「Kindleでレポート作成をラクにする」ほか…私のソーシャル・ラーニング法(第169号)
最近、Facebook、Google+、YouTube、ブログ、各種Webinarなどといったソーシャル・メディアを活用した学習 […以降、「ソーシャル・ラーニング」(Social Learning) ] について尋ねられることも増えてきたので、今回は、現在私が実際に行っている範囲のソーシャル・ラーニングについて、いくつかご紹介しようと思います。
道具は「使い方」次第 & リスクをまったく取らずに新しいことはできない
例えば「包丁」という道具は、使い方によって、「人を傷つける凶器」にもなれば、「心温まる、楽しい食事体験を生み出す利器」にもなりえます。 当たり前のことかもしれませんが、各種ツール(道具)自体に対して、善悪や要不要などといった固定評価を与えることは不適切であり、「ツールをどういった目的で用いるか?」が大切なのではないかと、私は考えています。
Facebookの場合について考えると、「友人/知り合いの『リア充(じゅう)』なんてどうでもいい!」「友人/知り合いの楽しそうな近況/成功事例の共有が、自分の劣等感を刺激するので、見たくない」という意見を強く持つ人が一定の割合でいらっしゃることや、そういった思いが強いためにFacebookを使用しない人々がいるというのは自然なことだと思います。
ただ、その状況だけを取り上げて、「Facebookは有害/不要だ」などと盲目的に信じる必要はないのではないか?とも思っています。
コンプライアンス(※1)や生産性(…遊んでばかりで仕事しない人が増えることで生産性が下がるのではないか)などといった観点から、Facebookなどにアクセスできないような環境設定をしている組織があることは承知していますが、
自社の社員を信頼し、ソーシャル・ラーニングの活用によってもたらされる効果(…教える側と教えられる側といった役割が固定されずに相互学習・異分野交流が進む; 学習を当初の目的としていなかった情報をきっかけとして新たな発想が生まれる; ある程度の緊張感などが伴う公式学習と異なり、リラックスした状態での非公式学習のため柔軟な発想が可能となる etc.)の方を重視するという組織も存在するわけです。
※1 コンプライアンス(compliance)
公正・適切な企業活動を通じ、社会貢献を行うために、法令のみならず社内規程・マニュアルを遵守することや、倫理に則って活動すること。コンプライアンスを基礎に企業文化を改善し、不祥事の発生といったリスクを回避する、「コンプライアンス経営」に取り組む企業が増えています。
「虫食いがある材木は一本も使わない」と言っていたら木造の家が建てられなくなるかもしれませんし、「火事を起こす可能性があるから、火は一切使わない」と言っていたら、暖をとったり、料理をしたり、発電したり、モノづくりを行ったり….といったことも困難になるでしょう。 やはり、物事は一面だけから捉えて判断するのではなく、多角的に検討した上で適切な接し方をすることが大切ではないでしょうか?
「『この変化の速い時代に、一切のリスクを取らない』ことこそがリスクだ」という考え方を採用する人も少なくない中で、「リスク」(…「事象の変動に関する不確実性であり、リターンとトレードオフの関係にあるもの」という解釈をされることもある)について、個々人・各組織がどういった判断を下すのが良いのか、検討しておくことも大切だと考えています。 あなた(の所属組織)は、どのように考えることを選ぶのでしょうか?
