人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「創造するには執着して、適応するにはさらりとして」…QOL向上のヒント(第202号:最終号)

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ニューズレターの「地の文」でお伝えしたように、「合同会社5W1Hは、2017年9月15日(金)をもって営業を終了」することになりました(詳細はそちらでご確認ください)。 

そして本号は、ニューズレター「QOL向上のヒント」の最終回となりますので、改めて「QOL(Quality of Life)の向上」という視点に立って、現時点において、「特に大切だと思う3つの考え方」(A)~(C)をシェアできればと思います。

(A)羅針盤とヘッドライト

(B)ルールではなくガイドライン

(C)「借り物」を楽しむ「軽やかな旅人」

(A)と(B)で、「変化の激しい時代を進んでいく、2大アプローチ」についてご紹介し、(C)では、その際に有用だと現在の私が捉えているマインドセットについて、ご紹介しようと思っています。

 

(A)羅針盤とヘッドライト

(A-1)「開放系の不確実な状況」を認識する

これまでのニューズレターでも、「変化の激しい時代」という話については繰り返しお伝えしてきたので、この現状認識に関しては、手短なおさらいにとどめておきます。

今回の記事を読み進めるうえで大切だと捉えているポイントは、次の4つです。(お互いに関係が深い内容です。)

  • デジタル化…グローバル・ビジネスを展開するうえで必須な「標準化」の手段としてだけでなく、ローカル・ビジネスや、高付加価値の「個別対応」を進めるうえでも効果的。
  • つながる社会…「自前主義」に代表される形で、「閉鎖系」で「予測可能」な「管理」ばかりを行うよりも、IoTをはじめとするさまざまな形でつながった「生態系(エコシステム)」に代表される活動、すなわち「開放系」の活動へのシフトが進むにつれて、「予測困難」な事象(「1:1の相互作用」を超えた「M:Nの相互作用」、あるいは、タイムラグを伴って生じる、想定外の「影響」や「副産物」など)が増加。
  • ブラックボックスビッグデータの解析結果、AIによる診断・提案など、関係者の理解が及ばない(「因果関係」をたどれる合理的な説明ができず、「相関関係」を基盤とした)内容を、「開放系の不確実な状況」を進むうえでどのように用いるのが良いかについての検討課題が増加。(※1)
    極端な例:緊急事態において、「2人を見殺しにすれば、3人の命を救えます」とAIに提示されたら、どのような判断を下し、実際にどういった行動をとることを選ぶのか?など …私たちは「合理的だと思える判断」だけに頼って動くのではなく、倫理観や感情などの同意を含んだ「納得」がなければ、診断結果や指示に従うことが難しいことが知られています。
  • 技術の普及速度の増大…検索すれば、さまざまな調査結果(※2)を見つけることができますし、日常生活で体感する場面も増えてきているのではないでしょうか。 (世間的にはIT系の話が多いですが、個人的には、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、生物と機械の融合、生涯学習・能力開発に役立つ科学・技術など、ヒトという種の進化やQOLの向上につながりそうな、さまざまな分野の進展に関心があります。)

この4つに象徴されるような潮流があって、今の私たちが直面している「開放系の不確実な状況」が生まれていますし、今後、増えていくのだろうという認識は、「QOLの向上」のみならず、さまざまな判断を行ううえで重要ではないでしょうか?

図表1:『状況認識』の違いによって、『組織能力を向上させる取り組み』の内容は変わる

将来予測がほぼ確実なビジネス環境 VUCAなビジネス環境
保証されている結果を提供 同意に基づく製品・サービスの提供
要望・依頼に確実に応える姿勢が重要 要望を推測・共に言語化する姿勢が重要
手際のよい処理能力が重要 適切な課題設定能力が重要
計画性・着実性・手段を重視 創造性・柔軟性・目的を重視
無駄を排した効率化が重要 変化の創出/変化への適応が重要
自前主義の閉鎖系組織が優勢 協働が盛んな開放系組織が優勢
他社との競争に勝つことが重要 高価値創出に向けた協働が重要
行動定着と結果に着目 相互作用と成果に着目

 [ 出典:「@人事」様での連載記事:「今後は、行動定着よりも相互作用! キーパーソン・人財部門の役割は?」 より転載 ]

※1 AIは、ブラックボックス?…ホームズとワトソンに学ぼう!?(2017年7月11日投稿のFacebookページ記事)

※2 例えば、「Are Smart Phones Spreading Faster than Any Technology in Human History?」など

(A-2)「明確な目的と適切な課題」を設定する

さて、(A-1)でお示しした「開放系の不確実な状況」を進んでいく方法には、大きく2つのアプローチがあると、私は捉えています。

そのひとつが、「明確な目的と適切な課題を設定する」というものです。 「旅」の喩(たと)えを用いて、ざっくり言うなら、途中に「地図のない、状況不明の地域など」があることを承知しつつも、「目的地を定める」こと、羅針盤(方位磁石)とヘッドライトを持つ」ことを指しています。(もうひとつのアプローチについては、(B)でお示しします。)

