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人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

プロフェッショナル、スペシャリスト、エキスパート の違いとは?(第179号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。 

今回は次期『合同会社5W1H流コーチング学習プログラム』の申し込み締め切りが近付いてきたというタイミングということもあり、お問い合わせいただいた『精聴』『協創対話』について採り上げ、少し解説してみようと思います。

 

『傾聴』と『精聴』の違いを図解で比較

一般的なコーチングで教えられて、推奨されている話の聴き方としては、『傾聴』(Active Listening)が有名です。弊社では、カウンセリングやセラピーから発展してきていて、その流れを色濃く残しているコーチングの場面に限っては、傾聴の有用性を認めています。

しかし、「考え方や価値観の異なる人々が集まり、相乗効果を発揮して創造的な解決策を生み出すことが求められるビジネスの場面」では、傾聴だけでは不十分だと考え、代わりに、『精聴』(Precise Listening)を推奨しています。

では、お問い合わせいただいた『傾聴』と『精聴』の違いについて、事例を通して具体的に見て行くことにしましょう。

例えば、NHKで放映されている『プロフェッショナル』という番組の事を採り上げてみましょう。この番組では、毎回各分野におけるプロフェッショナルを取材し、番組の終わりの方で、その人物に「あなたにとって、プロフェッショナルとは?」といった質問を投げかけ、取材された側の人が、その人なりの考えを述べるといった形式が採られています。

番組をご覧になった事がある方はおわかりになると思いますが、毎回、『プロフェッショナル』の定義は様々で、1つとして同じものはありません

普段私たちは、「1つの言葉には、ただ1通りの意味が定められている」と考えがちですが、この『プロフェッショナル』という番組の例でも明らかなように、『人ごとに異なる辞書を持っている』と考えた方が適切な場合が多いのが現実です。

仮に私が、Aさんを相手にAさんの考える『プロフェッショナル』について、『傾聴』を試みたとしましょう。すると、Aさんから得られる回答は、図表1のようになる可能性があります。

  • 自分の考えや行動を説明できる人...?
  • 専門性を活かして生計を立てている人...?
  • 実力と知名度が求められる世界で生きている人...?
など

図表1:『傾聴』版の『プロフェッショナル』とは...

このように、『傾聴』とは、自分の考えを明らかにしたり、発言者と自分の考えをすり合わせたりはせず、『発言者の話を、ただ単に、そのまま受け止めながら聴くこと』を指しています。

すなわち、『傾聴』は、「普段、命令や指示をする事には慣れているけれども、他者の話を聞く事に慣れていない人」、あるいは、「自分(たち)に都合のよい事しか受け入れようとしない態度の人」が学ぶのにはとても有用な聴き方ですが、より建設的な話、創造的な話にまで発展させていくには、充分とは言えない聴き方だと思われます。

続けて、今度は、実際に私が、Aさんを相手にAさんの考える『プロフェッショナル』について、『精聴』を試みた場合について見てみましょう。

最初は、『傾聴』と同じく、Aさんの考える『プロフェッショナル』について丁寧に確認していきます。その上で、例えば、図表2のような質問を相手に投げかけ、やりとりを繰り返しながら、話の内容を協力して整理していきます。

  • 『プロフェッショナル』と『スペシャリスト』は、どんな点がどう違うのですか?
  • 『エキスパート』との違いについては、どのような考えをお持ちですか?
  • 高い専門性を持っている人は、みんな『プロフェッショナル』ですか?

