人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

『教え過ぎ』? こんな経営者・講師は嫌われる!(第191号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

先日の『コーチング漬け体験』に参加されていたある中小企業診断士の方は、ベテランの方からうかがった話をひとつ共有してくださいました。 それは、「『顧問契約率の高い中小企業診断士』に共通する特徴として、『しっかりと相手の話を聴こうとする姿勢』があり、逆に、専門知識は多くても『教えたがりで、相手の話を遮ったりする』傾向が強い人は敬遠され、活躍の場を失っていく」という内容でした。

そして、「『コーチング漬け』で教えられているようなコミュニケーション上の姿勢やスキルが身につけば、取引先企業の方にも喜ばれる中小企業診断士が増えるに違いない!」という意見を述べておられました。 

あなたの身の回りの経営者、上司、コンサルタント、研修講師などのコミュニケーションは、今も「一方的な知識伝授や指示・命令」、あるいは、「画一的な底上げ教育」ばかりでしょうか、それとも、イノベーション(創新普及)」を興したり、「働き甲斐」を感じる職場を生み出すのを促進したりする形で行われているでしょうか?

 

『予測可能性』と『質問・支援型マネジメント』

現在、「@人事」様という人事向けの総合メディアにて、『組織能力向上エンジンとしての人財部門へ』という連載記事を書かせていただいており、今回のニューズレターでは、その中から、2つの表を見ていこうと思います。

ひとつ目の表は、2016年7月記事:今後は、行動定着よりも相互作用! キーパーソン・人財部門の役割は? で紹介した、表1:「『状況認識』の違いによって、『組織能力を向上させる取り組み』の内容は変わる」です。 

表1:『状況認識』の違いによって、『組織能力を向上させる取り組み』の内容は変わる

将来予測がほぼ確実なビジネス環境VUCAなビジネス環境
保証されている結果を提供 同意に基づく製品・サービスの提供
要望・依頼に確実に応える姿勢が重要 要望を推測・共に言語化する姿勢が重要
手際のよい処理能力が重要 適切な課題設定能力が重要
計画性・着実性・手段を重視 創造性・柔軟性・目的を重視
無駄を排した効率化が重要 変化の創出/変化への適応が重要
自前主義の閉鎖系組織が優勢 協働が盛んな開放系組織が優勢
他社との競争に勝つことが重要 高価値創出に向けた協働が重要
行動定着と結果に着目 相互作用と成果に着目

 [ 出典:「@人事」様での連載記事:「今後は、行動定着よりも相互作用! キーパーソン・人財部門の役割は?」 より転載 ]

左列(予測可能ビジネス)と右列(予測困難ビジネス)では、「組織能力を向上させる取り組み」が異なることをお伝えしていました。

『予測可能ビジネス』に取り組む際には、『その分野における経験や実績』が重視されます。 この考え方の背景にあるのは、『過去に同じような問題が解けた人なら、今回も類題が解けるだろう』『間違えずに、効率的に実行することが重要だ!』という前提です。 この場合には、メンターやティーチャー、トレーナーといった(役割を果たす)人物の活用が有効となります。

一方、『予測困難ビジネス』に取り組む際には、『誰も事前に正解がわからないのだから、従来の延長線上にない解を探求するため、自分たちと異なる発想をする相手と話そう!』という考え方、すなわち、『その分野における経験や実績が(少)ない』人物の活用が重要になってきます! 妥当だと思えるリスクを積極的に取って、『こんなことを考える人と話せば、何か新しいものが生まれるかもしれないぞ!』という可能性・有効性に期待する姿勢が求められるということです。

この場合には、コーチやファシリテーターといった(役割を果たす)人物、特に、同一部署や組織に属していない人物・専門分野の異なる人物の活用が有効となります。

…例えば、イノベーションを興すのが得意な某組織のプロジェクトでは、「SF作家」をメンバーに加えていたりします。 SF作家から「こういうものがあると、こんな生活が可能になる」といったストーリーを示してもらえる(問題・課題・目標を与えてもらう)と、技術者たちは、「こうやったらできるよ!と製品を創り出す」(解決策を生み出す)という形で、協創・協働を進めているようです。

