいは「意思決定」という表現を用いても、

  • Xは、はっきり結論をつけて始末するという「処理」(processing)であり、
  • Yは、ある判断があって、一応の手を打つという「処置」(treatment)

を指しているということです。

 

1つ例を挙げておきます。

みなさんご存知のように、お腹が空いた際に、一度食事をすれば、永遠に「空腹」(空腹感という認識の話と、栄養不足という物質・エネルギー的な話の両方)という問題が生じないというわけではありません。

あるいは、「どうせいずれまたお腹が空くのだから…」と言って、「空腹にもかかわらず、ずっと食べない」というわけにはいきませんよね。

工場などで製品を生産する場合には、繰り返し発生する問題症状の根本原因を解決するという手段によって、二度と同じ問題が発生しないようにすることも可能(…「処理」が有効な問題解決)かもしれませんが、上記の「空腹」の例のように、状況変化に合わせてほぼ同じ解決策を用いること(飲食物の摂取;その都度の「処置」)が求められる問題というのもあるわけです。

ところが実際には、問題解決をするときに、「処置」をすべき問題に対して「処理」する方法を考え続けて行き詰まったり、「処理」すべき問題に対して「処置」を繰り返して問題を悪化させてしまったり...という方が多いのです。

このように、問題の種類によって、「処理」するのが良いのか、「処置」するのか良いのかが異なるといったことがあるため、「コンフリクト・マネジメント入門」セミナーの最初の段階では、「処理」が適切な問題か、「処置」が適切な問題かを見極めることを重視しています。
…セミナーでは、適切なのが「処理」か「処置」を見極める、簡単な方法についてもお伝えしています。

 

「コンフリクト・マネジメント入門」流に言えば、「解決」には、

  • 「処理」は、対立を無くして、理想や目的の実現を目指すアプローチと、
  • 「処置」では、対立を併存させつつ、理想や目的の実現を目指すアプローチ

の2種類があるということです。

※「コンフリクト・マネジメント入門」セミナーでは、こういった内容について学んだあと、「妥協せず創造的解決に向かうアプローチ」や「問題解決事例の紹介」「各自の身近な問題を扱っての演習と解説」に進んでいきます。(ただし、参加者からの質問などによって、内容が多少変更される可能性があることを、予めご了承いただければ幸いです。)

 

深みのある、成熟した大人な対応
…リーダーとして仲間を「上質な」問題解決に導く

2011年04月09日配信のニューズレター:「症状に飛びつかず、診断する; CPP参加者コメント」では、

  • 自分が考えている前提・推論の延長線上」で、問題の解決を図ろうとするのであれば、「コンサルタント」や「組織のブレイン」がいれば事足りるので、コーチは不要
  • 「コーチング3.0」と「問題設定」
  • 心理的抵抗や葛藤なども含めて、状況を整理し、本当に取り組むべき課題が何なのかを再設定する

といったことをお伝えしておりましたし、

2011年05月31日配信のニューズレター:「『単純化し過ぎる』という過ち」では、

アルバート・アインシュタインの言葉
●「すべてのものは可能な限り単純化すべきだ。
             しかし、単純化しすぎてはいけない。」
 (Everything should be made as simple as possible, but not simpler.)

をご紹介した上で、単純過ぎず、複雑過ぎず、当該問題を解決するのに「適切な複雑さ」を容認すること(…「良い加減」「いい塩梅」といった「中庸」をよしとする姿勢)が大切であることを、弊社では強調しているとお伝えしておりました。

すなわち、問題の種類などによっては、情報や材料不足で判断できないものについては、「応急処置」(その場しのぎの解決法、手っ取り早い解決策)や「対症療法」に飛びつかず、

  • 「<健全に>保留」するだけの器量、リーダーとしての器を育みつつ、関係者の協働を進める
  • 性急に「単純化し過ぎるという過ち」を犯さず、問題を解決するのに「適切な複雑さ」を容認する問題解決を展開する

といった、深みのある、成熟した大人な対応が求められるのではないか、という持論をご紹介しておりました。

…10代や20代であればまだいいのかもしれませんが、30代以降になっても、せっかちに「結論」を急ぐ傾向にある人は、「対立」を許容する「寛大さ」や「忍耐力」に欠けるなどと周囲に見られ、「他の方と入れ替え可能な、組織の歯車の1つ」や「便利な鉄砲玉」のように思われてしまうこともあるのではないでしょうか。また、仕事の面だけにとどまらず、プライベートでも、相手に「寛容さ」や「包容力」などを感じてもらえないようでは、長期に渡る良好な人間関係を維持するのに困難を覚えるようになるかもしれないですよね。

 

不明なことがあっても疑問を感じる部分について自主的に尋ねたりしようともせず、「具体的に言ってくれなかったからわからなかった」などとばかり言っているようでは、指示・命令待ちの作業員(…意思疎通ができる低賃金の外国人や、ロボットに置き換えられてしまい職を失う可能性が高まっていく人材?)のままでいるしかありません。…前号の話でいうところの、"幸福なうつ状態"(Happy Depression)です。

たとえ、今はまだ指示・命令を受け取る立場におられるとしても、

  • 受け取った指示・命令の内容・本質について自分の頭を働かせて咀嚼・消化し、自分独自の知恵を加えて行動すること、すなわち、
  • 自ら多少のリスクを冒しても期待された以上の付加価値を生み出そうという姿勢を持った人間だけが、

前号で言っていた「自分とは異なる人々をリードしていける人財」になっていけるのではないでしょうか。

今の自分はどんな人間で、今後はどんな人物になっていきたいのでしょう?

