人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

優れたリーダーは、コンテンツに加えて「○○」と「○○」が聴ける!(第115号)

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こんにちは、合同会社5W1H代表の高野潤一郎です。

前回のニューズレターでは…「多様性と統一性の両立に役立つもの」、「実務を通したマネジメント・スキルの習得(≠知識の獲得)を効果的・効率的にするもの」が、「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」でもお伝えしている「メタ認知(※1)に基づくフィードバック・プロセス(※2)」であるといった考えをご紹介していました。今回は、その「メタ認知に基づくフィードバック・プロセス」を効果的・効率的に促進するのに有効なアプローチの1つについて、補足差し上げたいと思います。

※1 メタ認知(meta-cognition)
自分自身の思考・感情・言動を客観的に把握・認識すること。深く自己を省みる「内省」に用いられる。

※2 フィードバック(feedback)
一般には「着目しているシステムからのアウトプットを見て、それを正すようにシステムの制御を行うことをフィードバックという」が、コーチングなどの分野では、「評価や判断は行わず、相手あるいは第三者が(主に視覚・聴覚・身体感覚を用いて)観察・確認できる情報を、相手に伝えること」を指す場合がある。
良くない例:「○○の話をしているときは喜んでいた(←観察者の評価(相手が"喜んでいる"ように思った)が含まれているため)」、良い例:「○○の話をしているときに、右頬が少し上がっていたけれど、あのときには何を考えたり、感じたりしていたのですか?」など。

 

仕事が、慌ただしく、表層的になっていませんか?

前号では、「『メタ認知に基づくフィードバック・プロセス』の大切さを理解していつつも、正面切って取り組んでいる人/組織が少ない」という私の認識についてもご紹介していました。

この、「中長期の視点から見れば大切なのはわかるけれど、目先の仕事が忙しいので、『メタ認知に基づくフィードバック・プロセス』あるいは『PDCAサイクルのC→A』には取り組みません」(※3)などといった風潮を助長しているものには、(1)リーダー/マネジャー自身の「行動志向の強さ」(※4)に加え、「(2)広い職掌範囲(と、それに伴って組織横断的・対外的な関係構築・維持を重視する姿勢);(3)非常に多くの仕事(…関係者のさまざまな利害の対立や状況変化が絡み、情報の不足・混乱・曖昧さなどを伴う)を、頻繁に中断されつつ、短時間の内にこなすことが要求される」などといった、「リーダー/マネジャーの仕事の特徴」が背景にあるのではないかと認識しています。あなたのお仕事には、こういった特徴がないでしょうか?

※3時には、「私の在任中に効果が現れるかどうかわからないような取り組みに、時間や労力をかけようとは思わない。私は自分の評価を上げることにつながる仕事しかしたくない。」という考え方が背景に存在する場合があるようです。

※4 ニューズレター第112号 では、「大企業が破壊的イノベーションに失敗しがちなのは、『発見力』(探求力)の高さではなく『実行力』(処理力)の高さで選ばれた人材が最高経営層を占めるため。」といった表現も紹介していました。

 

リーダー/マネジャーは、果たすべき役割が多い[…上述(2)]上に、細切れ時間の内に次々と仕事をこなすことが求められます[…上述(3)]。彼らは、一般社員よりも「実行力」(処理力)が高い[…上述(1)]ために、「押し寄せる、新鮮で断片的な情報の波に対応し続けることが可能」なのですが、「大局観を欠いた、対症療法的な問題解決や意思決定」(反射、反応とも言える素早い対処)に終始しがちとなるため、しばしば、水面下で状況を深刻化させてしまったり、自分の仕事に意義を感じられなくなってしまったりしてしまいます。

こういった事態に陥らないよう、優秀なリーダー/マネジャーは、意図的にメタ認知を活用する時間を確保し、断片的な情報をつなぎ合わせて包括的な全体像を描いたりされています。そうして、次々に現れる情報が組織活動の中でどんな意味を持つのか解釈したり、目的達成に関連しそうな情報分析の実施を指示したり、仮説の構築をしたり、先が読めない状況下で意思決定を行ったりするのに、大局観を持つことを役立てていらっしゃいます。こういうのもまた、「メタ認知に基づくフィードバック・プロセス」活用の例ですね。

…「リーダーシップ開発コーチング」、「ダイアローグ」(dialogue;弊社では、「話の内容のみならず、関係者の思考プロセスや感情に意識を払い、特定の立場や手段に固執せず、率直な意見交換を行うことによって、目的を達成しようとするコミュニケーションの方法」と定義)や「ファシリテーション」などを利用された方々のお話に基づいています。

