人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

『同業他社の参加』、何が悪い!?(第165号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

先日、ある分野の専門家たちが講演する会合への参加申し込みをしたところ、「同業他社様の参加は、お断りです」といった趣旨の回答をいただきました。

自分が講演をする視点で考えると、「聴衆の中にいる同業他社さんが、1時間やそこらの話を聞いただけで、中途半端に仕入れた知識を他の人に伝えてもらっては困る。誤解の種がばらまかれ、偏見の目で見られるようになると面倒だ。」とか、「弱小企業・新興企業が限られたリソースを活かして一生懸命創り上げた知的財産を、既に数多くの顧客を抱える大手企業・老舗企業にあっさり譲り渡してしまい、彼らをより強くしてしまう(…自分で自分の首を絞める)ような事態は避けたい」とかいう氣持ちはよくわかります。

一方で、一般公開の数十分~1時間程度の講演会で提供される情報は、インテリジェンス(※1)や、講演者が所属する企業の「競争力の源泉」となっているような情報ではないことが多いので、別途、自分の代わりに参加してもらった知人から内容を教えてもらったり、講演者が著した書籍を読んだり、インターネットを丹念に検索したりすることで入手可能な情報であることがほとんどであることを考えると、「おかしな対応だな」とも感じます。

今回は、この辺りについての私見を披露すると共に、「『同業他社様の参加もOKです!』という懇談会の開催」について、書いてみようと思います。

※1 インテリジェンス(intelligence; 「知性」などと訳されることの多い言葉ですが、文脈によっては「機密情報」などと訳されることもあります)
現場にいた人しか知らない事実・さまざまなデータ・歴史的経緯・キーパーソンによる内輪の話なども含む、膨大で雑多な情報の山から、対象とする事象の本質につながると思われるものを選りすぐり、多角的な分析を加えてさらに精査し、各種意思決定に役立つ形に編集した上で得られる情報のこと。

 

「コピー可能な知識」を「競争力の源泉」とするから「同業他社お断り」?

例えば、学術の世界には「学会」と呼ばれるものがあります。それぞれの分野の研究者が集まって交流し、相互に研究成果を発表し合い、その妥当性などについてオープンに検討したりする場・機会、および、それらに関する業務(学会誌の発行ほか)を行う機関のことです。 学会では、情報や知識の交換、各自の研究促進につながる議論、共同研究パートナーの発見、学術の振興を図る協議などが行われます。

もちろん、「研究者の場合には、所属している組織から安定した給与が得られることもあって、研究成果をどんどん公開しても自分の首を絞めることにはならない」という事情がありますので、そういった事情を踏まえずに「営利企業も、どんな情報でも公開すべき」とは思いません。

確かに、著作権や特許、商標などといった形で知的財産を守ることも、「社会に対して、持続的に価値を提供し続けることを可能にするため」にも「社員が生活を営むため」にも非常に大切だと思います。

しかし、冒頭で書いたように、「詳細情報まで残らず公開する数日間のセミナーなどと異なり、『数十分~1時間程度の一般公開の講演会に、同業他社の人は参加しないでください。その他の人は参加していいですよ。』というのは、本質的に有効な対応とは思えず、『その分野の深化・発展』や『健全な競争』を阻むものではないか?」と疑問に感じるのです。

昔、情報を得ることが大変だった時代であれば、講演会やセミナーといった場・機会は、「情報・知識の一方的な伝授」が重要だったのかもしれません。 しかし、現代では、種々雑多な情報が溢れかえっているような状況で、最先端の論文や人氣の動画まで、「コンテンツ」(…内容が固定化され、繰り返し学習に適しているなどといった特長を持つ情報)であれば、その入手は格段に容易になっています。

デジタル情報化されたコンテンツは、コピー・転送・シェアなどといった形で拡散することが、技術的には容易になっているため、「コピー商品」の流通・3Dプリンターによる銃の製造などにまつわる「倫理」面などについて、世界的に大きな話題となっています。

こういった状況下であるにもかかわらず、「『コピー可能な知識』を『競争力の源泉』とするから『同業他社お断り』いたします」などといっていて大丈夫なのだろうか?「企業の競争力の源泉は、知識以外のところにシフトしていっているという兆候はないだろうか?」といった疑問が生じました。 「『一般公開の講演会で同業他社お断り』と言っている業界・企業の閉鎖性」に不安を覚えるのは、まだ少数派の人間に限られるのでしょうか? あなたはどのようにお考えになるでしょうか?