など

図表2:『協創対話』を促す質問の事例

図表2で採り上げたような質問によって、『プロフェッショナル』について、1人では思いつかなかった様々な視点から考える事を促します。そのAさんとの話の結果を取りまとめたのが、図表3と図表4です。

『精聴』版の『プロフェッショナル』とは...(1)類似概念との比較

図表3:『精聴』版の『プロフェッショナル』とは...(1)
類似概念との比較

 

『精聴』版の『プロフェッショナル』とは...(2)構成要

図表4:『精聴』版の『プロフェッショナル』とは...(2)
構成要素

図表3からは、依頼や期待に応える事にコミットする『プロフェッショナル』と、高度な専門性を身に付けている『スペシャリスト』などを区別する事が出来ています。また、図表4で示したように、Aさんが考える『プロフェッショナル』の主要構成要素として、3つの項目(専門性、マインドセット、自己管理能力)が、明らかになりました。

『プロフェッショナル』についての理解が図表1までのレベルで留まるのと異なり、図表3・4のレベルまで内容が明解になると、例えば、停電が頻発する地域にも関わらず、「良い品だから」と、インフラ設備の異なる日本で売れている最新型の電子機器を、日本と同じようにして売ろうとするのはスペシャリストかもしれませんが、『プロフェッショナル』とは言い難いことが判断できるようになります。

音声だけに頼る「電話コーチング」では、こういった情報の整理の仕方や記憶の負担の軽減が困難です。『図解』することによって、様々な情報の『一覧性』が得られ、『要素間の繋がり』も整理しやすくなります。

また、図表3・4のような図解を作成することによって、『他者との情報共有・保存・アップデート』なども容易になります。

『傾聴』を推奨するコーチングと、『精聴』を推奨するコーチングの違いについて、感じ取っていただけたでしょうか?

●精聴 (Precise Listening)
相手の感情の解放や相手との関係性などを重視して、ただひたすら聴く「傾聴」とは異なり、特定の目的達成や問題解決、意思決定などといった変化につなげるため、話の構造や相手の情報処理プロセスを意識しながら聴き、必要に応じてコンテクストなどについても、こちらから丁寧に確認を重ねたりする精密な聴き方を、弊社では、「精聴」と表現しています。

 

自分たちで足場を固めて道を切り拓いていく『協創対話』

今度は、『協創対話』について見て行きましょう。

●協創対話(Co-Creative Dialogue)
関係者との間で、「真実」「解決策」「新たな可能性」を探求するための、関係者との粘り強い対話。

前段の解説では、『プロフェショナル』という言葉・概念についてAさんと私の2人による対話を通して意味を定義していきました。

文脈などに依らず1つの言葉・概念が常に同じ意味を表すのであれば、自動翻訳の技術は今よりもっと進化していることでしょう。しかし、現実の私たちは、「同じ言葉を用いていながらも、違う内容をイメージしながらコミュニケーションを行っている」ことが思いのほか多いのです。

そのため、前段でお示ししたような『精聴』に基づく『協創対話』が求められるのです。
確かに、大変かもしれないと思われる氣持ちはわかります。しかし、1回定義を決めてしまえば、その後、関係者の間で方針がブレること、判断に迷うことや議論の蒸し返しがなくなるのです。また、協創対話のような『深い対話』ができるような実力を一端身に付けてしまえば『日常生活における短時間の会話であっても、核心を突いた話が行える』確率が高まるようになるのです。

改めて前段の話を振り返って考えてみてみましょう。

日本では『コーチ』というと『スポーツ分野のコーチ』をイメージして、『ティーチャー、トレーナー、メンターをミックスした存在』だと思う人が多いのが現状です。このような状況だと、当該分野の知識やスキルにおいて、上下関係が存在することになります。

相手の立場が上(例えば「専門家」)で自分が下(例えば「素人」)だと見なすと、相手が自分と異なる考え方をしていても、わからないことがあっても、「そうなんですね」と相づちを打ったり、相手の言葉を「オウム返し」したりする表面的な会話に陥りがちです。

専門家は往々にして自分の専門領域から離れず、Howに相当する解決策やアドバイスを与えがちです。図表5で言う『シングル・ループ学習』に留まろうとするのです。

これでは、従来路線から離れて、新たな道を切り拓く建設的な『協創対話』は望めません。

『協創対話』を実現させるために要となるのは、目的達成・課題解決・意思決定に役立つよう『視点変更を促す質問』ができるかどうかです。

図表5で言う『ダブル・ループ学習』(Whatについて質問する)『トリプル・ループ学習』(Whyについて質問する)までを含む『深い対話』が重要なのです。

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図表5: 3種類のループ学習
[ニューズレター第109号より再掲]

