人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「交通」と「日常業務におけるコミュニケーション」の類似点は?(第198号)

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私は「物分かりが悪い」(※1)だけでなく、コンサルタントやコーチ、講師の仕事をさせていただいているにもかかわらず、放っておくと、本も読んだりしない「意志が弱い」ヤツだと自分のことを認識しています。

そこで、「毎月1冊くらいは、日本語書籍から学ぶ機会」として「教養醸成の会」(1月は「砂の女」、2月は、「バイオテクノロジーの教科書(上)」;現在、第53回レポートをウェブサイトで公開中)という場を設け、「2ヶ月に1冊くらいは、英語書籍から学ぶ機会」として「変化促進研究会」(2月1日開始の次期は、「Emotional Agility: Get Unstuck, Embrace Change, and Thrive in Work and Life」)という場を設けることで、書籍に親しむ「仕組み」としています。

こういった仕組みを設けているのは、目先の仕事に直結する「情報」をその都度「消費」する読書ばかりでは、「ひ弱」になってしまうと考えているためです。 農作物を育てるプロセスにたとえるなら、これらの仕組みは「土づくり」に相当するようなものかもしれません。

「異なる分野の話は、自分が携わっている分野の話と関係がない」と考えて、「同一分野の知識や技術 ”ばかり” を効率よく学ぶ」人も多いようですので、今回は、12月11日の「教養醸成の会」で扱った、トム・ヴァンダービルト(著)の「となりの車線はなぜスイスイ進むのか?」の内容をところどころ引用しながら、「『異分野から学ぶ』って、どんな感じのこと?」という話の一端をご紹介したいと思います。

※1 2016年8月6日のFacebookページ記事:「『物分かりが悪い』は、『コーチとしての強み』です!」をご参照ください。

 

「運転は、そこそこ上手いんじゃないかな」と思っていませんか?

先日、Facebookのいくつかの公開グループに、次のような投稿をしていました。

「評価」減→「フィードバック」増:自律型人財と組織の開発へ

「人事評価制度の廃止」のような話を耳にするものの、代わりに「頻繁な対話機会を設ける」と言っても、「具体的に、何を意識してどう話すと良いのかわからない」「どんな準備をすればよいのかわからない」といった状況の方も多いのではないでしょうか。

「定期面談時のフィードバック」(FIND法)や「日常業務における、迅速なフィードバック法」について関心をお持ちの方は、下記シェア記事をご覧になってみてください。
「評価」減→「フィードバック」増:自律型人財と組織の開発へ

「異分野から学ぶ」といっても、話の内容があちこちに飛ぶと混乱しがちかもしれませんので、今回は、上記の「フィードバック」(※2)に近い内容だけに絞って、書籍「となりの車線はなぜスイスイ進むのか?」から引用しつつ、見ていこうと思います。 (「相互啓発を通して学んだ事柄」や「全体を通しての学び」などに関しては、後日公開の「学習レポート」をご覧ください。 以下、[p.○○]とあるのは、上記書籍のページ数です。)

※2 フィードバック(Feedback)
広義には「着目しているシステム(※3)からのアウトプットを見て、それを正すようにシステムの制御を行うこと」をフィードバックと呼びます。 コーチングなどの分野で用いられる狭義では、「評価や判断は行わず、相手あるいは第三者が(主に視覚・聴覚・身体感覚を用いて)観察・確認できる情報を、相手に伝えること」を指します。 コーチングなどの場面で「リスクが高い」とされる表現としては、「○○の話をしているときは喜んでいた(←観察者の『評価』(相手が"喜んでいる"と解釈した)が含まれているため)」のような例があり、推奨される例としては、「○○の話をしているときに、右頬が少し上がっていたけれど、あのときには何を考えたり、感じたりしていたのですか?」のような例があります。

