人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

働き方?~「ピープル・マネジメント」や「法改正」も踏まえて~(第195号)

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内閣で「働き方改革担当大臣」が新設されるなど、さまざまなところ「働き方改革」への取り組みが始まっています。 さまざまな「制度」「仕組み」が報道されることが増えてきている近頃、「セマンティック組織開発」のすすめ~インフラ整備後の人財部門の在り方~ では、「『デジタル化の推進』は、『個別のアナログ対応の拡充』を可能にするため!」といった表現で、「個別対応」に力を入れていくのが大切という考え方をご紹介していました。

今回は、「人財育成・組織開発コンサルタントおよび「産・学・官・非営利組織のキャリア経験を活かした転職サポートも実施しているライフ・コーチ」としての立場から、「制度」や「仕組み」というハード面が整った後の、「個別対応」というソフト面の推進に意識を置きつつ、「働き方改革」に絡む内容を考えていきたいと思います。

 

ワークとライフの関係は? 望ましいのは、包含関係?

「ワーク・ライフ・バランス」(work-life balance:仕事と生活の調和)や「ワーク・ライフ・インテグレーション」(work-life integration:職業生活と個人生活の統合)といった表現の前提になっているのは、「『ワーク』と『ライフ』は、『分離』や『対立』するもの」という捉え方ではないでしょうか?

「分離や対立している状態」だからこそ、「調和や統合している状態」を目指しましょう!と言っているのではないでしょうか?

しかし例えば、経営者や個人事業主、研究者やアスリートや芸術家などに多い「プロフェッショナル」は、「ライフの一部(あるいは大部分)がワークである」という認識を持つ人がほとんどではないでしょうか?(図「あなたにとっての『ワーク』と『ライフ』の関係は?」を参照)

あなたにとっての『ワーク』と『ライフ』の関係は?

図:あなたにとっての「ワーク」と「ライフ」の関係は?
合同会社5W1H作成]

「良い考えやひらめきが生まれやすい状況」として、欧陽脩(おうようしゅう)が「三上(さんじょう)」(馬上(ばじょう):馬に乗って移動しているとき、枕上(ちんじょう):布団に入って横になっているとき、厠上(そじょう):トイレにいるとき)という表現を用いたりしていますが…遊んでいる最中であろうが、食事しているときであろうが、友人とバカ話をしているときであろうが、「一見、仕事とは関係のない状況であっても、意識のどこかで仕事のことを考えていて、ブレイクスルーにつながるアイディアを得る」(ワークとライフを意識的に分離させようとしても、無意識的には分離できていない)というのは、よくあることです。

このように、そもそも、「『ワーク』と『ライフ』は、『分離』していない」という人々も多いのではないでしょうか?

あなたにとっての、あるいは、あなたが運営されている組織やチームにとっての、「ワークとライフの望ましい関係」とは一体、どのようなものなのでしょうか?

 

組織の視点:ピープル・マネジメントを目指すのであれば…

冒頭でご紹介した、「セマンティック組織開発」「セマンティック人財開発」という観点の記事を書いた後、「機械とヒトが共存共栄を図る」上で、「ヒトは、セマンティックな(意味に関する)活動を担うことが大切!」という思いが強まってきたため、弊社で提供してきているエグゼクティブ・コーチングの内容を改変・拡充するついでに、独立させてもうひとつ「新たなウェブサイト」http://c-suite.5w1h.co.jp を制作しました。

そこでは、「ピープル・マネジメント」について次のように書いています。

(前略)そして、こういった時局の要請に応えるため、少数のタレント(Talent:「特定の事柄を上手に成し遂げる能力を持ち、プロジェクトや組織にとって適切な人財」あるいは「組織内外から選び抜かれた優秀な人財」)のマネジメントをしているだけでは不充分であって、

「全社員一人一人を自社の『個客』のように見なして接すると共に、『自分が会社のミッションの一部である』と感じてもらえるように接し、社員一人一人が『自分は、会社の所有者である』という『当事者意識』を持って働きながら『喜びや意義を感じることができる環境』を整備する」というピープル・マネジメント(People Management)に向かおうとする意識が、業種・業態・規模にかかわらず、さまざまな組織の間で高まってきています。(後略)

[ 出所:「状況変化に合わせた自己刷新を促す人財開発」と「タレント・プールを充実させる組織開発」を担う合同会社5W1Hの「エグゼクティブ・コーチング」ウェブサイト より転載 ]

「望ましい組織運営の在り方」という視点に立って考えると、組織構成員(非営利組織などがあるのは承知していますが、表記を簡略化するために、以下「社員」)には、「『自分が会社のミッションの一部である』という『当事者意識』を持って働いてもらえる状態」を実現したいと考える組織が多いのではないでしょうか?

