人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「課題設定」≠「目標設定」; 「飛んで火に入る夏の虫」!?(第155号)

follow us in feedly

Send to Kindle

こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

前回お送りした第154号: 「事業戦略」と「リベラル・アーツ」では、「課題設定能力 ≒ 事業戦略策定能力 ?」といった見解もご紹介しており、

前々回お送りした第153号:「課題設定」とは?…対人演習の「振り返り」事例を通してご紹介では、下記に再掲した図表1と図表2の内容を通して、「課題設定の重要性」についてお伝えしていました。

「対症療法の繰り返し」で事態を悪化させないためには「問題設定」が重要

図表1:「対症療法の繰り返し」で事態を悪化
させないためには「問題設定」が重要

[ 出典:第143号 図表1を再掲 ]

  • 問題(Problem)
    「あるべき姿(必然性・信頼性を満たす望ましい状況)」と「現状」のギャップ(既に発生している望ましくない状況)
    …構造(問題症状どうしの関係や根本原因、前提など)を見極めることが重要
    例:「大きな岩が道をふさいで先に進めない」という状況
  • 課題(Issue/Task )
    「ありたい姿(有効性・可能性・効果性が期待できる望ましい状況)」と「現状」のギャップ(これから主体的に取り組む事柄)
    …自分(たち)で意識して設定するもの;問題解決のために何に取り組むか、設定するもの
    例:「岩をどけること」「岩を破壊すること」「手前に穴を掘って岩を落とすこと」「岩を乗り越えて進むこと」「岩を迂回する(別の道を進む)こと」「(棒高跳びなどで)岩を飛び越すこと」など

用語解説3: 問題と課題
(…「舵取りコミットメント(個人篇)」セミナー資料より一部転載)
[ 出典: 第153号 用語解説3を再掲 ]

これらの話で、「問題(症状の)発見」と「問題設定」と「課題設定」の違いについて、ご理解いただける方が増えてきているようなのですが、それとは別に、「目標設定」と「課題設定」の違いについて混乱されている方がいらっしゃることに氣づいたため、今回は、この辺りについて補足説明を差し上げようと思います。

 

「解釈」の仕方(診断内容)で、
「問いの立て方」が変わり、「課題」が変わる

図表1、図表2でお伝えしていた通り、「個々の問題症状を発見すること」と「個々の問題症状の解消を目指すこと」(対症療法)、「本質的な問題解決」は異なります。 そして、「対象とする物事を、どんな切り口(フレーム)から、どのように解釈(診断)するか」によって、「考えるべき事柄や取り組む課題が大きく変わってくる」ことについてご理解いただけたのではないかと思っています。

この辺りの話は、目的達成・問題解決能力の向上などにとって非常に重要で、弊社「フレームワーク質問力®」の基礎を成す部分ですので、今号ではもう1つ、別の例をご紹介しておこうと思います。

みなさんは、「飛んで火に入る夏の虫」(自ら進んで禍に身を投ずることのたとえ)という言葉をご存じだと思いますし、実際に、炎や街灯の明かりに向かって飛んで行く虫をご覧になったこともあると思います。 そういった場面で「なぜこれらの虫は自殺しようとするのだろう?」といった疑問をお持ちになった方もあるかもしれませんね。

第22回『教養醸成の会』で扱ったテキストでは、この話について書かれた箇所があり、私が参加者のみなさんにシェアしたレポート(…弊社Facebookページにて、3月29日~5月2日の間、無料ダウンロード可能; 3月28日までは、『小説 上杉鷹山童門冬二 (著)を扱った回のレポートを公開中)では、テキストから下記の箇所も引用していました。

このところますます多くの生物学者が、宗教はほかの何かの副産物であるとみなすようになっている[省略] 私たちは自分の立てた問いを適切なものに書き直さない限り、理に適った答を探そうと試みることさえできない、ということだ。 実は、この行動は自殺ではない。 一見自殺に見える行動が、ほかの何かの行動の不本意な副作用ないし副産物として現れる、ということがあるのだ。 [省略] 私たちはロウソクのまわりを巡って突入するガだけを見て、「なぜこれらのガはみんな自殺するのだろう?」というまちがった問いを発する。 そうではなく、なぜ彼らは、光線に対して固定した角度を維持することで進路を決めるような神経系を持っているのかと問うべきなのである。 まちがいを犯したときにしか、私たちは法則の存在に氣づかないのである。 このように問いを言い換えると、謎は消え失せてしまう。 そもそも、それを自殺と呼んだのがまちがいだったのだ。 それは、ふだんは役に立つコンパスが「誤作動」した副産物なのである。 [省略]「問いは適切に設定されねばならず、必要があれば書き直さなければならない」という一般的な原理のほうにはるかにこだわりがある。

[ 出典:『神は妄想である』リチャード・ドーキンス(著) ]

いかがでしょうか? 改めて、「問題(症状の)発見、問題設定(物事の解釈・診断)、課題設定、問題解決」の違いについて、そして、「『解釈』の仕方(診断内容)で『問いの立て方』が変わり、『課題』が変わる」という話について理解を深めていただけたでしょうか?