※3 システム(System)
ここでは、「さまざまな要素が互いに作用し合いながらも、全体として挙動をする1つのまとまり」といった意味で用いています。

まずは、「運転ぶり」についての話をご覧ください。

すでに述べたとおり、運転の性格上、他人の好ましくない運転は山ほど見る一方で、自分の行動についてはなかなか自覚しにくい運転ぶりを自己評価させると、実際の運転歴の如何にかかわらず、ひどく自己肯定的な結果になることは驚くに値しない。[p.92-93]

この自信過剰効果は、シートベルトから携帯電話の制限に至るまでの、新しい交通安全手段に対する抵抗をも説明している。たとえば、ある世論調査では、大半のドライバーが運転中の携帯メールを禁止すべきと返答しながら、自分もやることがあるとも回答している。一般的なリスクを過大に、自分に対するリスクを過小に、評価しているのだ。管理されるべきなのは他の誰かの行動であり、自分の行動ではない [p.94]

「英文法に通じていない人が自分の文法の正しさを的確に評価できないように」、交通法規や追尾走行の危険を知らない人は、自分の相対的リスクや運転技術について適切な評価ができないのかもしれない。たとえばある調査で証されていることだが、運転試験が不振だった人や、交通事故に巻き込まれた人は、単純な反射神経テストにおいて、統計的に「より優れている(すなわちより安全に運転できる)」人ほど、正確に自己評価できなかった。そして先述のとおり、人の運転の自己評価は、あまり正確ではないようだ。[p.94-95]

そして慣れがつのるにつれて、悪い自信をつけ、車間距離などもっと短くて大丈夫だ、カーブもあまり減速しなくても曲がれる、と考えるようになる。こうして、自信過剰が募ると、運転は思ったより難しいということを忘れてしまう。[p.110]

交通事故の最大の原因は、二つある。一つ目は、人間の知覚・認識能力だ。それは驚異的ではあるが、人間は必ずしも見たものを正しく解釈していない。それ以上に、それを自覚しているとは限らない。二番目は、私たちは運転ロボットではないということだ人間は、警戒レベルを一定水準に保っておけないのだ。慣れて自信がつくと、人間の行動は変わるよそ見をしたり、携帯電話で話し始めたりするのだ。次章で示すように、問題はおおむね、知覚能力の限界に起因している[p.113]

いかがでしょう? 話自体は、「運転ぶり」や「運転技術」に関する内容ですが、「他者の言動や態度は山ほど見聞きするけれど、自分の言動や態度に関しては、他者があれこれ言ってくれない」あるいは「これまでのコミュニケーション方法で、大問題を引き起こしたことはないために、『自分のやり方に過剰な自信を持ってしまっている』ことに氣づいていない」など、実は、「日常業務におけるコミュニケーション」などの異分野にも通じる内容ではないでしょうか。

仕事に対するフィードバックが無いのは、ピンの見えないレーンでボウリングをやるようなものだ。 結果を把握しないで仕事をしていると2つのことが起こる。 ひとつは上達しないということで、もうひとつは、どうでもよくなるということだ。 -- Steve Kerr

「自分の意識や行動を、より望ましいものに変更する」という「自己修正」を促すためには、「自分自身の思考・感情・言動を、なるべく客観的に把握・認識する」(=メタ認知能力を発揮する)ことが、とても大切です。 そして、「自己修正がうまい人」「成長スピードが速い人」は、「『他者からのフィードバックやコメント』を積極的に得ようと努める」傾向が強いことが知られています。

… 同じ「オーナー社長」「過去に大きな成功体験を持つ方」であっても、「周囲にイエスマンしか置かない人」もいらっしゃれば、「『過剰な自信』で『視野が狭く』ならないよう、『本業における利害関係が発生しない、社外コーチ』を雇われる方」もいらっしゃいます。

このように、最初に取り上げた引用箇所は、「『メタ認知』といった切り口から、『フィードバック』に関係の深い内容ではないか?」と私は解釈したのですが、あなたはどのように捉えられたでしょうか?

 

「渋滞」を減らすには、「車線を増やす」のではなく、「事故を減らす」のが大切!