…長くなってしまうので、「エンゲージメント」(Engagement:会社のために自発的に貢献しようとする状態;深い対話を通して、共感できる目的を共有して、自ら本氣で仕事に取り組む状態)「リテンション」(Retention:必要な人財を保持するための施策)に絡む話は、「エグゼクティブ・コーチング」のウェブサイトでご確認ください。

「単純作業や、嫌なことを含めた指示・命令内容をこなす代わりに、経済的報酬を得る」という「ワークとライフの分離が大きい」働き方ではなく、「組織の方向性と、個人の価値観や考え方が合致しているために、喜びや充実感などといった経済面以外での報酬を得る」という「ワークとライフの重なりが大きい」働き方をする社員が多い組織となるよう、仕事環境を整えたり、相互に働き掛け合ったりすることが、「優秀な人財の採用が困難化」「人財の流動化」が進む状況下で、組織に求められているのではないでしょうか?

仮に、ワーク(職業生活)を「公」、ライフ(個人生活)を「私」と表現するならば…「『公』のために常に『私』を捨てなければならない(自分の人生は犠牲や我慢の連続だ)と考えると、苦しさばかり感じてしまう」という人が出てきても不思議ではありません。 「『私』が伸び伸びと楽しみを感じつつ活躍することが、そのまま『公』の目的に適った貢献となる」という「公私一如」の状態を、可能な限り実現しようと努めるのが、組織の視点から大切なのではないでしょうか?

あなたが所属される組織では、「企業文化や職場の雰囲氣」に与える影響が大きい「経営幹部や人財・組織部門の担当者、ライン部門のキーパーソンの言動・態度」は、ピープル・マネジメントの実現、あるいは、「公私一如」の状態の実現に向かうのに適切なものになっているでしょうか?

 

社員と事業主の視点:職業能力開発促進法の改正で…

平成二十八年(2016年)四月一日より施行されている「職業能力開発促進法」のページで、「職業生活設計」というキーワード検索をすると(2016年11月23日時点で)16件がヒットします。

中身を見てみると、第一章 総則 の「職業能力開発促進の基本理念」の箇所には、

第三条の三  労働者は、職業生活設計を行い、その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする。

といった形で、「職業生活設計や能力の向上は、個人の責任が大きいよ!」と明記されるようになりました。

また、第一章 総則 の「関係者の責務」の箇所には、

第四条  事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うとともに、その労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上を図ることを容易にするために必要な援助を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。

第十条の三  事業主は、前三条の措置によるほか、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずることにより、その雇用する労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び向上を促進するものとする。

一  労働者が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めることを容易にするために、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度その他の事項に関し、情報の提供、キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うこと。

といった形で、「事業主は、労働者の職業生活設計の実現ができるような能力を高めるために、必要に応じて援助しないといけないよ!」とも明記されました。

これも「個別対応」の流れの一環と捉えて良いかもしれませんね。
…「『標準化や制度の厳格な運用』を重視するあまり、『個別対応が重要』という話を受け容れづらい方」は、「ピープル・マネジメントに向けて」というページ の「※2」を参照なさってみてください。

そして、上記の法改正と同期して、「キャリアコンサルタントは、平成28年(2016年)4月より国家資格(登録制の名称独占資格)となり、守秘義務・信用失墜行為の禁止義務が課されるようになっています。(この国家資格を持たない人は、「キャリアコンサルタント」やそれと紛らわしい名称を名乗れないことになっています(※)。) 

どういうことかというと、上記のような法改正が施行されている現在では、「社員一人一人がキャリアコンサルティングなどの支援を受ける権利」を持つようになり、「社員がその権利を行使することを求めるのであれば、組織は “必要に応じて” 職業生活設計の支援を行わないといけなくなった(キャリアコンサルティングほかの援助を行う義務が法制化された)」ということを指しています。

ただし、この「職業生活設計」の話は、「ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)を分離した形でなされている」ことに、注意していただきたいと思います。 「就労者としての寿命 > ビジネスの寿命」という大きな流れと共に、「ほとんどの転職・転社は、『即戦力となりうる人財』の需給マッチングでしかない」という実態を踏まえ、「『ライフ』(人生全体)の話と『ワーク』(これまで携わってきた仕事と、これから携わっていきたい仕事の変遷や組み合わせ)をどのようにすり合わせてデザインしていくのが望ましいのか?」について、個別の事情や要望、価値観などを踏まえて検討することは非常に重要です。

さて、あなたは所属組織内で「キャリアコンサルティングや、それに類似するサービスといった支援を受ける権利」を行使しそうでしょうか? それども、その権利を行使すると、組織内に波風を立てることになりそうなので、そうした権利は持っていても行使しないことを選ばれるのでしょうか? あなたはどのように考えられますか?

