人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

学習 ≠ お勉強、CLO ≠ CHRO、 「人財育成部門の在り方」が変化(第162号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。 

先日、ある方にお会いしたときに、下記のようなことを尋ねられました。

人は変わらない」という前提を強化する「タイプ分け」(※)に反対して、「人や組織は変われる」という前提に基づく「パターン選択」を推奨されている御社の方針に納得しました。 そんな御社が提供されている、「人財育成コンサルティング」に興味を持ったのですが、具体的にどんなことをされているのかご説明いただけないでしょうか。

確かに、それまでウェブサイトでご紹介していた表現では、弊社の「人財育成コンサルティング」に関して、よくわからないという方がいらっしゃっても不思議ではないなぁと反省し、もう少し補足が必要だなぁと思いましたので、今回は、その辺りの話について、弊社の考え方をご紹介しようと思います。


※タイプ分け

例えば、ある日、佐藤さんが鈴木さんの血液型を尋ねて、鈴木さんが「A型です」と答えたとしましょう。 その翌日、また佐藤さんが鈴木さんに出会った時、「鈴木さんの今日の血液型は何型?」と尋ねるでしょうか? まず間違いなく、尋ねませんね。 なぜかと言うと、私たちは「(骨髄を移植したり特定の疾患にかかったりしない限り)血液型は一生変わらない」という前提を持っているからです。 このように、私たちは「タイプ分け」を行うと、相手を「鈴木さんは、○○型だからねぇ」などと「色眼鏡で見る」ようになります。

(もちろん、「血液型と性格の関連性に科学的根拠はない」という論文:「血液型と性格の無関連性―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠」…2014年6月25日に発行された日本心理学会の機関誌『心理学研究』掲載の九州大学の縄田健悟講師による論文が出て、ニュースになったことは存じておりますが、わかりやすく身近で象徴的な例として血液型についての会話を取り上げました。)

こういった考え方・態度は、「人や組織は望ましい姿に変わることができる」という考え方を前提として持つ人財育成担当者やコーチなどにとって好ましいものではありません。 説明が長くなるのでここでの詳細説明は省略しますが、弊社の「コーチング学習プログラム」などでは、「タイプ」ではなく「慣れ親しんだ思考・行動の『パターン』」(…タイプ間のように「断絶」が無く、「連続体」上の変化として捉えるパターンであれば、異質の思考や行動についての「許容度」を増す形で「人間的成長」を理解することが可能。また、同じ時期の同じ人物であっても、仕事の時とプライベートの時には採用するパターンが異なっていても当然などと、「人の多面性」についての理解・説明が容易などといった特長を持つ概念)を重視しています。


 

改めて、人財育成・組織開発とは?

「人財育成コンサルティング」とはなんぞや?という話に進む前に、改めて、現時点における弊社が考えている「人財育成・組織開発」とはどんなものか、整理してみようと思います。

ニューズレター第104号では、

ヒトの脳にある『型』を定着させようとすると、その信号処理のパターンを習慣化させることが必要となります。(この場合には、脳内の神経細胞の再組織化にはタンパク質の合成を支えるために必要な遺伝子の発現などを考慮すると、最低2週間くらいに渡って継続的な取り組みが必要となります。)

と書いていました。 この辺りの話は、「集合研修を2~3日やっただけでは、人や組織は変わらない」「70:20:10の公式」(図表1、2)と関係が深い内容となっています。

 

「3タイプの専門的能力開発」に関する比較表

図表1: 「3タイプの専門的能力開発」に関する比較表
[ 出典:ニューズレター第120号より再掲 ]

 

「70:20:10の公式」の面積表示

図表2: 「70:20:10の公式」の面積表示

 

人財育成で話題にのぼる3つのスキルと組織内階層

図表3: 人財育成で話題にのぼる3つのスキルと組織内階層
[ 出典:ニューズレター第104号より再掲 ]

 

学習形態という切り口から見た、人財育成と組織開発(イメージ)

図表4: 学習形態という切り口から見た、人財育成と組織開発(イメージ)

これらを踏まえると、「研修」という機会・場は、「パラダイム・シフト」を起こすか、「仕事現場・日常業務の中で、今の自分が意識して取り組むことが有効な課題を発見」するか、「仕事の体験(問題解決のプロセスなど)を振り返って咀嚼・概念化し、経験学習とするために有益な視点を得る」か、「同じ領域における課題や問題意識を共有している仲間と知り合う」ためのきっかけとして非常に有効なものではあるけれど、中長期に渡る本質的な変化を実際に(自分あるいは周囲に)もたらすには、研修に加えて、「継続的な学習およびそれを支える仕組み作り」などが求められるとご理解いただけるのではないでしょうか。

