「毎日エクサ・バイトの情報が生まれる時代」の大学生向けキャリア講義(第160号)
今回は、いつもと趣向を変えて、大学講義(キャリア・デザイン絡みの内容;東京理科大学のS教授と明治大学のW教授と私の3人で何度か実施してきているパネル・ディスカッション形式の講義)用に準備した資料(…実際に講義で使うかどうかは不明)の一部をシェア差し上げることで、さまざまな立場のみなさまが「キャリア・デザイン」などについて考える際のお役に立てればと思います。
下記は「学生さん向け事前課題」で、私が書いていた文章の一部です。
約10年後の2025年には、IoT(Internet of Things)が当たり前のように普及し、1兆個を超えるモノがコミュニケーションし合うという世界を推測する人たちも出てきています。 ヒトとモノ、モノどうしが相互にネットワークでつながり、情報が情報を生み、自己学習を進めていく世界が、すぐそこまで来ています。 その頃の経営者の中には、機械・ロボット・コンピューターなどにどうしても任せられない仕事だけをヒトに任せたいと考える人が増えているかもしれませんね。 そうした兆しが見えている現在、大学に在籍しているあなたは、今後の「ヒトが果たす役割・自分の人生における仕事の意味・働き甲斐・生き甲斐など」についてどのようなことを考え、キャリアをデザインしていくことが望ましいのでしょうか? (後略)
興味をお持ちいただけた方は、引き続きお読みください♪
大正9年から始まった「国勢調査」を基に、円グラフを作成
まずは、統計データを元に、産業・職業について概観してみましょう。
図表1:大正9年(1920年)の産業
[ 出典:大正9年国勢調査、職業、表5:職業(大分類)別本業者本業なき従属者及家事使用人-府県を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表2:昭和25年(1950年)の産業
[ 出典:昭和25年国勢調査、労働力状態・職業・産業・従業上の地位、表3:産業(小分類)及び男女別14才以上就業者数-全国・市部・郡部・都道府県を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表3:昭和55年(1980年)の産業
[ 出典:昭和55年国勢調査、労働力状態・産業・職業・従業上の地位 、表1:産業(中分類),従業上の地位(5区分),年齢(5歳階級),男女別15歳以上就業者数-全国を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表4:平成22年(2010年)の産業
[ 出典:平成22年国勢調査、労働力状態・産業・職業・従業上の地位、表11-2:産業(中分類),職業(中分類),男女別15歳以上就業者数- 全国を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表4で上位3つに挙がった業種について、別途「就業者の職業(産業別)」の円グラフを作成しました。
図表5:卸売業、小売業の職業
[ 出典:平成22年国勢調査、労働力状態・産業・職業・従業上の地位、表11-2:産業(中分類),職業(中分類),男女別15歳以上就業者数- 全国を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表6:製造業の職業
[ 出典:平成22年国勢調査、労働力状態・産業・職業・従業上の地位、表11-2:産業(中分類),職業(中分類),男女別15歳以上就業者数- 全国を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
図表7:医療、福祉の職業
[ 出典:平成22年国勢調査、労働力状態・産業・職業・従業上の地位、表11-2:産業(中分類),職業(中分類),男女別15歳以上就業者数- 全国を基に、合同会社5W1Hで概算 ]
今回のニューズレターは「趣向を変えてのお届け」ということですので、図表1~7に関する私の解釈を披露するのは差し控えます。 あなたも、講義に参加する大学生と同じように、あれこれご自身なりの考えを巡らせてみてください♪ 何が読み取れるでしょうか? あなたの興味・関心に基づくと、どういった形で参考にすることのできる情報でしょうか?
毎日「エクサ・バイトの情報」が生み出され、「機械」の存在が増す現代社会
多くの人が携帯電話で写真や動画を撮影したり、街中にあるさまざまなセンサーが情報を収集したりするようになって、最近では、毎日エクサ・バイトという量(…おおよそ、世界中にある印刷物に書かれた情報総量の5分の1に匹敵!)の新しいデジタル情報が生まれるようになっているとも言われています。
図表8:SI接頭語
キロの1000倍がメガ、メガの1000倍がギガ、ギガの1000倍がテラ、テラの1000倍がペタ、ペタの1000倍がエクサ(=100万テラ)です。
冒頭の「学生さん向け事前課題」文章中で触れていたIoTの他にも、IT(…経済産業省の色が強い表現)/ICT(…総務省の色が強い表現)や、人工知能による機械学習、ビッグデータの活用法などに関する研究や技術開発が進展し、先週6月5日には、人の感情が分かるヒト型ロボット、pepper(ペッパー)の一般向け販売(2015年2月予定)のニュースも流れました。
「疲れずに24時間働ける、不平不満を言わない、人件費が浮く、作業の質が変わらない、ヒトがクリックするより短い時間で各種判断を行う….etc.」といった特長を活かし、「機械・ロボット・コンピューターなどに任せた方が良い仕事」もあれば、「ヒトに任せた方が良い仕事」というのもあると思います。 あなたはこれらの共存の仕方を考える上で、どのようなことが大切だと思いますか?(科学・技術の発展によって、私たちのライフ・スタイル、ビジネス・スタイルがどのように変わっていくのか、想像・推論するのも参考になるかもしれません。)
発想を刺激するためのヒントの例:
- 単純に過去の情報を集めるだけで、未来のビジネス・モデルは生まれるでしょうか?