『協創対話』が強く求められるようになってきている背景の1つとしては、様々な場面においてVUCAワールド混沌として先が読めない世界;Volatility変動性, Uncertainty不確実性, Complexity複雑さ, Ambiguity曖昧さ の頭字語)の色合いが強くなってきていることが挙げられます。

私たちの多くは、与えられた「地図」や「前例」を用いて最短コースで目的地に到着する能力を伸ばす教育を受けてきており、欧米先進諸国という『正解』があった時代には、『与えられた問題を効率的に解く』といった『シングル・ループ学習』に秀でた日本企業は、世界を席巻することができました。

一方、VUCAワールドというのは、手元に地図が無いどころか、『誰も地図を持っていない状況』です。『自分たちが歩みを進めて行った場所に対してだけ、自分たちの地図を描く事が出来る』という状況なのです。

読者の中には、「夏休みの自由研究」で苦労された事がある方も多いのではないでしょうか?「自由研究」だと言われているにも関わらず、自由研究の例が紹介された書籍を探し出し、内容をマネて、他者と似たり寄ったりの成果物を提出してしまいます。

身近な人々を思い浮かべてみてください。与えられた問題を解いたり、課題に取り組むのは上手だけれど、『自由に○○していいと言われると、思考停止してしまう』という方、思い当たりませんか?それくらい私たちは、What選び(ダブル・ループ学習;課題設定)に慣れていないのです。

『自らを刷新するというイノベーションが求められる、VUCAワールドの時代』には、誰も正解(地図や成功例など)を持っていない領域を、自分(たち)でたくましく切り拓いていく『協創対話』が求められているのではないでしょうか?

「絶対に確かな事、間違いではない事がわかってから動くというスタイル」(地図や過去の成功事例、安全なルートなどが手に入らなければ、動かないというスタイル)では、通用しない事が多くなってきています。

例えば、近年話題になった?「ヒッグス粒子」のことを思い出してみてください。最初に理論が提唱されたのは1964年で、実際に「ヒッグス粒子」が発見されたのは2012年と、理論の提唱から発見まで約半世紀が経過しています。「ヒッグス粒子」が発見されてから、その分野で研究を進めようと思っても、約50年先行しているグループに追いつき・追い越すのはなかなか難しいのではないでしょうか?

『自分たちはこうしたい!自分たちはこう考える!』といった想いを『方位磁針』として持ち、まだ地図に描かれていない領域を開拓していくには、『納得解』を共有して仲間を束ねる『協創対話』のようなアプローチが不可欠ではないでしょうか?

ここまで読まれてきたみなさんは、「普段自分たちが行っているコミュニケーション」について、そして、今回ご紹介した『協創対話』のようなコミュニケーションについて、どんな事を感じ、考えられたでしょうか?

弊社では、『協創対話』を身に付けるための思考法・コミュニケーションを学ぶプログラムとして、『合同会社5W1H流コーチング学習プログラム』をご用意しています。

●9月12日(土)スタート
合同会社5W1H流『コーチング学習プログラム』
初心者から、グローバルに活躍するマスター・コーチ、経営幹部、コーチ型組織のマネジャー、各種コンサルタントまで。

●9月22日(火・祝)~23日(水・祝)
2日間「コーチング漬け」体験
『マジックのような対話』が間近で見られるかもしれません。コーチングが初めての方も、他団体で学ばれた方も、氣軽にご参加くださいませ♪)

さて今回は、お問い合わせいただいた『合同会社5W1Hコーチング学習プログラム』について、『精聴』と『協創対話』という切り口から見て参りました。 今回の記事をお読みになって、あなたはどんなことを感じたり考えたりされたでしょうか? 周囲の方々とお話になってみてくださいね。

『精聴』と『協創対話』に関心をお持ちの方と、『合同会社5W1H流コーチング学習プログラム』でご一緒できるのを楽しみにしております!

それでは、次回のニューズレターでまたお会いしましょう♪

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