図表4中の「自己の正確な認識」については、ニューズレター第141号に出てきていた「戦略的人財マネジメント」という流れの中で、「ジョハリの窓」という形でご紹介していました。

ジョハリの窓

図表5: 「ジョハリの窓」(“Johari window” by Joseph Luft & Harry Ingham) を用いたリーダー育成
[ 出典:ニューズレター第141号より再掲 ]

図表4中、コラボレーション(協働)のところで書いた「動機の向上、維持」については、例えば、初めて公の役職として「CLO」Chief Learning Officer; 最高学習責任者)となったことでも有名なSteve Kerr氏 [ GEの「コーポレート・リーダーシップ研究所(現・ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所)」の責任者を経て、ゴールドマン・サックス・グループに移り、CLO、相談役などを歴任] の次の言葉を紹介しておきます。

仕事に対するフィードバックが無いのは、ピンの見えないレーンでボウリングをやるようなものだ。 結果を把握しないで仕事をしていると2つのことが起こる。 ひとつは上達しないということで、もうひとつは、どうでもよくなるということだ。

さて、ここまでご覧いただいて、「どうやら、人財育成というのは、研修の企画や運営をしているだけのことではなさそうだぞ」という感覚を得ていただけたでしょうか。

ニューズレター第141号では、「人財育成関連部門の最大の関心事は、

人財育成を通して、いかに『事業や組織の発展』『関係者・関係組織の共存共栄』に貢献できるか?

であることは、100年以上経っても変わっていないようですが、人財育成関連部門の『在り方』は、微妙に変化してきているようだ」とも書いておりました。 この後は、「異分野・異業種・社外の人財を束ねて働く機会が増える」「さまざまなテクノロジーの活用が増える」などといったビジネス環境の変化に伴う「人財育成関連部門の在り方の変化」を意識して、現時点で弊社の考えている「人財育成コンサルティング」についてご紹介してみようと思います。

 

人財育成コンサルティングとは?

前段のSteve Kerr氏の紹介部分で、CLO(Chief Learning Officer; 最高学習責任者)という役職が登場していました。 類似のものとして、CHRO(Chief Human Resources Officer; 最高人的資源責任者)が知られていますので、この2つについて区別しておこうと思います。

細かな定義に関しては、各社各様なのですが、一般に、CHROというと、労務管理「タレント・マネジメント」(人財の採用・配置・育成・キャリア形成などの管理・支援)を所管することが多いようです。 いわゆる、従来の日本企業で言うところの「人事」の最高責任者といった感じで、採用や就業規則の策定、労使交渉など、多岐に渡る活動を所管するのがCHROということです。

一方、CLOの場合には、「人財育成のみならず組織開発にまで関与する形で、『学習』に責任を持つ」ことが求められます(図表4参照)。 2014年7月23日にFacebookページに投稿した記事: 「個人だけでいいの? &『出た所勝負』説明会!」では、

「人財育成は『個人』の能力だけを上げればいいんですか?」、「業績向上に不可欠な『チーム/組織の能力』を上げる」ために、「人財育成研修での学びを、現場で活用すること、現場に浸透させること」が重要じゃないんですか?

と書いておりましたが、「経営陣と共に数年後の望ましい組織の姿を描き、顧客/クライアント/株主/社員にとって価値のある経営戦略・事業戦略を実行するための学習プログラムの策定や運用を担う」こと、「後継者・次世代リーダー育成の責任を担う」こと、「『エンパワーメント』(権限委譲による社員の業務への主体的関与の推進)や『エンゲージメント』(自主性を尊重した社員間における業務上の取り決め;会社のために自発的に貢献しようとする状態)を高める」こと、「独自価値の創出に適した企業文化を育む」ことなどを所管するのがCLOということです。

図表3でも示した通り、同じ個人であっても、役割や組織内階層が変わるにつれ、求められるスキルは変わります。 「顕在化している成果創出能力の最適配置」(即戦力となる機能を持った「駒」の最適配置)するだけでなく、「まだ顕在化していない能力を引き出し、育むために、いかにして適切なタイミングでその人財に適切な経験を積ませ、どのように活用していくか」について探求していくのがCLOの真骨頂であるとも言えるでしょう。(…冒頭の「タイプ」と「パターン」の話と絡めるならば、「人や組織は変わることができる!」という前提を基にして施策を打つのがCLOということになりますね。)

弊社の「人財育成コンサルティング」で特に大切にしていることのひとつは、CLOの話で前面に出てきた「学習」(ラーニング)です。 一般には、「学習 ≒ お勉強」というイメージもある「学習」ですが、弊社では少し違った切り口から「学習」を捉えています。

弊社では、人財育成関連部門で最も大切なことは、

人財育成を通して、いかに『事業や組織の発展』『関係者・関係組織の共存共栄』に貢献できるか?