次は、「渋滞」についての話をご覧ください。

スマートな高速道路は、スマートなドライバーも必要とする。悲しい事実だが、交通問題の大半は、ドライバーの行動にある加速が遅すぎたり、減速が急すぎたり、あるいはその反対だったりなどだ。車間距離も詰めすぎているから、こうした影響はどんどん増幅されていく。交通は「非線形性」のシステムである。ごく単純に言えば、入力から出力が容易に予測できないシステムなのだ。長い隊列状で走っているクルマの先頭が停止したとき、後ろのそれぞれの車がどれくらい速く、あるいはどれくらい後ろで、停車するかは正確には予測できない(仮に彼らが停まるとしてだが)。後ろに行けばいくほど、その予測は難しくなる[p.199-200]

問題は、誰もが自分のために最善と思う行動を取ることによって、結局、すべての人の通行時間が増えてしまうことである。渋滞解消のために新設された横断橋は、事態をより悪くしてしまうのだ。その理由は、コンピューター科学者ティム・ローガーデンが「利己的なルート取り」と呼ぶもののせいである。ネットワークを通ろうとする方法は自分にとって最善(「ユーザー・オプティマ」)かもしれないが、交通網全体にとって最善(「システム・オプティマル」)ではないのだ。 このことは、交通渋滞問題の核心に迫っている。私たちは非協力的なネットワーク上を走る「利己的な通勤者」なのである。出勤のために逆転するときには、通常、みんなにとっての最善となるようにどんなルートがあるか、またどんな時間にどこを通るかは考えない。同じルートを通って、他にあまり多くの人が同じことを考えていなければよいがと願うのがせいぜいだ。[p.247]

もう一つの問題は、大半の交通渋滞は、交通技術者が言う「非反復的渋滞」であることだ。つまり、普段は順調に流れている高速道路が、道路工事や天氣、さらに多くの場合は事故によって渋滞するのである。ここでは、渋滞を避けるために最もいい方法は、車線を追加することではなく、事故を減らすことである。そしてそれは、第3章で述べたとおり、ドライバーがもっと氣をつけて運転すれば、実現できることだ。[p.254]

今度の内容に関しては、どんな切り口が氣になったでしょうか? 私は、「『交通システム』という『非線形システム』が、(組織の内外を問わず)『目的達成や問題解決などのためになされるコミュニケーション』と似ている」と解釈しました。

例えば、『個々のユーザーのための最適化』と『交通全体のための最適化』をどうすり合わせればよいか?」という話は、「個人の価値観と組織の方向性のすり合わせ」「ワーク・ライフ・インテグレーション」(Work-Life Integration:職業生活と個人生活の統合)の話によく似ていませんか? (別途、「日常業務におけるコミュニケーション」で、「交通事故を減らす」ことに対応する取り組みにはどんなものがあるか?などと検討してみるのも面白いかもしれません。)

今回取り上げている「フィードバック」の切り口から表現し直せば、例えば、「単一視点だけからのフィードバックは危うい」「望ましい状況・状態を実現するには、『複数の視点からのフィードバック』を基に、システム思考(※4)を意識して、『取り組み課題を選ぶ』のが大切」などとなるでしょう。

「取り組み課題を選ぶ」というのは、システム思考でいうところのレバレッジ・ポイントの選定」という話であり、上述の例でいえば、「『渋滞』を減らすには、『車線を増やす』のではなく、『事故を減らす』のが大切」だと見極め、「適切な課題を設定する」(※5)ということです。

あなたは「渋滞」の話、どのように捉えられたでしょうか?