One-Stop Information-Gathering ツールとしての Facebook
前段でご紹介したような考え方を基に、私の場合には、「恩恵/利益 > リスク」と判断し、「会社からの情報発信ツール」としてだけでなく、「個人としての情報収集ツール」などとして、Facebookを活用しています。
私は、ニューズフィード(※2)に表示される記事について設定し、「それほど親しくない友人/知り合いが、どこへ行って何を食べた」といった種類の情報にあまり目を通さなくて済むようにしています。
※2
写真1:「ニューズフィード」欄とは?…写真の右側部分のことです
一方、積極的に情報収集しようとしているのは、さまざまな企業や団体のFacebookページ(…「個人ページ」と「Facebookページ」は、機能や使い方が異なります)から発信される情報です。
特定の企業や団体などが好きであっても、そのFacebookページで発信される情報の内容が薄かったり、更新頻度が極端に少なく、更新されても年に数度の告知のみといった状態であったりする場合には、「いいね!」ボタンを押してフォローすることはありません。
大規模調査のレポートをシェアしてくれるページだったり、独自の見解を発信してくれるページだったりすると、「いいね!」ボタンを押してフォローすることが多いかもしれません。
私が「個人ページ」で「いいね!」を押して情報をチェックしているのは、例えば、写真2に示したようなページから流れてくるニューズフィードです。
新聞購読をせず、テレビのニュース番組をほとんど見ない私にとって、Facebookは、「One-Stop Information-Gathering」ツール(…「one-stop」とは「一度立ち寄るだけで」、「information-gathering」とは「情報収集」という意味の英語)であり、
「さまざまな情報源を個別にチェックして回るのではなく、ここに一度立ち寄るだけで、一般的なニュースのみならず専門分野の最新情報などについてもチェックできるプラットフォーム」という役割を担っています。
写真2:高野が普段からチェックしているページの一部(例)
こういった利便性などについて配慮することで、「実名登録」「自分の好みなどの公開/漏洩」といったリスクは許容範囲であると捉え、むしろFacebookのようなツールは、今後も積極的に活用していきたいものだと考えています。
朝の研究会では、Kindleが大活躍です。
以前実施していた「夜の勉強会」では、「700ページを超える、大きくて重い英語テキストを持ち歩く」といった種類の苦労がありました。 しかし、現在も実施している「変化促進研究会」(朝の研究会)では、私はテキストを「Kindle(キンドル)」(Amazon.comが製造・販売する電子書籍リーダー端末、同ソフトウェアおよび電子書籍関連サービス)で読むことにしたお蔭で、いろいろとラクをさせてもらっています。
(…「変化促進研究会」でのテキストをハードカバー版/ペーパーバック版で読むか、Kindle版で読むかは、参加者個人の好みで選べます。)
①持ち運びが便利…1キログラムを超えるような、大きくて重い本を持ち歩かずに済むようになりました。私が使っているKindle Paperwhiteは213グラムで、購入した書籍のみならず、自作のPDFファイルなども持ち運べます。
②電子辞書が不要…以前は、テキストと一緒に、専用の電子辞書を持ち歩いていました。しかしKindleでは、写真3で示したような形で、辞書機能を用いることが可能なため、電子辞書を持ち歩かずに済むようになりました。
③学習履歴が残せる…選択したテキストについて、「Add Note」でメモを残すことや、「Highlight」でマーカーを引いたように強調することが可能です。(写真4を参照)
④Highlight箇所のテキスト・データが使用可能…Kindleの個人ページに行くと、Highlightした箇所のテキストが抜き書きされているので、これをコピー&ペーストすることで、自分が担当を務める回の、研究会用配布資料の作成が格段に容易になりました。…写真5のような資料を作成する際に、ほとんど、英文の手動入力をしなくて済むようになりました。
⑤Facebookと連動させることで、グループ学習も可能…Facebookには「グループ」(公開のものと非公開のもの)作成機能があります。Kindleに自分のFacebookアカウントを連動させておけば、写真4の画面で「Share」を選び、写真6の画面に進み、Facebook上に作成した学習仲間向けに「研究会使用テキストの特定箇所の文章+自分のコメント」を共有することもできます。
写真3:Kindleの辞書機能
(…英英辞典など複数の辞書を使用可能です)
写真4:学習履歴を残す
写真5:Highlight機能を用いて作成した研究会用配布資料の例
写真6:Share機能を用いてグループに投稿
前段では、Facebookを用いた情報収集についてご紹介していましたが、ここでは、Kindleを用いて情報発信(レポート作成)を容易にしたり、情報共有(グループ学習)を容易にしたりする方法をご紹介しました。 さまざまなツールが増える今日、本当にいろいろなソーシャル・ラーニングが始まっていることと思います。
あなたはどういったソーシャル・ラーニングを実施されているでしょうか?
さて今回は、「ソーシャル・ラーニングについて尋ねられることが増えてきた」という話から、現在私が実際に行っているソーシャル・ラーニングについて、いくつか紹介して参りました。
すでにご存じの内容もあったでしょうし、個人では取り入れていても組織ではこれからだという方もいらっしゃったかもしれませんね。
あなたは、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか? 是非、仕事で関係していらっしゃるみなさんと話し合ってみてくださいね!
ちなみに、今回の話に何度か登場していた『変化促進研究会』は、2015年1月7日スタートの第10期参加者を募集中です。第10期では、『The Moment of Clarity: Using the Human Sciences to Solve Your Toughest Business Problems』というテキストを取り上げます。(目次など詳細は、変化促進研究会のページで確認していただけます。)興味をお持ちの方は、是非、詳細ページをご確認くださいませ!
以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。 それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪
P.S.
高野個人のFacebookでは、「ダンバー数」[ Dunbar’s Number: 人間にとって、平均約150人(100-230人)が「それぞれと安定した関係を維持でき、組織の運営にも好影響をもたらす個体数の認知的上限だとする仮説」のこと ] を意識しようと思っています。
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