綿密な計画を立てるのを好む方、計画の着実な遂行を好む方の中には、ミスや突発的な出来事を嫌悪し、一度計画に狂いが生じるとパニックに陥ったり大きなストレスを感じたりする方もいらっしゃいます。 こういった形で、「開放系の不確実な状況」を進む際に苦痛を覚える方にお勧めしたいのは、「想定外の出来事が起きて、寄り道をしたりすることがあっても、軌道修正して、当初の目的地に到着できれば良い」という考え方、すなわち、「目的地を忘れないこと、軌道修正できること」(プロセスよりも結果)に、より多くの意識を向けるアプローチです。

旅の途中に「開放系の不確実な状況」があるならば、事前にベストな「旅の仕方」(陸路、海路、空路の組み合わせ方ほか)がすべて明らかになるわけではない!という事実を受け入れる必要があるわけです。

途中で、鉄道会社のストライキが起きたり、火山が噴火してフライトがキャンセルになったり、地域の伝染病にかかってしまったり、大雨で橋が流されたり、移動中に相席になった人の結婚式に招かれたり、まったく新しい分野の虜(とりこ)になってしばらく滞在することになったり…といった想定外の出来事が起きるかもしれないということを受け入れよう!ということです。

ここで挙げたように、目的地に向かって進んでいく際には、一直線には行けない事情が生じ、直面する障害に応じて、その都度「適切な課題」(※3)を設定し、遠回りするなどの「課題解決」が求められる場合もあるでしょう。 こう考えると、旅に出る前の普段から、「柔軟な発想で課題を解決できるよう、状況対応力(軌道修正する力)の向上に努める」ことが、「開放系の不確実な状況」を進んでいく際に重要であることがわかります。

しかし、「いやいや、そんな特殊な事例を挙げられても困るなぁ。 やはり、最初から最後までの旅程が明確に把握できないとなぁ。」という方も、いらっしゃるかもしれません。

それでは、(この記事を執筆している、まだ、自動運転車が広く普及していない今の段階で)「普段、東京に暮らしていて、東北地方に詳しくないあなたが、青森市から福島市まで、自動車を運転して、夜間移動しなければならなくなった状況」を想像してみてください。

途中の経路が事前にすべて明らかになっているわけではありませんし、突然、道路に動物が飛び出してくるかもしれません。 しかし、(ロービームは前方40メートル、ハイビームは前方100メートルを照らす)車のヘッドライトによって、数十メートル先の状況は把握できます。 (「まったく新しいこと」に関するデータは皆無であり、「分析して考察したり、仮説を構築したりするだけのデータが充分に存在しない」ことは珍しくありません。 このように、詳細情報不足で定量分析ができない状況では、「明快な論理の流れ」を構築するのに注力したり、「経験の蓄積から生まれる直感」を指針としたり、「現場体験から生じた感情を言語化して複数人で議論」を行ったりして前進します。)

前方数十メートルの近未来の状況を把握・予測して前進しながら、さらに先の数十メートルを把握・予測する…問題が発生すれば対応し、また前方数十メートルを把握・予測し、前進する…というプロセスを繰り返すことによって、結局、青森市から福島市まで夜間移動が可能になるのではないでしょうか。

目的地が明確で、羅針盤となるものを持っており、ヘッドライトなどを用いて、「しばらく進むのに必要なだけ、先の状況を把握・予測しながら進めば」、事前に全旅程が明らかになっていなくても、目的地に到達することができると、同意していただけるのではないでしょうか。

ここまでお伝えした、「目的地を定め、羅針盤とヘッドライトを持とう!」、そして、「計画を立てるなら、想定外を想定し、余裕を持たせよう!」というのが、「開放系の不確実な状況」を進んでいく際にお勧めしたい、ひとつ目のアプローチです。 あなたの目的地はどこで、羅針盤やヘッドライトに相当するものには、何がある/誰がいるでしょう?

※3 「問題、課題、目標の違い」については、例えば、下記をご参照ください。
「『課題設定』≠『目標設定』;『飛んで火に入る夏の虫』!?」

(A-3)「画一化ではない標準化」を効果的に推進する

(A-1)でお伝えした、「デジタル化」「つながる社会」「ブラックボックス化」「技術の普及速度の増大」という話があって、各種データや知識に加え、最新技術までもが安価で手に入りやすくなってきています。

すると、知識でも技術でも戦略でも…多くの物事がコピーやシェア可能となるため、組織が競争優位を持続させることが困難になってきています。 こうして、「一時的な競争優位性をもたらす新製品・新サービス・事業戦略」の相対的な重要性が低くなる代わりに、重要性が高まってきているのが、「他社が模倣困難な組織・人財づくり」であり、「組織自体の成長や持続的な繁栄への貢献が期待される、『事業領域選び、組織・人財、技術など』に関する戦略」や「戦略の『立案』の先にある、戦略の『実行』を可能にする組織としての取り組み」です。 何しろ、「コピーが困難で、違いを生むことができるのが、人財・組織の領域に狭まってきている」のですから!

