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人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「ウェブ上でのセミナー依頼」を頂戴して考えたこと(第103号)

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こんにちは、合同会社5W1H代表の高野潤一郎です。

最近、複数の企業から「ウェブ上でのセミナー依頼」「ポータルサイトでの、有料コンテンツ配信サービス活用の御提案」をいただきましたので、今回は、こういったお誘いをいただいたことをきっかけにして考えたことをお伝えできればと思います。

 

有料のモノと無料のモノ

地球環境問題が存在感を増してくる前の日本では、「空氣も水も、無料が当たり前」でした。ところが最近では、工業化が進むに伴い大氣汚染が深刻になってきている国や地域に住む人々が、「透明度が高く、おいしい空氣の土地の買い占め」に乗り出したりしていますし、水資源の枯渇が著しい国や地域に住む人々、あるいは、「水メジャー」企業は、「飲用に適した安全な水」を求めて「世界各地の水源や水源涵養能力を持つ山林の買い占め」に乗り出したりしています。空氣清浄機やペットボトルの水を購入する人々が増えているといった傾向を見ても、「空氣も水も、有料になってきている」という動きがあることに同意していただけるのではないでしょうか。

一方、1900年(明治33年)に「自働電話」と呼ばれていた公衆電話が設置されたばかりの頃 [ コメ1升(約1.4kg)が16銭という時代 ] の公衆電話料金は、市内5分1通話が15銭という価格(…NTTコミュニケーションズさんのウェブサイトより)でしたが、最近では、Skypeのようなインターネット電話サービスや、携帯電話を用いる「無料通話」サービスも増えてきています。また、戦後初の民間航空輸送を開始した1951年(昭和26年)、大卒の初任給が1万円に満たなかった当時の航空運賃は、東京~大阪:6000円、東京~福岡:11520円、東京~札幌:10200円という価格でしたが、最近では、「航空運賃が無料」というサービスも登場し始めています。このように、空氣や水が有料になってきているという動きとは逆に、「高額だった通信や航空輸送が、無料で利用できる機会が増えてきている」といった動きもあるようです。

何が有料化していき、何が無料化していくのかについて、どのような過程を経て決まるのかは一概には言えないのでしょうが、一定期間の価格の推移を見ることなどによって、有料化/無料化のおおまかな傾向について推測が可能となるモノもあるように思います。

では、ウェブ上での有料セミナー(有料コンテンツ配信)については、どのように考えることができるでしょうか。

 

良質なコンテンツを配信するウェブサイトの例

私は、ウェブ上での有料セミナー(有料コンテンツ配信)を「著作物の一事例」だと捉え、まずは、ウェブ上で目にすることができる「著作物」(※)にはどんなものがあるのか、いろいろ思い返したり、探したりしてみました。すると、例えば次のようなコンテンツ配信事例もあることに氣づきました。

※著作物とは?
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法2条第1項1号)…「思想又は感情」の外部表現として「著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りる」と考えられており、「文芸、学術、美術又は音楽」の4分野に限定されると解釈するのではなく、こういった分野を包括する知的・文化的な精神活動全般に該当するもの、例えば、小学生の作文なども著作物性を有すると考えられている。

  • 著作権者の死後一定期間が経過し、(米国著作権法下で)著作権の切れた書籍の全文を電子化して、インターネット上で公開するという「プロジェクト・グーテンベルク」(Project Gutenberg)では、現時点で3万6000点を超える電子書籍を無料で公開しています。
  • 様々な分野の人物が講演を行うTED Conference(年に一度、米国カリフォルニア州モントレーで開催)の様子を無料動画配信することで広く知られるようになったTED(Technology Entertainment Design)は、現在900以上の講演を視聴でき、新たなコンテンツが毎週追加されていることでも知られています。
  • 英国版の放送大学に相当するOpen Universityでは、学習コンテンツの提供に加え、学習者どうしが意見交換等も行えるOpenLearnというコミュニティを提供しています。
  • 世界で最も普及している「オープン・エデュケーション」(Open Education)サイトの1つとして知られるConnexionsというコンテンツ管理システムでは、多くの人々に共同で教材を作ってもらうための環境を提供した上で、出来上がった教材を利用者が自由に編集できるようにし、作成した教材の印刷・製本が注文できるようになっています。1万7000以上の学習コンテンツ(テキスト、学術誌に掲載された論文など)の内、1000以上のコンテンツが毎月200万人を超える人々によって使用されています。
  • MITでは、すべての講義と講義資料を公開しようするOpen Course Wareを軸に、世界中の人々がインターネットを介して、シミュレーションではなく、本物の実験や分析が行えるiLabなどのようなアプローチを組み合わせることで、実空間における教育の付加価値も上げていこうという取り組みを行っています。