※2 参考情報
ニューズレター第139号:システム思考と動的な質問力; コンテンツだけマネても役に立たない理由 では、「コンテンツだけで価値は生み出せない!」という図も描いておりましたので、参考のため、再掲しておきます。

コンテンツだけで価値は生み出せない

図表1:コンテンツだけで価値は生み出せない!
[ 出典:第139号の図表3を再掲]

※3 ちなみに弊社では、ほとんどの一般公開セミナーで同業他社様の参加を承っております。 「フレームワーク質問力(R)」セミナーに参加された後、ウチでお伝えしているのとは異なる切り口から「質問力」関係の書籍を出版された方もいらっしゃり、それはそれで業界の多様性を高めるためにも非常に価値あることだと考えております。 また、「合同会社5W1Hコーチング学習プログラム」への参加者は、その半数近くを、他社様で既にコーチングの資格を取得された方やコーチングを生業とされているプロの方が占めていらっしゃるといったような状況があります。(…自らコーチングを学ばれ、コーチングの書籍や講座の目利きができるようになってから、弊社プログラムの質や方向性について評価していただけるようになり、参加してくださっているようです。 上質志向の方々に認めていただけているというのは、本当に嬉しいことです!)

 

『独創×競創×協創』と『交流記憶』

前段では「学会」の例を挙げていました。 誤解が生じる懸念があるのを承知の上で、あえてざっくり言うと、有名な研究機関や大学などで、研究者として第一線で活躍していこうとする人々は、ほんのちょっとしたことであってもいいので、世界初とか世界最高といった成果を上げないと生き残れないという厳しい競争の中で生きていらっしゃいます。 特に外国の大学などでは「自力で外部資金を獲得してくる」ことが当然のように求められることも多く、 「質の高い論文を発表し続け、終身在職権を得ない限り、いつクビになるかもわからない」という状況の方も多いのです。

営利企業どうしも競争が激しいですが、同じように生き残りをかけて激しい競争を繰り広げる研究者の世界で、「学会」というものが、「独創」(…常識と思われていることに疑問を持ったり、新たな着想を得たりして、さまざまな検証を重ねつつ、独自の考えを理論や試作品といった形のあるものにしていくことなど)×「競創」(…ライバルと刺激を与え合いながら、互いの能力を引き出して開花させ、共に成長していくなど)×「協創」(…新奇な価値を創出するために、関係者それぞれが戦略的な意図を持ち、独自の強みを活かして、協働して挑戦的な課題に取り組むなど)に適した場・機会として機能している状況に学べることもあるのではないかと思います。

また、Facebookページの2014年10月5日投稿記事:「交流記憶」と「経営資源の有効活用」 では、

  •   [前略]「モノでもカネでも情報でも、ヒトが働きかけることによって、初めて価値を生む経営資源だ!」という見方をされ、その上で、「経営資源から最大限の価値を創出するには、その原動力となる『ヒト』の活用に本氣で取り組む必要がある!」[後略]
  • [前略]「関係者全員が、『誰が何を知っているか』を知っている」状態にする [中略] 「組織内、あるいは、組織の枠を超えて協働する仲間ぐるみの記憶システム」(集団で物事を記憶する在り方)は、「交流記憶」(対人交流的記憶:Transactive Memory)とも呼ばれ、「経営資源の有効活用」といった切り口から注目を集めています。[後略]

などといった事柄について書いておりました。

目先のリスクを重視し過ぎるあまり、短絡的な管理強化・保守的態度・情報鎖国の方針に走るのではなく、許容できるリスクを見極めた上で情報を公開・交換し合うというのは、競合どうしで切磋琢磨したり、変化の速い業界における協働を容易にしたり、イノベーションの創出率を高めるために重要なのではないでしょうか? 「何のリスクも負わずにイノベーションを創出しよう!」という姿勢は、現実的でしょうか? あなたは、「同業他社どうしも学び合った上で、各企業が独自価値を創出する」ことのメリット・デメリットについて、どのようにお考えになるでしょうか?