「デジタル化」「つながる社会」という流れ、そして、「ビジネスのグローバル化」という文脈では、「標準化」が大切になってくるのは確かですが、上述の「コピーが困難で、違いをもたらすのが、人財・組織!」というところに意識を向けるのであれば、「標準化」と言っても、「組織・人財の持つ力を最大限に引き出せるよう、固定的・静的な印象も与えがちな『画一化』にとどまらない、『標準化』されたフォーマットや仕組みの『動的な活用方法』を、独自に工夫しなければいけない!」のではないでしょうか? 

例えば、「制度」の上手な活用には、「設計:運用=2:8 or 1:9」のような比率での取り組みが有効という話を見聞きしますし、組織・人財開発コンサルティングの経験上も、そういった姿勢が重要だと感じています。 この話を踏まえると…あなたが所属される組織で効果的な「標準化:個別対応」の比率は、どうなりそうでしょう? 「8:2」のような「標準化」重視が効果的でしょうか、それとも「2:8」のような「個別対応」重視が効果的でしょうか? 組織や事情によって異なるとは思いますので、安易なマネに走らず、自組織にとって効果的な比率を探求なさってみてはいかがでしょうか?

大きな傾向としては…ひとりひとりの違い(多様性)に目を向けず、従業員を「労務をこなす、機械の歯車」のように見なしがちであるとか、「性悪説」に基づいているなどと見なされがちな、「従来の『管理』(監視?)を行うための『標準化』」から、「機械と共存する、人間としての豊かな働き方の実現」(※4)や「組織・人財を『開発』するための『標準化』へ!」という意識変革が、クラウドへのアクセスや、個々人の行動分析などに基づく個別対応が容易になってきている私たち」に求められていると、私は捉えています。(※5)

また、組織・人財コンサルティングの分野では、「戦略の実行支援」のさらに先にある「自ら、戦略の立案・実行・成果創出が可能な組織・人財の開発支援」、つまりコーチングの色合いが強いコンサルティングへ(※6、7)と、ニーズ・ウォンツが移っていくだろうと、私は捉えています。

何しろ、「他社が模倣困難な組織・人財づくり」を実現するにしても、「開放系の不確実な状況」を進むにしても、さまざまな制度を設計したり、ITシステムを導入したりする以上のエネルギーを持続的に投入して、制度・仕組みの運用・浸透きめ細やかな個別対にも取り組み、個々人の、そして組織としての「能力のピラミッド」(図表2)の上半分(十分条件)を高めていくことが重要となるのですから。

あなたは、「画一化ではない標準化」を効果的に推進するというメッセージに触れて、どんなことを考えたり感じたりされましたか?

f:id:能力のピラミッド

図表2:能力のピラミッド
[ 出所:「能力のピラミッドの『上半分』を高めようとしていますか?」]

※4 参考記事:「セマンティック組織開発」のすすめ〜インフラ整備後の人財部門の在り方〜

※5 組織・人財開発コンサルタントから見た「標準化」について

私は、「コンサルティング手法等の標準化」による、コンサルタントの早期育成コンテンツ・サービスの一定水準の保証を意図する「標準化」には賛成しています。

一方、コンサルタントの「多様性」(独自の経験・強み・個性ほか)や、クライアントとの「協創」プロセスによって生じる新たな解が「高い付加価値」を創出する点を踏まえると、コンサルタントの「画一化」には心理抵抗を覚えます。(「代替可能なロボット」のようなコンサルタントになることが奨励されるのであれば、「働き甲斐」「モチベーション」の側面で、問題が生じるでしょう。)

「標準的な基盤となるものを共有したうえで、各コンサルタントならではの価値の創出を目指し、新たに生まれたアプローチで、普遍的な形式知として共有・蓄積できるものについては、積極的に新たな知見の標準化を進める」のが、「組織・人財開発コンサルタントとしての、標準化との付き合い方」だと、私は捉えています。

※6 

「特定領域の専門家」と「合同会社5W1Hの考えるコーチ」の違い

図表3:「特定領域の専門家」と「合同会社5W1Hの考えるコーチ」の違い
[ 出所:「『専門家』と『コーチ』の違い~『非可換性』を高めよう!~」]

※7 

弊社流コーチングに期待できる効果の例:①~④」

図表4:「弊社流コーチングに期待できる効果の例:①~④」
[ 出所:「そうか!こんな効果が見込めるのか!!@職場コーチング篇」]

 

「(A)羅針盤とヘッドライト」の3ポイント

(A-1)「開放系の不確実な状況」を認識する

(A-2)「明確な目的と適切な課題」を設定する

(A-3)「画一化ではない標準化」を効果的に推進する

 

(B)ルールではなくガイドライン

(B)では、「開放系の不確実な状況」を進んでいくのにお勧めの、(A)とは別のアプローチをご紹介します。

(B-1)「予測困難」なら「創発」を志向する

ここではまず、「4つの戦略(『創発的・機械論的』×『ヴィジョン・価値観』版」の図表をご覧いただきましょう。

「開放系の不確実な状況」を進んでいくには、「機械論的」アプローチでは対応できないことが多いため、もっぱら創発的」アプローチを基本方針とすることが重要です。 (さまざまな「発想法」を知り、それらを体得できるように、普段から「発想するクセ」をつけることも大切だと考えています。)