上述のような話を聴くと、「目先の仕事が忙しいので、『メタ認知に基づくフィードバック・プロセス』あるいは『PDCAサイクルのC→A』には取り組みません」といった姿勢は、実にもったいないようにも感じるのですが、あなたはどのような印象をお持ちになるでしょう? いつまでも、目の前に現れる仕事(実は、作業?)をバッタバッタと切り倒していく「切り込み隊長」「特攻隊長」で良いのでしょうか? あなたが所属されている組織は、あなたに「どんな役割を期待されている」のでしょうか?(…メタ認知を活用し、「他者がわかるような形で、情報を言語化・概念化して伝達・共有」しないと、「権限の移譲」は困難となります。)

 

メタ認知とフィードバックを促進する、
「ハード情報」&「ソフト情報」

上記では、リーダー/マネジャー自身の「行動志向の強さ」と「リーダー/マネジャーの仕事の特徴」についてもご紹介していました。近年では、こういった傾向に加え、ノマド(※5)や在宅勤務などといった働き方を奨励する組織・選択する個人が増えたりするなど、これまで以上に、電子メールやSNSを用いた「文字(+図表)情報によるコミュニケーション」が増えてきています。…例えば、昨日のC研では、参加者全員が、「メールを読んだり書いたりするのに充てる時間の合計 ≧ 対面・電話によるコミュニケーション時間+会議に要する時間」(コミュニケーションに充てる時間の半分程度以上がメール処理)だと回答されていました。

※5 ノマド(nomad:遊牧民)
人類は1万年ほど前にメソポタミヤの地で定住民となったが、21世紀に再びノマドとなる者が増える。ノマドを大別すると3種類あり、エリート・ビジネスマン・学者・芸術家・芸能人・スポーツマンなどの「超ノマド」、生き延びるために移動を強いられる「下層ノマド」、定住民でありながら超ノマドに憧れ、下層ノマドになることを恐れて、ヴァーチャルな世界に浸る「ヴァーチャル・ノマド」である。[ 出典:「21世紀の歴史」 ジャック・アタリ/作品社 ]
また、近年では、「カフェ、ファーストフード店、交通機関での長距離移動中、レストランなど」で「ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末など」を用いて仕事をする「中小企業の社長、自営業者、会社勤めのエンジニア・デザイナー・記者など」がノマドと呼ばれています。

(写真や動画が添付されていると、また事情は違うのでしょうが)「文字+図表情報」のみによるコミュニケーションでは、相手の顔の表情・身振り手振り・声のトーン・大きさなどといった情報が抜け落ち、「表情・態度と言動が一致しているかどうか」などといった判断もつかないため、相手の「感情(喜怒哀楽、意欲、本氣度、緊張や不安や不満の程度、心理抵抗の有無ほか)・本音・真意・雰囲氣など」といった情報を逃してしまいます。加えて、わざわざ言語化させない現場の情報(例:「自社の優良顧客が、競合他社担当者と会食していた」といった確証のない噂・憶測、現場スタッフや取引先の反応から感じる違和感・兆しなど)も漏らしてしまいがちとなります。

このように、「文字+図表情報」のみによるコミュニケーションは、言語化・計測・定量化・集計・図表化などが容易な「ハードな情報」の伝達・共有には便利なのですが、リアルタイムの相手の反応・感覚的に察する違和感などといった定性的で「ソフトな情報」が欠落してしまいがちとなります。

「状況を適時・的確に把握し、意思決定や適切な対応を行ったり、相手との関係構築・維持や交渉を効果的に進めたりする」(…メタ認知に基づくフィードバック・プロセスを活用する)には、ハード情報とソフト情報の両方が必要ですが、「文字+図表情報」のみによるコミュニケーション比率が高まるにつれて、(特に、組織内外の人との良好な関係構築・維持や人財育成、動機づけなどを行って人(の氣持ち)を動かすことで重要な役割を果たすことを期待されるリーダー/マネジャーにとって)「意識的に、ソフトな情報の取得・伝達・共有を行う」ことの重要性が増してきているように感じています。

 

ソフトな情報まで、聴き取る・読み取る

では、「多様性と統一性の両立に役立てる」「実務を通したマネジメント・スキルの習得(≠知識の獲得)を効果的・効率的にする」「状況を適時・的確に把握し、意思決定や適切な対応を行ったり、相手との関係構築・維持や交渉を効果的に進めたりする」ために、ハードな情報に加えて「意識的に、ソフトな情報の取得・伝達・共有を行う」には、どのような事柄に注意を払ってコミュニケーションを行えばいいのでしょうか?

