「傾聴」だけで「わかったつもり」にならない!(第159号)
前号をお読みいただいた方、ゴールデン・ウィーク中に開催した「コーチング漬け体験」に参加された方の中に、「よく聴く」という事柄を「謙虚に耳を傾けること」「ひたすら聴き尽くそうとすること」「感情に寄り添って聴くこと」どまりだと解釈されていた方もいらっしゃったようです。
しかし、「フレームワーク質問力®」や「合同会社5W1H流コーチング」では、そこからさらに一歩進んで「非常に精密に話を聴き、真実・解決策の探求に役立つような事柄について、積極的に尋ねる」ことが大切であると考えています。
今回は、その辺りの話について理解を深めていただけるよう、事例を通してご紹介しようと思います。
「ひとつの文」の「構造を把握して、質問する」例を見てみましょう!
例文:「おじは、上手に英語を話すんですよ」
「フレームワーク質問力®」や「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」でお伝えしているやり方に従うと、このメッセージは「X = Y」という「構造」になっていると捉えます。
「X(おじ) = Y(英語を上手に話す)」 という解釈ですね。
(話の目的や前後関係などへの配慮を無視して、今は、どういった質問の仕方があるかということだけに着目すると)このメッセージに対する質問の仕方には、例えば次のようなアプローチがあることがわかります。
図1: 「X」についての質問
質問例1) ここで言っている「おじ」さんは、次の図解でいうAとBのどちらを指していらっしゃいますか?(…もちろん、実際の対話では、「ここでおっしゃっている、おじさんというのは…?」などといった表現の方が自然ですね。)
図2:解釈A
図3:解釈B
解釈A) I have an uncle who speaks English very well. (…関係代名詞の限定用法)
→「英語をとても上手に話すおじ」が1人いる。他にもおじがいる可能性がある。
解釈B) I have an uncle, who speaks English very well. (…関係代名詞の継続用法)
→「おじは1人」で、かつ、「そのおじは、英語をとても上手に話す」
…「,」(カンマ)があるかないかの差です。話し言葉では、この文だけを伝えられても区別できませんね。
※1 親族 民法上、六親等内の血族、配偶者および三親等内の姻族を指す。
※2 おじ 父・母の兄弟/おばの夫を指す。(伯父=父・母の兄; 叔父=父・母の弟)
図4:「=」についての質問
質問例2:どういう場面/きっかけで、そう思ったのですか?(必要に応じて、「英語を話す」と「英語を上手に話す」の違いについて、どのように区別しているのか追加で確認します。)
図5:「Y」についての質問
質問例3:おじさんについて、他にはどんな風に言えそうですか?(文脈などに合わせて、どんな人だと思っているのか、どういった特徴について取り上げて話したいと思っているのか、更に尋ねることもありえます。)
図6:「About X」(メタ認知)についての質問
質問例4:英語を上手に話すおじさんについて、どんなことを思ったり、感じたりしますか?
図7:「About(About X)」(メタ・メタ認知)についての質問
質問例5:そういう考えや感情というのは、あなたにとってどんな意味がありますか?
もちろん、ここに挙げた5つの質問例の他にも、「About Y」や「About (About Y)」に関する質問をはじめ、話の目的や全体像を踏まえた上で、今回のメッセージの位置づけについて尋ねる質問など、多くの例がありえます。
ただひたすら心を込めて一生懸命に聴く「傾聴」と、弊社でお薦めしている(ここでは解説を単純化するために「話」ではなく「ひとつの文」を扱いましたが)「話の構造」も意識しながら聴く「精聴」の違い、感じ取っていただけるでしょうか。
精聴ができれば、「質問をすること」自体はそれほど困難ではありません。上述のように、さまざまな角度から質問を考え出すことができるようになるのですから。 しかし実際の対話では、話の全体像や流れを踏まえると、「自分の好奇心を満たすことが主眼の質問」を発することが適切でない場面というのがかなりあります。(…思いついた質問を矢継ぎ早に発することができる人を「質問力がある」などと誤解しないようにしてくださいね!)
そこで、「フレームワーク質問力®」や「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」では、話の目的や自分の役割などに応じて、どういった質問を選び、どのように質問を組み立てていくのが適切かについても、お伝えしています。
【 注意 】 繰り返しになりますが、大切なのでもう一度お伝えしておきますね。今回は、限られた紙面での記事ということで、「話の構造」ではなく「単一メッセージ(ひとつの文)の構造」が把握できると、さまざまな質問フレーズが考えやすくなるという事例を紹介しています。しかし、実際の対話(および弊社研修など)では、あくまでも「話の構造」を捉えた上で、どのように質問を選び組み立てていくのか配慮することが重要であると考えています。
「話の構造」を把握すること、「図解」を活用することの効用、「傾聴」と「精聴」の違いなどについて、理解を深めていただけたでしょうか?
※3 関連Facebookページ記事(…Facebookアカウントをお持ちでない方にもお読みいただけます。)
さて今回は、「おじは、上手に英語を話すんですよ」というひとつの文を例に取り上げ、「話の構造」を把握すること、「図解」を活用することの効用、「傾聴」と「精聴」の違いなどについて、「フレームワーク質問力®」「合同会社5W1H流コーチング」の切り口からご紹介してきました。 あなたは、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか?
以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。 それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪
P.S.
今回の記事に登場した「フレームワーク質問力®」の次回一般公開セミナーは、6月28日(土)~29日(日)となっています。
また、「フレームワーク質問力(R)」や「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」に関しては、
- 企業研修導入
- 地方出張
- 経営者向け、あるいは、人財育成担当者向けの少人数開催
などに関するご相談も承っておりますので、興味をお持ちの方は、こちらからお氣軽にお問い合わせください。