というポイントであると考え、弊社が提供する「人財育成コンサルティング」では、

「学習」の要は、「『予測/仮説』と『結果』の『ギャップ分析』を適切に行い、次の手に活かすこと」であり、

人財育成の役目を担うCLO、人財育成担当者、リーダー、マネジャーは、事業の目的/目標達成のみならず、目的/目標達成に向かう取り組み・プロセスを通して、関係者が何を学習するか(関係者の経験学習)に責任を持つことが大切だ!

と考えています。

図表6をご覧ください。

人財育成・組織開発戦略と経営・事業戦略のつながり

図表6: 人財育成・組織開発戦略と経営・事業戦略のつながり
(「問題」と「課題」の違いについては、ニューズレター第153号の用語解説3をご参照ください)

ビジネス環境の変化が緩慢な時代、変化が速くても先が確実に読みやすい時代には、「B→D→E→F→G→B」というループを回しているだけでも良かったのかもしれませんが、変化が速く先が読めない時代・価値観が多様な時代には、「A→B→D→E→F→H→A」という2つ目のループも併せて回すことが重要となっています。

しかし、人財育成の実体としては、「B, C, D, E」といったプロセスをやらずに、「問題症状の解消=課題」だと誤解したままで対症療法的な施策を打ったり、自社独自の課題を見極めないままに「最近話題の研修は何?」と研修提供会社の人に尋ねたり、「今年の人財育成分野のベスト・プラクティスを、そのままウチでも導入しよう!」などと、カスタマイズしないまま真似ている企業も多いと聞いています。あなたの所属される組織は大丈夫でしょうか?

弊社の人財育成コンサルティングでは、

図表6で示した「2つのループを円滑に回す」お手伝い、Fのプロセスを中心に「『予測/仮説』 と 『結果』 の 『ギャップ分析』 を適切に行い、次の手に活かす」お手伝い、「経営戦略・事業戦略の実行に伴う、関係者の経験学習の効果・効率を高める」お手伝い

をさせていただいています。
(場合によっては、コーチング各種研修も併せて提供もさせていただいております。)

経営者や経営幹部が、顧客/クライアント/株主にとってこれまで以上に魅力的な価値を創出するようになるため、社員が今まで以上に仕事にやりがいを感じて働けるようにするため、組織を継続的に運営していくために、「人財育成」に真剣に取り組もうと考えた場合には、人財育成担当部門の人に相談を持ちかけることでしょう。(中小企業の経営者、経営幹部であれば、自分たち自身がその役割を担わなければならないことの方が多いかもしれませんね。)

しかし、現状、多くの企業の人財育成部門が行っているのは、個々人の能力を高めるための「訓練」(トレーニング)がほとんどであって、「業績向上に不可欠な『チーム/組織の能力』を上げる」ため、あるいは、「人財育成研修での学びを、現場で活用すること、現場に浸透させること」に役立つ、「学習」(ラーニング)や「協働」(コラボレーション)ではありません(…図表4参照)。

すなわち、人財育成部門の人々は一生懸命に、社員が知識やスキルを獲得するのに適した機会(集合研修)を提供してはいるものの、「人財育成を通して、いかに『事業や組織の発展』『関係者・関係組織の共存共栄』に貢献するか?」といった点に関して配慮した取り組みはほとんど行われていないのが現状です。 このように、「経営戦略・事業戦略と、人財育成・組織開発戦略が一貫性を欠いている状態」が、「人財育成に真剣に取り組もう」と考えたときに最大級の問題として浮上します。そこで、「何からどう手を着けたらいいかわからない」「複数の仕事を抱えているため、この件に専念するのは困難だ」「外部の専門家の支援が欲しい」といった場合にご利用いただけるサービスの1つとして、弊社では人財育成コンサルティングをご用意しています。 興味をお持ちの方は、こちらから詳細をご確認いただけます。

さて今回は、「人財育成って何をするもの?」「人財育成コンサルティングとは?」という内容について、6つの図表を用いて解説して参りました。 あなたは、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか?

以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。 
それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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