 「資格」には、文脈に応じて「一定の学習課程を修了したといった形の『経験の証明』」を指す場合と、「その分野の評価者によって、一定の実力があると認める形の『最低水準以上の実力の証明』」を指す場合の2通りがあります。 そして、いずれの場合も、基本的に「雇用される側が用意する証明」であり、「特定技能を開発した先駆者や、未踏の分野を初めて体系化した開祖など」は持たないのが「資格」というものであることも忘れないでください。

例えば、「一生懸命テキストを学習されたりして、国家資格としての『キャリアコンサルタント』を取得しても、転職経験がない人」が、ご本人の実情や感情に沿わないアドバイス(机上の空論)をするかもしれないということです。 「『キャリアコンサルタント』や類似の肩書きは名乗らなくても、私のように産・学・官・非営利組織のキャリア経験を持つなど、『ワーク(職業生活)の変更によって生じるライフ(個人生活)への広範な影響』などについての対話や行動を共にすることに価値がある相手」もいるので、盲目的に「資格」取得者を過信しないことが大切ではないでしょうか?

 

ハードとソフトは、どのように統合していくのが望ましいのか?

「制度」とは、「対象者を縛る縄」であると共に「関係者が納得し合う申し合わせ」です。 「この申し合わせを権威や強制で押し通さなければならない状況」では、人心が離れてしまい、ピープル・マネジメントの実現は叶わなくなってしまいます。 では、どうすれば良いのでしょうか?

ピープル・マネジメントの実現、あるいは、組織の望ましい状態の実現というのは、「社員の納得に始まるもの」ではないでしょうか? これを、視点を変えて表現すると、「制度を設ける側(経営陣・人財部門など)の説得力」ということになります。 そして、その説得力を支えるものは、「制度を設ける側の、普段の言行・態度」です。

「制度を設ける側の普段の言行・態度」が「制度の意図と合致」していて、また「その制度によって望ましい便益や効果が期待できそうだと信じることができる」場合に、社員は、新たな制度を受け容れようと思うのではないでしょうか?

冒頭で、「さまざまな『制度』『仕組み』が報道されることが増えてきている」という、ハード面についての話をしていましたが、ハード面を効果的に運用するには、やはり、「納得、説得、キーパーソンの普段の言行・態度」といったソフト面が伴わなければならないのではないでしょうか?

ここまでお読みくださったあなたは、「組織の成長や持続的な繁栄」あるいは「QOL(人生の質)の向上」を目指し、「ワークとライフ」についてどのように考え、今後、何にどのように取り組んでいくのが良さそうでしょうか?

経営陣・人財部門・ライン部門のキーパーソンの方へ


今回の内容に関心をお持ちの方は、「状況変化に合わせた自己刷新を促す人財開発」「タレント・プールを充実させる組織開発」を担う、合同会社5W1H「エグゼクティブ・コーチング」のウェブサイト もご覧になってみてください。

また、ご自身で「組織の成長や持続的な繁栄を可能にするためには、社員の手本となるよう、自己成長や自己刷新(意識や行動の変容)に向けて取り組まなければならない!」とお考えの方は、下記への参加も検討なさってみてください。

合同会社5W1H流コーチング学習プログラム
~適切な課題設定と視点変更を重視する「協創対話」を学ぶ~

主体的なキャリア・デザインについて検討したい方へ


キャリアコンサルタントの方が実施されるような「ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)を分離した形」の「職業生活設計」にとどまらず、「望ましい『公私一如』の在り方」の実現に向けて検討したり、取り組んだりしてみたいという方は、下記の内容をご覧になってみてください。

パーソナル・コーチング(ライフ・コーチング)
~与えられた困難な状況の下で、いかに可能性を切り開き、適応していくのか ほか~  ( 現在、「12月~1月限定『特別プラン』」のお申し込みを受け付け中です!)

『ラディカル・キャリア・チェンジ』徹底サポート
~ダブル・メジャー、異業種・異分野への転身、職種転換などをお考えの方に~

○人財の募集はしていないけれど、転職したい企業に赴き、企業のトップに「私を雇うと御社にとって、こういう良いことがありますよ」といった話をする準備に関するお手伝い

○異業種への転職を希望される方に同行して地方に赴き、既に働かれている人々の生の声や情報を収集するお手伝い

「人物を特定の職種に当てはめよう」とするのではなく、「今までになかった新たなキャリアを創り出そう」という活動に取り組むお手伝い

なども実施してきています。

さて今回は、「人財育成・組織開発コンサルタント」および「産・学・官・非営利組織のキャリア経験を活かした転職サポートも実施しているライフ・コーチ」の立場から、いくつかの視点を採用し、「働き方」に絡む内容を考えてまいりました。 

今回ご紹介してきたような話を踏まえ、「就労者としての寿命 > ビジネスの寿命」という傾向が強まってきている「長寿社会」で、あなたはどのように働き、どのように生きていくスタイルを望まれるのでしょうか?

周囲の方々とお話になってみてくださいね。 それでは、次回のニューズレターでまたお会いしましょう♪

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