フレームワーク質問力」セミナー/研修では、相手の情報を受け取る際に、次の3つに注意を払うようお勧めしています。

  • コンテンツ [ 内容; 出来事の詳細など ]
  • コンテクスト [ 前後関係、背景、状況; 出来事が発生して、そのコンテンツに意味を与える枠組み(フレーム、設定された場面、切り口)など ]
  • プロセス [ 相手の情報処理方法; 用いている助動詞・接続詞・形容詞・副詞などから推察される、相手のステイト(心身状態)など ]

コンテンツのみならず、コンテクストやプロセスについてどのように聴き取り/読み取り、それらをコミュニケーションにどのように活用するのかについては、「フレームワーク質問力」で、「ヒトの認知のメカニズム」を踏まえて解説し、実践的な演習を行っていただく機会をご用意しております。

 

情報を受け取る側が、この3つを意識することで、適切にソフト情報をキャッチできれば、自分が話したり書いたりする際に、そのソフト情報に配慮した情報発信を心掛けることが可能となります。つまり、「意識的に、ソフトな情報の取得・伝達・共有を行う」という場合、「目的を明確にした上で、状況や相手を観察する」「相手の発する情報を精密に聴く」(※6)ことで、自分のコミュニケーションが「メタ認知に基づくフィードバック・プロセスの活用」に適したものに変わっていくということです。

※6 ただひたすら聴く「傾聴」とは異なり、話の構造や相手の情報処理プロセスを意識しながら聴き、必要に応じてコンテクストなどについても尋ねたりする精密な聴き方を、弊社では、「精聴」と表現しています。

 

一般にビジネスの場面では、「簡潔な表現を用いたコミュニケーションが望ましい」とされ、対人コミュニケーションであっても電子メールであっても、「名詞と動詞」や「YesかNoか」などにばかり意識を向けがちな方が多くなっています。そして、具体化・詳細化だけを進めて、ハードな情報を入手することに一生懸命となるのですが、「コンフリクト・マネジメント、実務を通したマネジメント・スキルの習得、ダブル・ループ学習、イノベーションの推進、対人関係の構築、交渉など」で重要な役割を果たす、ソフトな情報にはあまり意識を向けずに終わってしまっています。

それでは、あまりにももったいない!そう考えた、弊社は、「多様性と統一性の両立に役立てる」「実務を通したマネジメント・スキルの習得(≠知識の獲得)を効果的・効率的にする」「状況を適時・的確に把握し、意思決定や適切な対応を行ったり、相手との関係構築・維持や交渉を効果的に進めたりする」ことに役立つ、一生もののコミュニケーション・スキルを学べる、「フレームワーク質問力」セミナー/研修といった場を提供し始めて6年目となっています。(また、最近では、「フレームワーク質問力」を基礎に、「メタ・コーチング」と「システム思考」を組み合わせた、合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」の提供を始め、第2期生を募集中です!)

ニューズレター第112号でもご紹介していたように、多くの人は、「質問力」と言うと、「質問を発すること」(Questioning)にばかり意識を向けがちなのですが、弊社では、「相手の発する情報を精密に聴くこと(精聴)ができて初めて、真実あるいは解決策などの探求に役立つ核心的な質問を発することができる」という考え方を重視した「質問力」(Question-based Inquisitive Mind:質問を用いて探求する心/姿勢)をお伝えしてきています。こういったアプローチの質問力(=マネジメント・スキルの1つ)に興味をお持ちの方、共感していただける方と、「フレームワーク質問力」の会場でご一緒できることを楽しみにしております!

 

さて今回は、

  • 仕事が、慌ただしく、表層的になっていませんか?
  • メタ認知とフィードバックを促進する、「ハード情報」&「ソフト情報」
  • ソフトな情報まで、聴き取る・読み取る

といった切り口から、「多様性と統一性の両立に役立てる」「実務を通したマネジメント・スキルの習得(≠知識の獲得)を効果的・効率的にする」「状況を適時・的確に把握し、意思決定や適切な対応を行ったり、相手との関係構築・維持や交渉を効果的に進めたりする」ため、すなわち、「メタ認知に基づくフィードバック・プロセス」をさまざまな場面で効果的・効率的に促進するために有効なアプローチの1つとして、「『コンテンツ』のみならず、『コンテクスト』や『プロセス』について聴き取る/読み取る!」をご紹介いたしました。

具体的な方法などについては、「ニューズレターのようなハード情報」でご紹介するのではなく、ハードとソフトの両方の情報を用いた解説と、実践的な演習を通して学べるフレームワーク質問力」や「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」といった機会で、誤解のないよう、ご質問にお答えしつつお伝えしたいと思います。興味をお持ちでご都合がつくようであれば、是非、ご活用くださいませ。

 

さて、「『コンテンツ』のみならず、『コンテクスト』や『プロセス』について聴き取る/読み取る!」「相手の発する情報を精密に聴くことができて初めて、真実あるいは解決策などの探求に役立つ核心的な質問を発することができる」というアプローチについて、あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか? 何か少しでもお役に立てれば幸いです。

 

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

P.S.
今回登場した「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」は、「コーチとしての活躍を検討している方」のみならず「エグゼクティブやマネジャーとしての仕事に、合同会社5W1H流コーチングのスキルを活用したいとお考えの方」にもお役立ていただける内容となっております。次回プログラムの参加者募集を開始しておりますので、ご興味をお持ちの方は、こちらから詳細を確認なさってみてください♪ また、同プログラム(あるいは簡略版)の組織導入に興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

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