また、左列の「画一的で、中途半端な満足度しか生まない『顧客』向けビジネス」に比べ、右列の「好みなどが異なる相手1人1人に高い価値を感じていただけるようにと、『個客』を志向したビジネス」が増加している傾向を踏まえて考えると、やはり私たちは、『指示・命令型マネジメント』だけでなく、状況に応じて、関係者に協創や協働を促すことのできる『質問・支援型マネジメント』コーチング型マネジメント、ファシリテーション型マネジメント、自律分散型マネジメントなどとも呼ぶ、※1)のコミュニケーションが図れるようになっておかないといけないのではないでしょうか。

『相手の話を遮る』など、『しっかり話を聴こうとする姿勢に慣れていない』といった経営者やコンサルタントなどが敬遠されがちだという話と併せ、あなたはどうお考えになりますか?

※1 『質問・支援型マネジメントの基礎』研修
~VUCAな時代に合った、ダイナミックで効果的なマネジメント方法を学ぶ~

 

『信じ過ぎずに、管理する』&『信じて、任せる』…観察と質問できていますか?

もうひとつの表は、2016年8月記事:「開発」と「発達」をどのように織り交ぜ、コンピテンシーを高めていくのか? で紹介した、表2:「『開発』と『発達』を織り交ぜる」です。 

「個々のコンピテンシー向上については、現場や本人の意向を重視」し、「人財部門・経営陣は、A)体系的知識・技術の習得、B)環境・仕組みづくり、C)コンピテンシー獲得能力の向上に取り組むなど、主に『組織としてのコンピテンシー向上』に注力する」のが大切ではないか?と述べていました。

表2:『開発』と『発達』を織り交ぜる

Development
開発発達

意図して『開発』する

||

育てる

自(おの)ずから『発達』する

||

育つ
携帯キャリアから通知が届いて、携帯電話のOSをアップデートするようなイメージ 普段から携帯電話のアプリを最適に保つ(削除、継続使用、インストールする)ようなイメージ
体質改善、基礎体力の向上に向けた取り組み スキルのレパートリーを増やしたり、極めたりする取り組み
人財部門や経営陣が主導 現場や本人が主導

 [ 出典:「@人事」様での連載記事:「開発」と「発達」をどのように織り交ぜ、コンピテンシーを高めていくのか?」より転載 ]

『開発、育てる』について別の表現を選ぶとすると、『MAKE it happen』人財部門や経営陣が、主導したり、管理したりして、人財育成する)、極端に言うと、『相手をあまり信じ過ぎずにいようとする』人財育成方針なのかもしれません。

一方、『発達、育つ』については、『LET it happen』本人を含む現場の人々が、観察した事柄についてフィードバックを与え合ったり、質問を投げかけ合ったりしながら、自然発生的に、工夫を凝らしたり、経験学習を重ねたりして人財育成する)、極端に言うと、『相手を信じて任せようとする』人財育成方針なのかもしれません。

上記の記事では、組織能力を高めるには、組織を取り囲む環境や状態に応じて、両方の人財育成手法を適切に織り交ぜることが大切だと主張していました。

この『織り交ぜる』を円滑に行うには、現場の人々はもちろん、人財部門や経営陣の人々も、『LET it happen』のコミュニケーション(…『質問・支援型マネジメント』、『協創や協働を促す』ことのできるコミュニケーション)が状況に応じて使いこなせることが重要となります。

その分野における経験や業績を持つ人ほど、良かれと思って「教え過ぎ」ていて、『LET it happen』の邪魔をしてしまう傾向が強まります。 新たな技術が進展してきたり、消費者の価値観が多様になってきたりしているにもかかわらず、過去にうまくいった正解を、知らず知らずのうちに、押し付けている人は、身の回りにいらっしゃいませんか? 

