人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「課題設定」とは?…対人演習の「振り返り」事例を通してご紹介(第153号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

各種セミナーや研修、コーチングやコンサルティングを行っていて、繰り返しお伝えする必要が生じることの1つに「『課題設定』の大切さ」というものがあります。 これまでのニューズレターでも、例えば、図表1のような形などでお伝えしてきているのですが、まだまだ浸透していないように感じます。今回は、先日実施した「コーチング学習プログラム(以下、CLPと略)の第7日目」の演習で登場した事例を通して、改めて「『課題設定』の大切さ」についてご紹介しようと思います。

※次期CLP(4月26日(土)開始)は、【 早期割引締め切りが2月4日(火) 】 となっています。お忘れなく♪

「対症療法の繰り返し」で事態を悪化させないためには「問題設定」が重要

図表1:「対症療法の繰り返し」で事態を悪化
させないためには「問題設定」が重要

[ 出典:第143号 図表1を再掲 ]

 

  • 問題発見」っていう言葉なら聞いたことあるけど、「課題設定」って何だ?
  • 問題なんてわざわざ発見しなくったって、ウチは問題だらけなんだよ!
  • ウチは、問題と問題症状と課題を混同していたかもしれない!
  • 相手(お客様、上司など)の要望を鵜呑みにせず、対話を通して差し戻す」とは何事だ!?

という方、ご興味をお持ちの方は、どうぞ読み進めてください♪

 

「感想を述べ合う」だけはダメ! 「分析的な振り返り」の重要性?

コミュニケーション系の研修では、対人演習の「振り返り」と称して、「ふわっとした感想を述べ合うだけ」のものが横行しています。 しかし、相手の主観的な感想を頂戴しても、「具体的に、自分たちのコミュニケーションの何をなぜどのように変えると良いのか?」といった情報が欠けているために、「経験学習」として昇華できず、「ただ単に場数を踏んだだけ」(…独りよがりの変なクセが強化されただけ)で終わってしまうことが多いと、弊社では考えています。

こういった視点を踏まえ、弊社で行う対人演習の後には、「次回以降、何をどう改善すれば良いのかがわかる、分析的な振り返り」を実施しています。…例えば、先日のCLPで行った2つの「対人演習」(25分×2回=合計50分)に対して、図解などを用いた「振り返り」に割いた時間は、休憩を挟みつつの3時間弱でした。 弊社でお伝えしているコーチングでは、「視点変更」「柔軟な発想の促進」も重視しているため、「さまざまな視点からの多角的な検討」「重層的な学びの深化」は非常に有効であると考えています。←例えば、数学の問題を上滑りで解き散らかして、問題集を先に進める ”だけ” では、数学の実力は上がりませんよね。 「分析的な振り返り」というのは、新しい内容を学ぶ段階で、1つ1つの問題に対して別解を探求し、問題を深く理解する経験を通して、自分で考える力をつけること・洞察力を高めること・基礎を体得し応用問題に対処できるようにすることを重視するアプローチに対応していると捉えていただくのがよいと思います。

合同会社5W1H流による【 洞察力 】の定義

  • 問題症状に惑わされずに、対象の本質を見抜く力
  • 対象をそれまでとは違った視点から多角的に考察する力
  • 目的達成に向けて、適切な課題を設定(見極めたり、発想したり、調整したり)する力
  • 上記すべての根幹を成す観察・質問・思考・対話を行う力

用語解説1: 洞察力とは?

 

人事考課の側面も含む「定期面談」:Nさんの事例

さて、今回ご紹介するのは、CLP第7日目の対人演習で、IT関係の会社に勤め、採用業務にも携わるNさんがクライアント役(話し手)、自営業を営んでおられるHさんがコーチ役(聴き手)を務められた演習の事例です。

※私自身が提供しているコンサルティングコーチングの内容は、守秘義務や個人情報保護の観点から公開するのは難しいことがほとんどなのですが、今回の内容に関しては、CLP中の話で、NさんとHさんから公開のご了承を得られました。Nさん、Hさん、ありがとうございます!

以下、NさんとHさんの話の流れ(コーチング演習時のやり取り)を簡略化してご紹介し、その後、「振り返り」の概要についてご紹介します。

Nさんの取り上げたテーマの背景
会社では半期に一度、1対1(各社員と上司)の定期面談を行っている。 会社が設定した業務上の目標を踏まえて、「今、どんな課題があり、どう解決していくか」についてお互いに話し合う機会となっている。Nさんは「自分自身の悩みや課題だと感じていること」を上司に伝え、上司は上司で「Nさんの課題だと感じていること」を「○○な風に見える」といった表現でNさんに伝えてくれる。

Nさん
このセッションでは、自分が解決すべき課題を見つけて、具体化していければいいなと思っています。

Hさん
まず、これまでの話の内容について、私の理解を確認させてくださいね。(省略)

Nさん
私は、仕事をする上で、ついつい夢中になって視野が狭くなって、本来の目的を忘れがちになる傾向(総論を忘れ、各論に取り組む傾向)があると思っています。そういう傾向については、上司も否定しません。 そういった傾向があるために、同じ目的を持って仕事をしている関係者から「ズレてる」(注目するポイントが他者と違っている)と捉えられてしまうことがあります。 上司は、「夢中になって視野が狭くなる」といったことよりも、「Nさんは、もっと何か根本的・本質的な課題を抱えているのだろうけど、その課題が何かは私自身で見つけるしかない」という言い方をします。また、「Nさんは基本的に自己中心的だけど、その課題が何かがわかると、対策が練れるよね」とも言っていました。

Hさん
「自己中心的」ってどんなイメージなんですか?