4つの戦略(「創発的・機械論的」×「ヴィジョン・価値観」版)

図表5:4つの戦略(「創発的・機械論的」×「ヴィジョン・価値観」版)

[ 出所:「上意下達の『戦略→組織』に偏り過ぎていませんか?」;「組織は戦略に従う」という考え方と相性の良い「機械論的」アプローチと、「戦略は組織に従う」という考え方と相性の良い「創発的」アプローチについて興味をお持ちの方は、出所でお示しした記事をご覧ください。]

 

そして、(A)でお伝えした内容が、右上の「手段選ばず、サバイバル」に相当することがお分かりいただけると思います。 「開放系の不確実な状況」を進んでいく際に有効な、別のアプローチとしてご紹介したいのが、右下の「軸をぶらさず、適応・進化」に相当する(B)のアプローチです。

(A)は「目的地を忘れないこと、軌道修正できること」(目的地への到着;プロセスよりも結果)に、より多くの意識を向けるアプローチでしたが、(B)は「大切にしたい物事を、実生活で大切にしつつ過ごすこと」(日々の価値観の充足;結果よりもプロセス)に、より多くの意識を向けるアプローチです。

例えば、「今回の旅では『楽しさ』を感じることが大切だ」という人が、「当初、東京から南極に向かおうとして旅を始めた」ところ、さまざまな出会いや体験を経て、「アルゼンチンを満喫する旅にした方が、楽しそうだ」と思うようになり、「最終目的地を、南極ではなくアルゼンチンに変更することで、『より多くの楽しさ』(程度×長さ)を体験できた!(と自分で感じた/確信することができた)ので大成功!」と見なすのが、(B)のアプローチです。

「開放系の不確実な状況」を進んでいったからこそ得られた、「事前に想定していなかった結末」であり、「本人が大切にしたいモノを実際に大切にできた!」という点が重要ですね。 (目的地への到達をあきらめたり、妥協したりしたというのとは、根本的に異なる話であることに注意してください。)

(B-2)「相互作用を通して自己理解」を深める

「開放系の不確実な状況」を迷わずに進んでいくために、(B)の「軸をぶらさず、適応・進化」というアプローチを採用するには、「自分(たち)の『軸』=『大切にしたい物事』が何なのか?」について、しっかりと把握しておくことが求められます。

そして、(A)のように、目的地を明確に定める代わりに、(B)では「他者・外的世界との関わりを通して自己理解を深め、職業生活・個人生活を送るうえでの、『ぶれない軸』(アイデンティティ、信念、価値観など)=『大切にしたい物事』を設定する」のです。 先ほどの「アルゼンチン旅行の例」を思い出していただくとわかりますが…ここで言っている「軸」というのは、「細かくて厳格なルール」ではなく、ある程度の許容幅・自由度を持たせた「緩やかなガイドライン」(計画立案や行動選択などの際に、ヒントを与えてくれるもの)です。

「他者・外的世界との関わりを通して、自己理解を深める」という内容については、よく「を用いたりしないと、自分の姿を見ることができない」という話や、ジョハリの窓を用いて説明されます。

ジョハリの窓

図表6: 「ジョハリの窓」(“Johari window” by Joseph Luft & Harry Ingham) を用いたリーダー育成
[ 出所:『質問力』で『人財育成部門』の変革を支援する…とは?]

 

ジョハリの窓」は、自己理解を深め、他者・外的世界とのコミュニケーションをより円滑にするために用いられます。

例えば、「ある人が『断定的な発言が多い』ということを、周囲のみんなが知っているのに、本人に自覚がない」などといった「盲目の窓」については、どういった狙いで、どういったタイミングで、周囲の人がどのように本人に伝えるのかが大事になりますし、「ある人が劣等感や羞恥心から、現在の姿からは想像できない過去の経歴を伏せている」などといった「秘密の窓」については、どういった意図で、本人が周囲に秘密を告白するのかについて、検討することが大事になります。

(B-3)「一貫性と柔軟性を整合」させる

「開放系の不確実な状況」にあって、「『ぶれない軸』という『ガイドライン』からはみ出さないようにしつつ、直面する状況に応じて、進行方向や進行方法を柔軟に変化させるなどして前進する」というのが(B)のアプローチであり、「一貫性と柔軟性を整合させる」アプローチであるとも言えそうです。

…ここで、もう一度、「アルゼンチン旅行の例」を思い出してみてください。 「一貫性がある」というのは、「終始『ぶれない軸』を保って旅をする」ということを指していて、「柔軟性がある」というのは、ガイドラインから逸脱しない範囲で、臨機応変に状況に対応しつつ旅をする」ということを指しています。

自己理解を深める方法には、コーチングやフィードバックを活用したり、異分野に接したり、異文化を体験したり…と、さまざまな方法がありますが、あなたは、「軸」=「大切にしたい物事」をどのように見つけ、その(抽象的であることの多い)「ガイドライン」を、実生活において、どのように具体的に適用されているでしょうか?