 

学習者の行動や態度、価値観を画一化して規制する伝統的な教育方法を否定的に捉え、「教育の自由化・学校の開放化」を推し進める教育イデオロギーとしてスタートしたとの説がある「オープン・エデュケーション」は、現在では、インターネットの登場に代表される「ITの隆盛によって可能となった、新しい教育の在り方」であると認識されるようになってきています。そして、こういったオープン・エデュケーションの背景には、「さまざまな格差を解消し、社会的弱者への教育機会を拡大する」という「慈善事業」(Philanthropy)、あるいは、「社会的強者の責務」(Noblesse Oblige;社会的強者は、社会に対して果たすべき責任は重く、高潔な振る舞いと、社会的弱者に対する慈愛が求められる)といった思想があると言われています。

確かに、ウェブサイト上での学習を中心として、有料で、大学や大学院の学位取得コースを提供するスタンフォード大学のように「何かの資格を授与する対価を求める」ものや、Nightingale-ConantLearning Strategies Corporationのようにコンテンツを有料販売するものは数多くあります。しかし、上述の囲みでご紹介したように、良質コンテンツを無料で配信するウェブサイトが増え、「ネット上の情報は無料が当たり前」という考えを持った人が増えている現状を鑑みると、例外はあるとして、長期に渡る大まかな傾向としては、「ウェブ上での有料セミナー(有料コンテンツ配信)は無料化の傾向にある」と推測することも可能ではないかと思っています。

ただし、コンテンツを利用するだけでなく、コンテンツを作成する役目も果たす私としては、「ウェブ上での有料セミナー(有料コンテンツ配信)は、無料化に向かう」とだけ認識して思考を停止するわけにはいかない事情があります。

 

著作者の権利の保護

これまでは、モノやサービスの価格に関する大まかな傾向として、有料化と無料化といった2種類の流れがありそうだという話を展開してきましたが、「著作物」を扱う場合であれば、有料化と無料化の二者択一で考えるのではなく、「一定期間保護され、有料で提供されるけれども、一定期間を経た後は、無料で提供される」というダイナミックな仕組みの下で、「ウェブ上での有料セミナー(有料コンテンツ配信)」についての対応を考えることが求められます。

著作者が、固定給を持ち、所属組織によって収入が保障されている立場にある人物であれば、「慈善事業」「社会的強者の責務」の思想に基づき、自分が創作した著作物を広く一般に無料で提供する姿勢も可能となりますが、著作物の販売等を主要な収入源としている営利企業の場合には、「法の下で保護されている一定期間の内に利益を得る仕組み」について考えておかないといけないわけです。

違法コピー等によって、著作者の創作や発明に対する意欲・氣持ちが薄れると、私たちにとって有益な新たな作品・製品等が世の中に出にくくなるなどの弊害が生じます。こうした社会の文化的・経済的発展の停滞を防ぐため、著作物は、知的財産権で守られています。これはどういうことかというと、「監督官庁からの指導」などよりも重みがあり、「法的拘束力の強い法律」によって守られているものが著作物であるということです。

知的財産法

  • 文化の発展 → 著作権法
  • 産業の発達 → 産業財産権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)
  • その他(不正競争防止法など)

 

知的財産法の遵守に関して、日本はまだまだ意識が低いですが、弊社ニューズレターの末尾に書いている次の事項について、お守りいただくよう、改めてお願いいたします。

【 重要 】 「セミナー/研修の参加報告」などと称して、所属組織内の人々にコピーを配布する行為は、私的利用を超えており、「法律」で禁じられています。引用などがどこまで許されているのかなどについては、その都度、下記の情報で確認いただければと存じます。
著作権・引用・免責事項・個人情報の取り扱い・リンク

[参考情報]

 

さて、著作物一般に関しては上記のような解釈をするとして、「ウェブ上での有料セミナー」(有料コンテンツ配信)ならではの特殊事情には、どんな側面から検討しておくことが求められるでしょう?