Nさん
他者への思いやりに欠け、自分の利益ばかり優先してしまうとか…他者の状況を氣にせず、自分のやりたいようにやるとか…。

Hさん
何を大切にしていらっしゃるんですか?

Nさん
機嫌の悪い人がいて職場がギスギスしてるんじゃなくて、みんなが余裕を持って楽しく仕事していること…かな。でもやっぱり、「楽しさ」よりも「自分が、価値ある何かを提供し続ける存在であること」かな? そういう存在になっていないと、面白くないし、働く意味がないと思います。

Hさん
どうしてそう思う?

Nさん
やっぱり、仕事をすることでお金をもらってるからかな。自分が楽しめて、価値ある何かをお客様とか会社とかに提供できてると、自分は生きていていいんだなって思う。 でも、自分の意見を押し通すみたいな感じで、自己中心的な姿勢が出過ぎると、視野が狭くなったり、論点がずれたりしてしまうんだと思います。

Hさん
自己中心的でない状態って、どんな状態?

Nさん
ん~~業務に振り回されていない状態。 余裕があって、頭がクリアで、状況がコントロールできてる状態。

Hさん
業務に振り回されているときって、どういう状態になってるの?

Nさん
目の前のことを片づけることに集中してて、「本当にこれをやるのがいいこと? 優先順位は? やり方はOK?」とか考えず、ただやっちゃう。 周囲とのズレを察知する能力が低いというか、鈍感というか…。それに…感覚的に仕事してるんです。会社説明会の予約数が減ったし、キャンセル率も上がったんですけど、直接の担当者と一緒に「1月っていう時期的なもののせいだよね」って話してた。そういうのを上司に伝えたら、「予約数とキャンセル率を出して。数字は、事実を客観的に捉える材料だから。」って言われて、「あぁ~、私って、鈍感な上に、感覚的に仕事してるんだなぁ。」って、改めて思っちゃって…。はぁ~、Hさん、私の根本的な課題って何なんですかねぇ??

Hさん
う~ん、そうですねぇ…どういう課題なんでしょうねぇ。

ここまでで演習を一旦ストップしていただきました。(やりとりは省略してありますし、Nさん自身がいろいろ考えるのをHさんがお待ちになっている時間などもありました。)

さて、ここまでご覧になったみなさんは、このやり取りを振り返って、どういったことに氣づいたり、感じたりされたでしょうか?

 

演習後の「振り返り」では?

弊社で行う「振り返り」は、「当事者どうしによる振り返り」→「当事者が所属するグループの傍観者による振り返り」(→「概要を教えてもらった他のグループ・メンバーからの質問・コメント」)→「高野による、図解や関連事項の解説を加えた振り返り」→「これまでのすべての話を踏まえた上での、当事者の振り返り」→「当事者以外全員の振り返り」→「高野による概念化、および、参加者全員の学びを踏まえた振り返り」→「演習全体を振り返っての質疑応答」といった形で進むのが一般的です。

…万が一、「フレームワーク質問力」などのコンテンツを完全コピーして伝えることができたとしても、この「振り返り」部分は、「余人を持って代えがたい」と評してくださる方がいらっしゃいました!

さて、弊社の「振り返り」は上記のように内容が盛りだくさんであるため、本ニューズレターでは、どんなポイントについての話があったのか、かいつまんでお伝えしようと思います。 あなたはもう、自分なりに考えを巡らせてご覧になりましたか? 以下、先日の振り返りで取り上げていた主要ポイント5つの紹介です。(用語解説3、4もご参照ください。)

  • 問題(Problem)
    「あるべき姿(必然性・信頼性を満たす望ましい状況)」と「現状」のギャップ(既に発生している望ましくない状況)
    …構造(問題症状どうしの関係や根本原因、前提など)を見極めることが重要
    例:「大きな岩が道をふさいで先に進めない」という状況
  • 課題(Issue/Task )
    「ありたい姿(有効性・可能性・効果性が期待できる望ましい状況)」と「現状」のギャップ(これから主体的に取り組む事柄)
    …自分(たち)で意識して設定するもの;問題解決のために何に取り組むか、設定するもの
    例:「岩をどけること」「岩を破壊すること」「手前に穴を掘って岩を落とすこと」「岩を乗り越えて進むこと」「岩を迂回する(別の道を進む)こと」「(棒高跳びなどで)岩を飛び越すこと」など

用語解説3: 問題と課題
(…「舵取りコミットメント(個人篇)」セミナー資料より一部転載)