「(B)ルールではなくガイドライン」の3ポイント

(B-1)「予測困難」なら「創発」を志向する

(B-2)「相互作用を通して自己理解」を深める

(B-3)「一貫性と柔軟性を整合」させる

 

(C)信頼される旅人になる

最初にご紹介した、(A)の「目的地を忘れないこと、軌道修正できること」(目的地への到着;プロセスよりも結果)に、より多くの意識を向けるアプローチは、「途中の経路で、地図のない場所を通るけれど、最終目的地に関する地図は持っている場合」「自らが、最終目的地を創造することを狙って、ヴィジョンを描いている場合」に役立ちます。

続けてご紹介した、(B)の「大切にしたい物事を、実生活で大切にしつつ過ごすこと」(日々の価値観の充足;結果よりもプロセス)に、より多くの意識を向けるアプローチは、「目的地の地図をもっていないのはもちろん、経路も不明か未確定の場合」に役立ちます。

「未知の世界」あるいは「開放系の不確実な状況」を進む私たちは、「地図を持たない旅行者」です。 その「地図を持たない旅行者」が「未知の世界を旅する」という「発見的過程」を進む際に有用だと捉えているマインドセットについて、(C)でご紹介しようと思います。 (「発見的過程」については、「『知識のファネル』と『フレームワーク質問力®』の対応関係」を示した図解をご参照ください。)

「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力®」の対応関

図表7:「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力®」の対応関係
[ 出所:正解がある時代には『○○は必要か?効率的か?』が有効だった…」]

 

 (C-1)「開放系の不確実な状況」を進むための「優れた問い」

「機械とヒトの違い」についての2つの視点

図表8:「機械とヒトの違い」についての2つの視点
[ 出所:「『セマンティック組織開発』のすすめ〜インフラ整備後の人財部門の在り方〜]

 

今後は、「人間は『問い』を立て、機械はその『問い』に答える」という役割分担が増えていくでしょうから…

私たちが「QOLの高い、豊かな生き方・働き方」を実現するには、「『機械とヒトの違い』についての2つの視点」で示したように、「何が大切か?」という質問に明確に答えることができること、「自分なりの価値判断基準に基づいて、適切な課題設定ができること」が重要です。 これは、その時々の状況において、「自分にとって、QOLの高い生き方・働き方を実現するのに役立つ解釈・態度・行動とは?」という質問に答えることができるということでもあります。

「質問というのは、解決策や新たな可能性といったものが流れ込んでくる仕掛けなのです」
--ティナ・シーリグ(高野による意訳)

Questions are the frames into which the answers fall.
 --Tina Seelig

「問いを立てる」というのは、「当事者の『状況認識』(経験や教養などから成る背景知識や入手した最新情報、出来事の解釈の仕方など)に基づき、『わかったつもりにならず、クリティカル・シンキングを心掛け、問うべき大事な事柄を特定する』こと」だと、私は考えています。 約11年間に渡ってフレームワーク質問力®」でお伝えしてきた中で重要なことのひとつが、この「『課題を適切に設定する』ために『優れた問いを立てる』能力を高める」ということでした。 そして、「視座を高め、視野を広げ、視点を適切に選ぶ力を育もう!異質な解釈や考え方をぶつけ合い、独自の価値観・人間観・世界観などを育んでいこう!」と継続してきたのが「教養醸成の会」(※8)という読書会です。

(A-3)では、「組織・人財コンサルティングの分野では、『戦略の実行支援』のさらに先にある『自ら、戦略の立案・実行・成果創出が可能な組織・人財の開発支援』、つまりコーチングの色合いが強いコンサルティングへと、ニーズ・ウォンツが移っていくだろう」とも書いておりました。 これは、下記のようなコンサルティング・スタイルのシフトが求められるだろうという主張です。(※9)

「相談を受けたら、ソリューション(解決策、答え)を提供する」コンサルティング

…お腹が空いた人に「手持ちの魚を提供する」アプローチ

「相談して来てくださった組織・人財が、自力で答えを導く(目的を達成する、問題を解決する、意思決定をする…)ことができるように、『答え』ではなく『適切な質問』を提供するなど、『納得解を協創するパートナー』(コーチ)として相手をさせていただく(粘り強い『戦略の実行支援』を含む)」コンサルティング

「魚釣りの道具を与え、自力で魚を釣れるように支援する」アプローチ

さて、「開放系の不確実な状況」を進むために、あなたは「質問」とどのように付き合っていくのが良さそうでしょうか? また、組織能力を高めるには、どういった視座・視野・視点を持った人財を巻き込んで(自前主義を卒業して、他力を活用して)いくのが良さそうでしょうか?