 

「セミナー」配信をする場合に考慮すべきだと思うこと

ここでは、複数の企業から「ウェブ上でのセミナー依頼」「ポータルサイトでの、有料コンテンツ配信サービス活用の御提案」をいただいたメールにあった(彼ら視点の)主要ポイントを取り上げて考えてみることにしたいと思います。

ウェブサイト・セミナー「受講者」の利益

  1. (すでに、参加に心が傾いている)セミナーや講師の雰囲氣について事前に知ることができ、実際に参加申し込みをするかしないかを決めるのに役立つ。←私も賛成です。しかし、これは実際のセミナー参加に取って代わる価値ではありません。
  2. 隙間時間に断続的に受講できる。好きな時間帯に繰り返し受講できる。←私も賛成です。これに関しては、実際のセミナーに参加した場合、参加者に復習用DVDや動画ファイルが販売されたり、配布されたりする場合もあります。しかし、講師や他の参加者との場の共有、時間や演習体験の共有によって学んだ内容を復習するためのトリガー(引き金)として動画を用いるのと、動画だけで学習を済ませるのでは、学習効果に大きな違いがあるとも考えています。
  3. 忙しくて、あるいは、遠くて、実際のセミナーに参加できない方が受講できる。←私は、半分賛成、半分反対です。これまで弊社セミナーにお越しいただけた、一番遠方からの参加者は、英国の知人から情報を得たオーストラリア在住の日本人の方でした。また、私自身もセミナー参加のためだけに、米国や英国に赴いた経験があります。自分(たち)にとって、本当に価値がありそうなセミナーであると思うなら、長期的な視点に立って、時間やエネルギーを投資することを選ぶことが多いように思います。

 ウェブサイト・セミナー「提供者」の利益

  1. セミナー開催時の、広告宣伝費・会場費・交通費・人件費・時間などを削減できる。 ←各種コストの削減に関しては、私も賛成です。しかし私は、セミナーは「単に、開催できればいい」モノだとは思っていません
  2. 一度撮影してしまえば、同一コンテンツを放置しておくだけで、繰り返し利益を得ることができる。←私は、半分賛成、半分反対です。知り合いの、ある大学教授が放送大学でバイオテクノロジーに関する講義を持ちましたが、一度撮影したものを5年間も繰り返し用いるのだと聞いて困っていたのを知っています。バイオテクノロジー分野などでは、次々に新しい知見が登場し、時には、それまで常識であるとか正しいとか思われていた内容がくつがえることも珍しくありません。このように動きの早い分野では、古くなった知識を伝授している番組の放映を中止して欲しいと願う人もいるというわけです。また、書籍に「改訂版」があるように、セミナー内容も微修正を重ねていくことが大切な場合もあり、一度撮影してしまえば終わりと言えないことも多いと考えています。

以上が、彼らの主張に対する私の見解ですが、私は、これら以外に、少なくとも、次のような点への配慮は必要だろうと考えています。

(1)学習「目的」を達成する「手段」としてウェブサイト・セミナーが適しているかどうか

コンテンツだけが普及すると、非常に多くの人が「わかったつもり」になって「満足」し、実際の対人演習などを通して学ぶことを止めてしまう傾向にあります。仮に、学習目的が「○○できる能力を身につけること」であれば、「認識知識が増えて満足すること」が「運用知識の増大、あるいは、知識の習得(身体化)に向かうモチベーションを損なう」ことにもなりかねません。こういった事態も避けたいため、セミナー・コンテンツの流出(違法コピーほか)には、充分な注意を払いたいと考えています。