過去に成功体験をお持ちなのであれば、なおさら、『ダメ出し』ばかりで『相手の主体性をつぶしてしまうコミュニケーション』ではなく、『新しい発想を受け容れる余地』を示すといった形の、『度量の大きなところを感じ取ってもらえるコミュニケーション』[ …精聴(※2)や質問力(※3)を発揮した協創対話(※4) ]の割合を増やしていかれてはいかがでしょうか?


※2 精聴(Precise Listening)
相手の感情の解放や相手との関係性などを重視して、ただひたすら聴く「傾聴」とは異なり、特定の目的達成や問題解決、意思決定などといった変化につなげるため、話の構造や相手の情報処理プロセスを意識しながら聴き、必要に応じてコンテクスト(コンテンツに意味を与える状況、前後関係、背景)などについても、こちらから丁寧に確認を重ねたりする精密な聴き方を、弊社では、「精聴」と表現しています。


※3 質問力(Inquisitive Mind)
「質問力」と言うと、「質問を発すること」(Questioning)にばかり意識を向けがちなのですが、弊社では、「相手の発する情報を精密に聴くこと(精聴)ができて初めて、真実・解決策・新たな可能性の探求に役立つ核心的な質問を発することができる」という考え方を重視した「質問力」(Inquisitive Mind:探求する心/姿勢)をお伝えしてきています。 フレームワーク質問力®」では、コンテンツ(内容;出来事の詳細)のみならず、コンテクストプロセス(相手の情報処理方法など)について、どのように聴き取り、それらをコミュニケーションにどのように活用するのかについて、「ヒトの認知のメカニズム」を踏まえて解説し、実践的な演習を行っていただく機会を用意しています。

フレームワーク質問力®』一般公開セミナー企業研修
~質問フレーズの選び方・組み立て方、状況認識がズレた相手との話の進め方目的達成・問題解決に2段構えで臨むとは?~
… クリエイティブで粘り強い『協創対話』の根幹を成す、『対人スキル』と『クリティカル・シンキング』の両方が同時に学べる内容です。


※4 協創対話(Co-Creative Dialogue)
対話(dialogue)とは、「話の内容のみならず、関係者の思考プロセスや感情に意識を払い、特定の立場や手段に固執せず、率直な意見交換を行うことによって、目的を達成しようとするコミュニケーションの方法」であると弊社では定義しています。 そして、関係者との間で、「真実」「解決策」「新たな可能性」を探求するための、関係者との粘り強い対話のことを、弊社では「協創対話」と表現しています。

『一歩踏み込んで、聴く』…一般公開セミナー/企業研修
~本人も氣づいていなかった、本質・本音を捉える~
…「相手の話に応じて柔軟にアプローチを変えつつも、コミュニケーションの目的を達成する」という『協創対話』の一部について、演習を通して短時間で学べます。

合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」一般公開セミナー企業研修
~正解がない時代の目的達成・課題解決・価値協創に役立つコーチング~
『協創対話』の全体について、数多くの演習を通して着実に学べます。

マネジャーの『徹底的コミュニケーション』学習プログラム
~「知識の一括伝授」よりも「少量学習→相互啓発→現場実践→振り返り」の繰り返しで学ぶ研修スタイル~


さて今回は、「専門知識が多くても、『教えたがりで、相手の話を遮ったりする』傾向が強い人は敬遠され、活躍の場を失っていく」という中小企業診断士の方の話から始め、「『予測困難ビジネス』では、『誰も事前に正解がわからない』ため、『質問・支援型マネジメント』や『その分野における経験や実績が(少)ない』人物の活用が重要」、「『開発』と『発達』をうまく織り交ぜていくためには、『協創対話』が有効」という考え方を紹介してきました。 

あなたは、どんなことを感じたり考えたりされたでしょうか? 周囲の方々とお話になってみてくださいね。 それでは、次回のニューズレターでまたお会いしましょう♪

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