あなたはどのようにお考えになりますか。

 

変えれないことではなく、変えれることに焦点を当てる
…問題解決・意思決定に当たる際に有効な思考法は、学んで身につけることができる

(前号でも登場した)ウィリアム・ショックレー(William Bradford Shockley Jr. 教授、ノーベル物理学賞受賞)は、次のような言葉を遺しています。

●「考えることについて考えることは、考えを改善する。」
  (Thinking about thinking improves thinking.)

→自分(たち)自身の思考(のプロセス、クセや前提など)について考えることは、自分(たち)がより優れた思考方法を身につける上で、非常に有効である。(…高野の解釈)

 

当たり前かもしれませんが、弊社では、「変えれないこと」(…1日が24時間であること、1週間が7日間であることなど)ではなく、「変えれること」(…自分自身の考え方や意識の向け先など)に焦点を当て、時間・エネルギーといったコストやある程度のリスクをとった上で、「自ら変化を起こすこと」が大切だと考えています。

心身が健康であればどなたでも、今から、問題解決・意思決定に当たる際に有効な思考法を学んで身につけることができると信じています。

「でも、忙しくて...」という声が聞こえてきそうですね(笑)。

 

では、ちょっと想像してみてください。

あなたが忙しいと感じるときは、大抵、周りの人や取引先の相手やライバルも忙しいと感じているのではないでしょうか。

では、あなたは、いつ「変えれること」に焦点を当て、問題解決・意思決定に当たる際に有効な思考法を学ぶなどの「変化を自ら起こす」のでしょうか?

 

さて、大切なポイントなので繰り返しますが...有能な問題解決者・意思決定者は、

  • 状況の変化に即座に対応できるような「具体的で柔軟性のある"処置"」と、
  • 対象とするシステム全体を見渡して、解決の方向を決める基準となるような 「やや抽象的かもしれないけれど、汎用性と一貫性を備えた"処理"

の両方を考慮した「二重構造」で問題解決に当たっていると書いておりました。

 

もしあなたが、経営者、リーダー、次世代リーダー(候補)、マネジャー、起業家などであるなら、あるいは、そうなっていきたいのであれば、

  • 自分1人だけで結果を出せれば良いと考えるのではなく、自分が出せるような優れた結果・成果をチームの他の人たちに出してもらえるようにすることや、
  • さまざまな形の、無くしてはならない「対立」を「創造的な摩擦」として活用する思考法を身につけること、あるいは、
  • 深みのある、成熟した大人の対応で、関係者を問題解決に導く有能なリーダーとして成長を続けること

などに関心をお持ちになるのではないでしょうか。

 

弊社では、「コンフリクト・マネジメント入門」セミナー [次回開催:7月30日(土)、31日(日)@東京] なども開催しておりますので、上記内容に関心をお持ちであれば、是非、ご活用ください。

※セミナーの難易度について心配されている方へ
例えば、2011年7月4日配信のニューズレター:「人によって現実が異なるとはこういうこと!;対立の価値」の中でご紹介していた"多くの「対立」は、「認識の違い」から生じる"という箇所の文章や、 "図1:事実認識(主観的世界)の違い"についてご理解いただけるようであれば、参加を希望していただいて大丈夫です。
理論的な裏付けはありつつも、実用的・実践的な内容となるよう心掛けておりますし、わからないところに関しては、セミナーの場でお尋ねいただけますので、ご安心ください。

 

さて今回は、

  • 優れた経営者・リーダーは、環境要因の影響が大きい「ベストプラクティス」や、特定状況下でしか通用しない「結論」に飛びつかない
  • 「例題」の解き方をなぞることができても満足せず、その解法の本質が何なのかについて理解を深めた上で、「応用問題」を自力で解くことができるようになっていこう
  • 有能な問題解決者・意思決定者は、「処置」と「処理」の両方を考慮した「二重構造」で問題解決・意思決定に当たることで、時々刻々と変わる状況に対応しながら、大局的には望ましい方向に向けて、問題解決を展開していくことができる
  • 深みのある、成熟した大人な対応で、リーダーとして仲間を「上質な」問題解決に導こう
  • 自分とは異なる人々をリードしていける人財」になるためにも、自分独自の知恵を絞り、自ら多少のリスクを冒すことで、期待された以上の付加価値を生み出し続けよう
  • 考えることについて考えることは、考えを改善する。」(ウィリアム・ショックレー

などについてご紹介してきました。

 

あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか?

何か少しでもお役にたてれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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