•  会話(conversation):情報交換・関係構築を主とするコミュニケーション
•  対話(dialogue):目的達成・課題解決を主とするコミュニケーション

会話では、クリティカル・シンキングは不要
対話では、クリティカル・シンキングが必要

会話では、情的配慮力が特に重要
対話では、情的配慮力に加えて、知的判断力が非常に重要

用語解説4: 会話と対話
[ 出典:2014年1月14日投稿のSNS記事:「会話→対話→ファシリテイティブ・リーダーシップ」より一部転載(Facebook版)(Google+版) ]

  • NさんとHさんのやり取りをあのまま続けていくと、どういった内容の話になったでしょう? 恐らく、そして、まず間違いなく、Nさんの「問題症状」の背景にある「Nさん個人の問題なり欠陥を探す」方向の話に向かっていくと思われます。 そういった形で、「原因分析」を進めることで、誰にとって、あるいは、何にとって望ましい結果や効果が得られるのでしょうか?
  • 各個人の『課題』あるいは『強み』や『弱み』は、『コンテクスト』(context:前後関係、文脈、背景、状況)によって変化する」と、CLPを通じて学んできたことを踏まえると、この面談内容は「定期面談の目的」に合致したものだと言えそうでしょうか?
  • 定期面談の狙い」は何ですか? 「会社が設定した目標を達成する」ために役立つさまざまな切り口の対話を行うことと「Nさん個人を病理学的・心理学的に分析すること」にはどんな関係がありそうですか? Nさんの上司の、Nさんへの質問や働きかけ方は、適切でしょうか? Nさん個人に『問題』あるいは『欠陥』があるという考え方を埋め込み、強化しているという側面はないでしょうか?
  • 会社が設定した目標を達成するために役立つ定期面談の在り方」や「Nさんの上司に期待される役割」とはどういったものでしょうか? Nさんが、「Nさん個人の視点」でばかり考えるのではなく、「プロジェクト・チームや組織全体の利益を考える視点」に立つなら、上司の働きかけ方についてどのように解釈し、(上司の話を鵜呑みにせず)どのように上司への働きかけ方を変えていくのが良さそうでしょうか?
  • 定期面談の改善案」にはどういったものがありそうでしょうか? それを上司に伝え、受け入れてもらうには、どういったアプローチを選択するのが望ましいでしょうか?

定期面談後、「自分を否定し、責める」傾向に意識が向かっていたNさんは、こうした「振り返り」を経て、「会社の目的達成のために努力する過程であれこれ工夫することで自分が変わっていき、現在の自分自身の課題を解決することに繋がるのかもしれない」という氣づきを得て、表情がパッと明るく輝き出しました!

これが「課題を再設定した事例」の1つということになります。 この演習では当初、クライアント役(話し手)のNさんは、コーチ役(聴き手)のHさんに対して、「『夢中になって視野が狭くなる』などといった問題症状の背景にある、もっと根本的・本質的な原因を見つけて対処したい(=課題)」という方向で話を始めました。

しかし、「振り返り」を終えた時点で、Nさんが取り組むべきなのは、各種診断テストや心理分析などではなく、「会社にとって望ましい定期面談の在り方について再考し、定期面談をより効果的なものにしていく際に、Nさんの上司とNさん自身がどういった関わり方をしていくのが良いのか」、「上司の発言を鵜呑みにして自分を苦しめるのではなく、その意図などに考慮しつつも、普段からどのように接していくのがお互いにとって望ましいのか」を明らかにすることではないかと、『課題自体をより適切なものに再設定する』方向へと話が変わっていきました。

Nさんの「問題症状」の背景にある「Nさん個人の問題なり欠陥を探す」方向の話に向かっていく場合と、「課題を再設定した場合の日常生活」の違い(Nさんの心の状態、普段の仕事への取り組み方の違い、上司との関係の違い、会社への貢献の仕方の違いなど)に氣づいていただけるでしょうか?

課題が適切でなければ、誤った目的地に早く到達するだけです。 良かれと思って導入した定期面談も使い方を間違えれば、組織にとっての害悪ともなり得ます。 今回ご紹介した事例を通して、「関係者を正しい目的地に導いてくれる適切な課題を設定することの重要性」について、「洞察力を高める分析的な振り返り」について、また少し深く理解していただけたようであれば幸いです。

今回の事例紹介を通して、「問題症状と課題を区別すること」「会話を対話に変えていくこと」「対話において課題設定が非常に重要であること」について関心をお持ちになった方!

早期割引締め切りが 【 2月4日(火) 】
合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」
[4月26日(土)開始] の詳細確認をお忘れなく♪

さて今回は、CLPの演習で登場した事例を通して、改めて「『課題設定』の大切さ」「『対話』での『洞察力』発揮の大切さ」についてご紹介して参りました。 あなたは「普段のご自身のコミュニケーション」を振り返って、どんな印象をお持ちになり、何をお考えになるでしょうか? あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

P.S.
4月スタートの次期「変化促進研究会」参加者の募集を開始いたしました! 使用テキストは、『Spy the Lie』と『Conversational Intelligence』です。

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