※4 ここで言っている「システム思考」とは、「さまざまな要素の複雑なつながりを『システム』として捉え、構造の全体像を俯瞰し、その複雑な挙動を理解して、システムそのものの改善を図るものの見方」を指しています。 [ 出所:ジョン・D・スターマン(著)「システム思考」東洋経済新報社 ]

※5 「"適切な"課題設定」入門
~「視点変更」と「納得」を重視した「協創対話」アプローチに基づいて~

既に「適切な課題設定について、学びたい、身につけたい!」と思われていらっしゃる方は、本セミナーを飛ばして、最初から「協創対話」や「協創対話の基礎」を成す「フレームワーク質問力®」に参加いただいて大丈夫です。

…1月14日(土)スタートの「協創対話のモジュール2」前に開催される「モジュール1」(フレームワーク質問力®)は、12月23日(祝・金)~12月24日(土)が最後です。 早い時期に「モジュール2」以降の参加を希望されている方は、こちらの日程にご参加ください。

 

同じ情報源に触れ、対話を通して、差異を許容する姿勢や思考の柔軟性を身につける

「『交通』について書かれた内容を、自分が関心を持っている『日常業務におけるコミュニケーション』の視点に立って読み、『フィードバック』についての自分なりの学びを深める」という形で、「異分野から学ぶ」プロセスの一端をお伝えできればと書いてきたつもりなのですが、ここまでご覧いただいて、いかがでしょうか?

「教養醸成の会」「変化促進研究会」では、ここまでご紹介してきたような感じで、「現在の自分なりにテキストを解釈」してきた参加者が集まって、あれこれ「対話」(※6)することを通して、さらに「異なる視点から学ぶ」「コミュニケーション能力を高める」「新たな考えを生み出す」「日常生活における意識や言動を望ましいものに変える」「差異を許容する姿勢や思考の柔軟性を身につける」といった成果が生じることを企図しています。

※6 日常業務では、一方的な「伝達」だけできれば充分ですか? 自分が想定した「落としどころ」に一方的に「誘導」できれば良いのですか? あるいは、ディベートで特定の立場や手段を守れれば充分ですか? それとも、「対話」の重要性が増してきていますか? … etc. もし、お客様の『要望・期待』や、上司の『指示・命令』の背景にある『目的・意図』を踏まえたコミュニケーションの実践に関心をお持ちでしたら、下記Facebookページ記事もご覧になってみてください。
「ディベート」(A or B) と「ダイアローグ」(A+B C)

今回取り上げた「フィードバック」や「適切な課題設定」ほかに関しては、年末年始にも学ぶ機会をご用意しています。 興味を持っていても、普段は忙しくて、セミナーなどに参加できないという方は、是非、ご活用ください♪


●合同会社5W1H流コーチング学習プログラム
~適切な課題設定と視点変更を重視する「協創対話」を学ぶ~

まずは、モジュール1『フレームワーク質問力®』の内容や質、雰囲氣を確かめてから、モジュール2に進むことが可能です。

●12月23日(祝・金)~12月24日(土)
フレームワーク質問力®
…1月14日(土)開始の「モジュール2」前に開催される「モジュール1」は、この日程が最後です。「モジュール2」以降の参加を検討されている方は、こちらの日程にご参加ください。

●12月29日(木)
アイデンティティ・アップデート
~環境適応するように自己認識が変わると、態度・言動・関係・結果も自然に変わる~

●1月9日(祝・月)
【目標設定セミナー】舵取りコミットメント
~日常の好ましい意思決定の積み重ねで、自分を望ましい航路に導く~

●1月11日(水)
「評価」減「フィードバック」増の人財育成
~「評価」しない「フィードバック+質問」による自律型人財・組織開発の方法とは?~

●1月17日(火)
「"適切な"課題設定」入門
~「視点変更」と「納得」を重視した「協創対話」アプローチに基づいて~


今回ご紹介したのは、あくまでも、「『異分野から学ぶ』って、どんな感じのこと?」という話の一端でしかありませんが、少しイメージを膨らませるのにお役立ていただけたでしょうか? 

現状、あなたはどういった形で「異分野から学ぶ」ことを実践されているでしょう? 「異分野から学ぶ」ことに関して、どのように感じ、どんなことをお考えになったでしょうか? 周囲の方々とお話になってみてくださいね。

それでは、次回のニューズレターでまたお会いしましょう♪

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