(2)ウェブサイト・セミナーに適したコンテンツかどうか

テクニカル・スキル」(専門領域における知識・技術・経験を統合して得られる能力)の習得には、「知識の画一的な教授」が中心的役割を果たすeラーニングなどが適する場合も多いかもしれませんが、「ヒューマン・スキル」(適切なコミュニケーションの実践能力、良好な対人関係・協働関係の構築能力、目的あるいは組織に応じたリーダーシップの発揮能力、後継者育成能力ほか)の習得では、個人の理解力・解釈の仕方や、事前に予測できない相手との相互作用がもたらす結果などによって、習得レベルに大きな差が生じるため、「多様性や継続的学習の重要性を認める組織風土・企業文化」の下での「柔軟な個別対応」が求められることも多いと考えています。ウェブサイト・セミナーによって「ヒューマン・スキル」を学習する場合には、「双方向のコミュニケーションによって、学習にフィードバックをかける仕組み」を盛り込むことが重要ではないでしょうか。

(3)「守破離」の「守」止まりでいいのか

剣道、柔道、茶道、華道など、「○○道」と呼ばれる体系は、「家元制度」で学ぶことも多いようです。これは、「守破離」という学習段階で考えたときの「守」を体得するにはいいのですが、特定流派に属していると、その流派の家元と異なるアプローチをするとダメで、家元そっくりであることが良いことであると評されがちです。つまり、「○○道」を極め、より良いものにしていくため、「離」の段階に進むには、「他流試合」のように、他の流派の人々あるいは異分野の人々との「相互作用」によって新たな「仮説」(「破」)を獲得し、さまざまな「検証」過程を経る必要が生じてきます。ウェブサイト・セミナーの内容を丸暗記したら終わりとするのではなくて、このような側面にも考慮した上で、ウェブサイト・セミナーの活用方法について考えることが大切ではないでしょうか。

(4)プロフェッショナルではなく、スペシャリストとしての関わり方でいいのか

プロフェッショナル」(依頼や期待に応えることにコミットする人)と「スペシャリスト」(高度な専門知識とスキルを身につけている人)については、第40号で書いておりました。「講演を行う講師」とは異なり、「セミナーや研修の講師」としては、「結果に関しての責任」が生じるのではないかと考えており、「ウェブサイト・セミナー」というものがありうるのか?(…「ウェブサイト講演」ではないのか?)といったところで違和感を覚えています。(…テレビ会議形式でのセミナーや、Skypeを用いたコーチングのように、双方向のコミュニケーションであれば、こういった違和感は生じないのでしょうが。)

(5)バックエンド(back-end)につなげる、フロントエンド(front-end)でしかないのか

見込み客を集めるために用意される、低額あるいは無料の商品やサービスを「フロントエンド」と呼び、フロントエンドと関連性の高い、より高額の商品やサービスを「バックエンド」と呼ぶ場合があります。主に、消費者に、商品やサービスの良さを知ってもらうことで、バックエンドを購入する際の心理抵抗を小さくするのを手伝うために、企業は、フロントエンドを用います。対象とするコンテンツに依りますが、もし、フロントエンドとしての役割を期待する「ウェブサイト・セミナー」であれば、それ単体で利益を求めようとする姿勢は、お客様が利益を獲得するのを阻害することになるのではないでしょうか。また、もし、バックエンドとしての役割を持たせる「ウェブサイト・セミナー」であれば、「結果に関しての責任」など、これまでにご紹介してきた観点について、どのように考えているのか明らかにすることも大切なのかもしれません。

他にも考慮すべき視点があるかと思いますが、現時点では以上のようなことについてあれこれ考え、「少人数で双方向コミュニケーションが取れる形でなければ、バックエンドとしての有料コンテンツ配信は辞退したい」といった内容で、先方に返信差し上げました。
みなさんは、「ウェブ上でのセミナー依頼」「ポータルサイトでの、有料コンテンツ配信サービス活用の御提案」について、どのような考えをお持ちになったでしょうか?

 

さて今回は、

  • 有料のモノと無料のモノ
  • 良質なコンテンツを配信するウェブサイトの例
  • 著作者の権利の保護
  • 「セミナー」配信をする場合に考慮すべきだと思うこと

といった話を通して、「ウェブ上でのセミナー依頼」「ポータルサイトでの、有料コンテンツ配信サービス活用の御提案」をいただいたことをきっかけにして考えたことをお伝えしました。

 

あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか?

何か少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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