※8 「教養醸成の会」の継続について
ニューズレターでお知らせしていたように、「教養醸成の会」は、2017年9月の回で法人としての営利開催を終了いたしますが、2017年10月以降は、本業を優先しつつ無理をしない形で、個人としての非営利開催(公的施設や貸し会議室などを利用する場合には、会場代を割り勘;カフェなどで開催する際には、ドリンク代のみ自己負担)を予定しております。 興味をお持ちの方は、Facebookのグループ続・教養醸成の会をご覧のうえ、ご参加ください。

※9 科学史上、最も有名なコンビ」と「適切な質問」についての参考記事です。
「実験結果」よりも「適切な質問」…ワトソンとクリックの場合

 

(C-2)「つながり」を通した「随時アップデート」

本号は勿論、これまでニューズレターでご紹介してきた内容も思い出しつつ、「開放系の不確実な状況を進むために有為の人物像」の整理を試みると、例えば次のようになります。

  • わかったつもりにならず、視座を高め、視野を広げ、視点を適切に選んで、状況把握や適切な課題が設定できる人物
  • 既存の枠組みや従来のやり方を妄信せず、役割や立場の異なる関係者との間で、時には、分野/部門横断的に、納得解を粘り強く協創していける人物
  • 標準化されたシステムやデータ分析などを駆使しつつ、多様な価値観を持つ相手に合わせて働きかけ方を変えるなど、個別対応ができる人物
  • ぶれない軸を持ちつつも、異見との共存や統合を心掛けたり、他者からの質問やフィードバックを積極的に受け入れたりして、目的達成や持続的な自己刷新に取り組む人物
  • 予測困難な状況を乗り越える原動力(情熱、創造性、主体性)を、関係者から引き出すことのできる人物

など

ここで改めて指摘しておきたいのは、「開放系の不確実な状況を進むために有為の人物像」という「個人」(点)を描写しようとした時に、「対人関係」(線)「エコシステム」(※10;複数の線から成るや、複数の面から成る立体)の話が不可欠になってくるということと、「静的ではなく、動的な内容」になっているということです。

この点を強調して、私なりに「開放系の不確実な状況を進むために有為の人物像」について表現し直すと、「さまざまな『つながり』を通した、『随時アップデート』(=仕組みや自己認識の『脱構築→再構築』サイクルの繰り返し)ができる人物」となるかもしれません。

「いろんなモノがつながった世の中」(開放系)では、私たちは「孤立」しているわけにはいかず、「つながっている先の変化」に合わせて「自己刷新を遂げる」という形で「適応する」ことが求められるというわけです。 (他には、自らが先に「変化の起点」になるという選択肢もあります。これは、既にご紹介した、発見的過程」を自力で進むことができる組織・人財になるという内容に該当します。)

そして、「『つながり』を通した『随時アップデート』」を可能にするには、「本音などの重要情報を打ち明けてもらえる」とか「納得解を粘り強く協創していくパートナーと認めてもらえる」など、「信頼関係を構築・維持できるコミュニケーション能力」が必須となります。 「開放系の不確実な状況を進むために有為な人物」には、他者との「差別化要因」として、「信頼関係の構築・維持を可能にするコミュニケーション能力」が求められるということです。

「信頼関係」を築く際に大切な事柄にはいろいろな側面があると思いますが、ここではその中のひとつとして、「下記3種類の、相手の欲求を満たす」ことが大切という話をご紹介しておきます。

  • 「認知」されたいという欲求…名前や作品などについて知っていることを、どのように伝えていますか?
  • 「共感」されたいという欲求…うなずくなどの非言語メッセージに加え、どの部分に賛成しているかなどについて、具体的に伝えていますか?
  • 「評価」されたいという欲求…何がどう優れているのか、貢献を認めている背景にどういった判断基準があるのかなどについて、どのように伝えていますか?

あなたは、「開放系の不確実な状況」を進む際に、「『つながり』を通した『随時アップデート』」が円滑に行えるよう、どのような形で「相手の『認知・共感・評価』欲求を満たして信頼関係を築く」というコミュニケーションを実践されているでしょうか?

※10 「エコシステム」「ケイパビリティ」
エコシステム(ecosystem)とは一般に「生態系」を指し、ビジネスの文脈では、「収益活動協調体制」「特定の業界全体の収益構造」を指して用いられることのある言葉です。 そのため、「組織」の話とは限らず、文脈によっては、「プラットフォームどうしの競争」(例:iOS vs Android)を記述する際に用いられることもあります。 ケイパビリティとの関係については、参考記事をご覧ください。
なぜ、わざわざ「ケイパビリティ」などと呼ぶのか?