こういった理解を基盤にして体系化したのが、「フレームワーク質問力®」(図表3)です。

「フレームワーク質問力®」の全体

図表3:「フレームワーク質問力®」の全体像

 

目標設定の方法…SMARTの例

前段では、「課題設定」について改めて解説を差し上げたので、今度は「目標設定」についてお伝えしようと思います。

目標設定の方法には、さまざま方法がありますが、ここではその一例として、目標設定を行う際に重要な5つの要素の頭文字をとった「SMART」という目標設定方法についてご紹介します。

Specific(具体的な)
第三者であっても誤解なく理解できるよう、明確に表現されている。

● Measurable(測定可能な)
測定可能なものは、改善できる/達成できる」といった前提の下、目標達成状況が第三者にも判断できるよう、定量化されている。

●  Action-oriented(行動指向の)/Agreed upon(同意している)
目標達成までに必要/有効なプロセス・行動が明確になっており、その行動を取ることに同意している。
※「A」について「Achievable(達成可能な)」と解釈される場合もありますが、それでは、「やってみないとわからない新しいこと」に取り組むことができず、イノベーションが期待できないのではないかと、弊社では考えています。

●  Realistic(現実的な)/Related(事業戦略や価値観などに関連・合致した)
利用可能なリソース(予算、時間、人員、スキル、材料や施設など)が目標達成に充分なだけ入手可能である。 経営・事業戦略の達成などにとって重要な意味を持つ目標である。
※「R」について「Result-oriented(成果に基づいている)」と解釈される場合がありますが、それでは、前例のないこと・従来施策の延長線上から外れた新しいことに取り組むことができず、イノベーションが期待できないのではないかと、弊社では考えています。

●  Timely(時宜にかなった)/Time-bound(時間制約がある)
大局を見極めた上で適切なタイミングであり、目標達成期限が設定されている

図表4:SMARTな目標設定法

SMARTを<満たさない>目標設定の例

•    売り上げ増で、(現状は業界30位だけど)業界シェアNo.1を目指すよう努力する。
•    秋頃までを目途に、お得意様訪問件数を増やし、顧客満足度の改善を図る。
など

SMARTを<満たす>目標設定の例

•    2014年9月30日24時の時点で、A事業における売上高を8000万円とする。(これを可能にするため、Bチームは6月13日までにすべての既存取引先向けにプランBを実施する。並行して、Cチームは新規取引先開拓に向けた新プランDを開発する。6月16日には、B・Cチームの合同ミーティングを開催し、Bチームから売上高の進捗状況報告・取引先から収集した情報の共有と、CチームからプランDについての説明を行う。その内容を踏まえ、翌6月17日からは、B・C合同チームでプランDの実施に当たり、7月4日には中間報告会を開き、改めてその後の活動方針を定める。)
など

業種・業態・組織・部門・部署・個人などによっても、目標設定の表現はずいぶん異なるものですが、ここでは、目標設定の「明確さ」についてのイメージ(具体的な判断や行動に直結する明確さ)を共有できればと思います。

ここまでの話を踏まえると、「課題設定」と「目標設定」の違いについて理解していただけるのではないでしょうか? フレームワーク質問力®の流れを示した図表3で言えば、「問題設定」は「1」「課題設定」は「4」の段階で行うものあり、「目標設定」は「5」の段階で行うものであるということです。

さて今回は、前号・前々号の内容(「問題(症状の)発見」と「問題設定」と「課題設定」の違い)を踏まえて、「目標設定」と「課題設定」の違いについて解説をしてまいりました。

みなさんは、「問題発見」「問題設定」「課題設定」「目標設定」などの違いについて、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか? 

弊社では、今回の内容をしっかり身につけるため、下記のプログラムもご用意しておりますので、関心をお持ちの方は是非ご活用ください。

「自ら適切な課題を設定する能力」「自らを制約から解放し、境界を超えていく能力」を高めるのに有効な
4月26日(土)スタート
合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」
「課題設定」×「図解」×「クリティカル・シンキングが特長です。

また、「いきなり『コーチング学習プログラム』に申し込むにはちょっと勇氣がいるなぁ」という方向けにも、

 『率直な対話で、協働を進める人』になる!
 『チームの学習・適応・相乗効果』を促進する!
 『複眼思考』で『関係者の納得解』を導き出す!
4月22日(火)、23日(水)ほか
「フレームワーク質問力®」セミナー

をご用意しておりますので、是非ご活用ください♪
以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

P.S.
4月11日(金)朝スタート
リーダー、コーチ、コンサルタント向け「変化促進研究会」では、

"Spy the Lie: Former CIA Officers Teach You How to Detect Deception"
"Conversational Intelligence: How Great Leaders Build Trust and Get Extraordinary Results"

の2冊をテキストに用います。
詳細確認・お申し込みはこちらからご覧いただけます。

今回のブログ記事で、少しでも「いいね!」と思えた箇所があったようであれば、
応援クリック」をお願いいたします。

お読みくださったあなたの応援が、次の記事を作成する意欲となります!

Send to Kindle

follow us in feedly