 

『同業他社様の参加もOKです!』という懇談会を開催します。

ここまでの話を踏まえて、弊社では、「『同業他社様の参加もOKです!』という懇談会」を開催しようと思いました。 現段階における、基本コンセプトは以下の通りです。

HCS懇談会(Human Capital Solution Round-Table)

HCS懇談会は、

  • 経営者、経営幹部の方
  • 人財育成や組織開発を担当されている方
  • プロジェクト・リーダー/マネジャーの方
  • 人財育成上の課題を抱えていらっしゃる方

をはじめ、「人財育成を通した、事業や組織の発展」「経営と人財・組織開発の連動」「イノベーション創出に向けた交流記憶の活用」および、前段でご紹介した「『独創×競創×協創』と『交流記憶』」という切り口に関心をお持ちの方のための交流の場です。
上記にご興味をお持ちの方であれば、業界・業種・業態・年齢・職務内容などに関わらず、どなたでも参加いただけます。(合同会社5W1Hと同業の他社様からもご参加いただけます。)

HCS懇談会では、リラックスした雰囲氣で、「人財育成を通した、事業や組織の発展」「経営と人財・組織開発の連動」「イノベーション創出に向けた交流記憶の活用」に関して. . . .

  • 国内外の「ニュース」(専門誌、各種コンファレンスほか)や、所属組織ならではの「悩み」などをシェアして語り合いましょう
  • 異なる立場・視点を、各自の日常業務にどう活かすことができそうか、考える機会としましょう。
    (例:「経営側の人間が、人財育成や組織開発側の人間がどういった事柄に意識を向けているのかを知る」、逆に「人財育成や組織開発側の人間は、経営側の人間がどういったことを自分たちに期待しているのかについて理解を深める」など)
  • 異なる専門領域・強みを持つ方々と交流し、事前に想定していなかった良案(協業、新たなプロジェクトの発足ほか)が生じる場を共に創り上げましょう

4つの側面から、最も氣軽に参加できる会です

HCS懇談会は、弊社主宰のものとしては、「最も氣軽に参加できる会」を志向しています。

  • 無料…実費(ご自身の飲食代)のみのご負担で参加いただけます。
  • 予習などの事前準備が不要です。
  • 当日のファシリテーターなど、役割担当がありません
  • 事後のレポート提出が不要です。

状況を鑑みて、後日、さまざまな変更を加えていく可能性はあります。 「貸し会議室を利用する」などといった場合には、有料化させていただくことも視野に入ってきますが、しばらくの間は【無料】での開催(…飲食代のみ自己負担)を試みてみようと思います。 こういった方針の下、当初の会場は、「セルフ式のカフェ」(基本は完全禁煙、状況により分煙)を利用し、「各自でドリンクを購入してからテーブルについていただく」ことを想定しています。

開催日時や会場の確認について

まずは数ヶ月の間、月に1度、平日の13:30~15:30(途中参加・退室自由)に開催して、参加者のみなさんのご都合・ご要望などをうかがってみようと思っています。

第1回の「HCS懇談会」は、2014年11月13日(木)に東京駅近辺での開催を予定しています。参加を希望される方は、こちらよりお申し込みくださいませ。

なお、「HCS懇談会」に関する<最新情報>は、随時、下記のページでご確認いただけます。

「人財育成を通した、事業や組織の発展」「経営と人財・組織開発の連動」「イノベーション創出に向けた交流記憶の活用」および、前段でご紹介した「『独創×競創×協創』と『交流記憶』」という切り口に興味をお持ちの方は、是非、お知り合いとお誘い合わせの上、お越しください。 「HCS懇談会」に興味をお持ちのみなさまとお目にかかれるのを楽しみにしております♪

さて今回は、ある会合への参加申し込みをしたところ、「同業他社様の参加は、お断りです」といった趣旨の回答をいただき、「コピー可能な知識を『競争力の源泉』とするから『同業他社お断り』いたします!という姿勢なのでは? それで良いのだろうか?」といった違和感を覚えたという話をご紹介し、さらに「『同業他社様の参加もOKです!』という、HCS懇談会(Human Capital Solution Round-Table)」の開催を試みてみようと思いました!という流れで話を進めて参りました。 あなたは、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか?

以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。 それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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