(C-3)「借り物」を楽しむ「軽やかな旅人」

「変化が速いだけで、向かう先が読めるのであれば、対処もしやすい」のでしょうが、(A-1)で取り上げた「開放系の不確実な状況」を乗り越えていくために、私たちはさまざまな手段を講じようとしています。 そして、その手段のひとつとして、「多様性」(不均質性)あるいは「柔軟なキャリアの変更」への関心が高まっているのではないかと、私は捉えています。

実際に近年では、「『人生100年時代』(定年後数十年過ごすのが普通な時代)を『生き抜く力』を身につけて欲しい!」という想いを前面に出し、「専業禁止」を掲げる企業(副業しなければならない企業)もあれば、複数の組織に所属する「複業」採用を行う企業もあれば、「定年を廃止」した企業もあるなど、一部では「働き方の多様化」も実現され始めています。

「『組織の方向性』と『個々人の価値観』のすり合わせがうまくできている状態」、もう少し詳しく言うと、「組織の『価値の創出や提供に向かうベクトル』(共感できるヴィジョンや価値判断基準などに基づく、さまざまな活動)と、個人の『欲求充足や意味創出に向かうベクトル』(生物としての喜びや、人間としての表現や貢献などを求める、さまざまな活動)が、互いの成長に貢献し合う関係になっている状態」のことを「エンゲージメント」(engagement)と呼んで、組織開発・人財開発の分野で重視していますが、上述のような形で「働き方の多様化を奨励する組織である」ことは、「個人のエンゲージメントを高める」のにも役立てられています。

…また、さまざまな調査や研究によって、「エンゲージメント」と「パフォーマンス」(業績)の間には、深い関係がある(エンゲージメントを高めることには、実利がある)ことなどがわかってきています。 興味をお持ちの方は、是非、お調べになってみてください。

さて、いよいよ「QOL向上のヒント」という名前のニューズレターの終わりが近づいてきましたので…(C-3)では、「いつも端的で明確な答えを欲する人」には過ごしづらい、「開放系の不確実な状況」そして「不均質で、スッキリとした意思決定が難しい曖昧な状況」を生きていく私たちには、「どんなマインドセットを身につけることが望ましいのか?」について、今の私が考えていることをご紹介してみようと思います。

「変化の激しい時代」を生きるには、大まかに言えば、「自ら変化を生み出す」(←「発見的過程」を自力で進むことができる組織・人財になる)「適応する」(←外的基準に、内的基準を合わせる)しかありません。

これまでのニューズレターでは、イノベーション」(創新普及)という切り口から「自ら変化を生み出す」ことについていろいろ書いてきていますので、ここでは、「適応」という処世術について考えてみましょう。

改めてですが…「変化の激しい時代」というのは、「短時日のうちに、外的基準が崩れ去ることが増えた時代」でもあります。 (ここで言う外的基準には、「少数の他者や所属組織などが、人為的に定めた価値判断基準」を指す場合もあれば、流行や人氣のように「世間一般の人々がそれとなく共有する価値判断基準」を指す場合などがあります。)

したがって、大事な決断をする際、特に、数年後、十数年後、数十年後にも影響を及ぼすような決断をする際には、外的基準に頼ることができず、内的基準(自分が、理性的だけでなく感情的にも合意できている価値判断基準)に頼るしかありません。 (B)で言うところの「ぶれない軸」(ガイドラインですね。

ただし、「適応」とは「無理して、我慢して、内的基準を外的基準に合わせること」だと誤解してしまうと、「適応に躓(つまづ)く」ことになってしまいかねません。

真面目な方ほど、「内的基準に従い、自己表現に注力するのは、ワガママ(利己的)である」と捉えて避けがちで、何でもかんでも、強引に「内的基準を外的基準に合わせよう」(自分を他者あるいは周囲に合わせよう)とすることで、憂鬱や葛藤など、さまざまな形の苦痛に悩まされることになるのです。

ところが、実際に「内的基準に従い、自己表現に注力する」と…

  • 「働き甲斐」「生き甲斐」を感じることが増える
  • 取り組み方も「熟達」して、自己表現がうまくなる
  • 高い集中力を持って取り組み、振り返ってみると「自己と取り組み対象との境界が無くなっていたことに氣づく」こと(物事に没頭するという経験)が増える
  • 内発的動機に基づいて、ある意味、利己的に始めた取り組みに没頭することで、「利己と利他」の境界がなくなる状態に至り、「結果的に、外的基準をも満たす自己表現」に向かう

ことが多いことに氣づきます。

人の目や対人関係に配慮して、望まないながらも「内的基準を外的基準に合わせよう」とするのではなく、些細な事柄に関しては適当に外的基準に合わせつつも、自分が本当に大切だと思う事柄に関しては、「内的基準に従い、自己表現に努めると、結果的に、外的基準を満たすようになる」という形の「適応」が、QOLを高める生き方を実現するうえで、大切なのではないでしょうか。

しかし、そうは言っても…「自ら変化を生み出す」場合にも「適応する」場合に、大きな障害として登場しがちなのが、上述の「人の目や対人関係に配慮して…」などに代表される、「自分で自分にブレーキをかける心の働き」すなわち「内的基準に従い、自己表現に注力すること(本来持っている『伸びしろ』を機能させたり、成長させたりすること;リスクや責任を主体的に負いつつも自分らしく生きること)を躊躇し、取り止めてしまう心の働き」かもしれません。

では、どのようなマインドセットを身につけることが、「自ら変化を生み出す」場合、「適応する」場合に役立つのでしょうか。 これまでのエグゼクティブ・コーチング、ライフ・コーチングを提供させていただいてきた経験を私なりに振り返って、いわば「人生の達人」と思える方々から学んだマインドセットについて言語化すると、次のようになります。