- どんな情報を集めれば、現状の制約(人員、予算、納期…etc.)を乗り越える解決策が生まれるでしょうか?
- ビッグデータやコンピューターの能力と、仮説あるいは戦略とはどういった関係にあるでしょうか? …etc.
上述のような「ヒトとヒト以外のもの」の仕事の共存・役割分担などについて考えた事柄は、あなたのキャリア・デザインに何らかの影響を及ぼすでしょうか? もし影響があるとすれば、それはどんな内容で、今からどんな対策をしておくことが有用でしょうか?
視点の変更・統合と納得解
前段の「ヒトとヒト以外のもの」の仕事の共存・役割分担という切り口は、1つの視点ではありますが、それが唯一の視点というわけではありません。弊社「フレームワーク質問力®」や「コーチング学習プログラム」などでは、「視点の柔軟な変更」「複数の視点の統合」を重視していることもあり、ここでは、キャリア・デザインを考えるのに有効かもしれない視点の「例」について、さらにいくつか紹介してみることにします。
総務省統計局の人口推計などを見ると、日本の人口は2008年に1億2800万人でピークを迎え、昨年2013年には約80万人減少、2020年にはさらに300万人減少などといったことがわかります。(…人口推計というものは、戦争や感染症の世界的大流行などがない限り、ほぼ確かだと言われています。)
労働人口の減少から生じる問題の解決に関しては、外国人労働者の受け入れ・女性やシニア層の労働力化といった形でさまざまな対策が取られようとしています。(人手不足の業界では、「働く人々の給与が増加 = 人件費の上昇」が生じ、これを原因となって「製品・サービスのコスト上昇 → 企業の国際競争力が低下」という懸念も指摘されています。)
ちなみに、会計ソフト大手のインテュイット社の最近の報告書「The Intuit 2020 Report」 によれば、2020年までに、米国民の40%以上がフリーランサー(自由契約者)、各種下請け業者、臨時雇用者(派遣労働者、嘱託従業員など)になるだろうという予測がなされています。
一方、「人口減少に伴う、内需(国内需要;国内での消費)の減少」に対しては、ビジネスのグローバル展開によって対応しようという動きが見られます。(…優秀な人財の多くが外国に飛び出していってしまうと、これまでの「日本の良さ」を体現し世界に発信してきた社会が変質してしまうかもしれませんが。)
もちろん、「経済活動」とは別に、「地球環境保全と人類社会の共存」(…「現在世代と将来世代が依存する生態系を支えたり回復させたりしつつ、現在世代たる私たちのニーズやウォンツを満たす発展」を可能にする消費、ライフ・スタイル、文化の選択、浸透など)といった観点や、「GNH」(Gross National Happiness;国民総幸福量)などといったさまざまな観点から、人口減少&超高齢社会を迎える日本の状況について理解し、私たち自身が各自の信念・価値観に基づいて、今後の生き方・働き方などを総合的に検討することが大切なのだろうと思います。
さて、ここでご紹介してきた視点の例は、どれもマクロなもの(世の中の大きな流れに関係の深い内容)だったかもしれません。では、もっと身近な事柄で、あなたの働き方や生き方、あるいは今後の研究テーマなどを決める際に大切にしたい「基準」「外せないポイント」にはどんなものがあるでしょうか?
キャリア・デザインを考える際には、全員にとっての絶対解というものはなく、それぞれの人にとって、情熱を持てる仕事、創造性を発揮できる分野などが異なっており、譲れない条件(「プロフェッショナルであること」と「自分自身でいることを両立させたい」…etc.)というのも違っていて、ひとりひとりが納得解を探すことが重要となってきます。
この文章をお読みの方の中には、学生さんもいらっしゃるでしょうし、定年間近で第二の人生を検討したいと思い始めた方もいらっしゃるでしょうし、初めての転職・転社の可能性を検討されている方もいらっしゃるでしょうし、和僑のような活躍に向けて準備を進める方もいらっしゃるかもしれません。
今回の話は大学の講義用に用意した一般的な情報ということで、クセがあったかもしれませんが、巷の人材ビジネスのほとんどが「マッチング・ビジネス」(求人を出す企業と求職者のマッチングを手伝うビジネス)であることに氣づき、「自分で主体的にキャリアをデザインしていく」「望むキャリアを実現できるように自分を育てていく」「雇われない生き方(起業、ビジネス・オーナー、投資家…etc.)もある」などといった多くの可能性を自分で勝手に閉ざしてしまうことがないようにするために、自分の人生を思う存分生き切るためのヒントとして、少しでもお役に立てる部分があれば幸いです。
就職・転職・起業を控えた方だけでなく、
管理職(所属長)への分かれ道:35歳前後の方、
経営幹部(執行役員)への分かれ道:45歳前後の方、
定年後のキャリアを考え始めた50代の方、
是非ご確認ください。
さて今回は、いつもと趣向を変えて、大学講義用に準備した資料の一部をシェア差し上げることで、さまざまな立場のみなさまが「キャリア・デザイン」などについて考える際のお役に立てればと思い、いろいろな情報をご紹介してきました。 あなたは、どういったことを考えたり、感じられたりしたでしょうか?
以上、今回の記事も、あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。 それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