  • 身体は、高々100年程度の「借り物」、壊れ物。
  • 「自分の持ち物」と言えるのは、心(思想や生き様など)くらい。
  • 心は、鍛え方・扱い方次第で、生き継ぐことのできるもの。

このような、「世界観」「人生観」(「この世界=△△」「私の人生=□□」というモノであるという信念)を持てていて、私たち自身が、この世の中への「客人」だというアイデンティティ(「私=○○」であるという信念;「セルフ・イメージ」、場合によっては「役割」)を持てていると…

  • 三度三度の食事が口に合わなくても、不平などは言わないもの
  • 客人であるにも関わらず、得られる「自由」(※11)があるなら、その自由をとことん大切にしよう!

という考え方を、自然に受け入れられるようになります。

※11 ここで言う「自由」とは、「行動の自由」ばかりではなくて、「選択の自由」、「出来事の解釈の自由」など、「心の働きの自由」も指しています。
[ 出所:『持ち物』と『借り物』]

このマインドセットを、さらに圧縮して表現しようとすると、

「創造するには執着して、適応するにはさらりとして」

となります。

前半部分は…研究開発に代表されるような、「自ら変化を生み出す」活動に関して、「客人としての自由を最大限に活用」しながら、「能力のピラミッド」の上半分、「予測困難な状況を乗り越える原動力」としてご紹介した「情熱・創造性・主体性」を発揮するよう、「特定の対象や活動」に、ある意味、執着して取り組むのが大切だという内容です。

後半部分は…無理して「自分を他者あるいは周囲と同質化しよう」と、自ら悩みを抱え込むのではなく、些細な事柄に対してであれば、客人(異質な存在)として、「自分なりのこだわりに執着し過ぎず」に、「カラリと雲一つなく晴れた空のような精神」で何となく周囲を明るくし、「さらりとして率直な態度」や「無邪氣でイキイキした言動」で外的基準と付き合うのが大切だという内容です。(※12、13)

あなたは、「創造するには執着」して、「適応するにはさらりとした態度・言動」で、「開放系の不確実な状況」そして「不均質で、スッキリとした意思決定が難しい曖昧な状況」を生きていくという心構えについて、どんなことを感じたり考えられたりするでしょうか?

※12 「無理に○○しようとする執着心、新たな可能性・やり方を排除する狭量な心」は、「大抵の物事に動揺せず、何があっても安定を失わず、柔軟に対応する不動心平常心」(精神統一状態)と真逆なのではないでしょうか?
[ 出所:本当の意味で『揺るがない心』とは?]

※13 私たちの心が「記憶や記憶に基づいて『独自の解釈』を重ねるような、『言語』を用いた活動を一生懸命やっていない『赤ん坊』のように、『素』である状態」という、「基盤」の状態が「平常心
[ 出所:再度、『平常心』。そして、ホームズ&ワトソンの話。]

 

「(C)さらりとした、旅の達人になる」の3ポイント

(C-1)「開放系の不確実な状況」を進むための「優れた問い」

(C-2)「つながり」を通した「随時アップデート」

(C-3)「借り物」を楽しむ「軽やかな旅人」

(A-1)で書いた「つながる社会」では、「迷惑をかけなければ自由という価値観」は、非現実的で、傲慢なものと解釈されるようになっていくのかもしれません。 私たちは、「『つながり』を通した『随時アップデート』」が求められる社会で生きていくのであり、現在の自分のアイデンティティが固定化してしまっているほど、外的環境の変化に苦しみます。

些細な事柄に関しては、たとえそれが、意に沿わない状況、曖昧な状況であっても、自分が「借り物の姿」に「カラリとした心」を宿す「客人」であることを思い出し、「さらりとした態度・言動」で「持続的な自己刷新」を楽しみつつ旅を続けるというのが、「人生の達人のマインドセットであり、「QOL向上のヒント」なのではないか?と考えています。

さて、(A)から(C)までの長文に目を通してくださったあなたは、「何を大切にすることを選び、何に執着しないことが、自分や関係者の『QOLの向上』にとって望ましいのか?」について、今後どのように考え行動していくのが良いと思われるでしょうか。

今の職業生活・個人生活のどこに感謝し、何を楽しむことができるでしょう?

現時点における幸せや意義を見つけるには?

人間関係は、どのようにして大切にしていきますか?

今後、何に挑戦していきますか?

…など、いろいろ考えたり、話し合ったり、行動したりなさってみてください。

ご購読者のみなさまの、ますますのご発展を祈念しております!

『具体』と『抽象』をつなぐ、『真善美』『知情意』『自然・社会・人文科学』

図表9:『具体』と『抽象』をつなぐ、『真善美』『知情意』『自然・社会・人文科学』
[ 出所:人間力? 真善美、知情意、自然科学・社会科学・人文科学]

 

以上で、ニューズレター「QOL向上のヒント」は終了とさせていただきます。
これまでご購読いただき、誠にありがとうございました!

合同会社5W1H 高野 潤一郎

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