人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

組織学習に向けた研修活用法: 個人が採り上げる問題を分析→組織の課題を顕在化(第149号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

先日、2009年から「フレームワーク質問力®」研修を導入していただき、年に数回(合計20回弱)実施してきている企業様にて、研修実施後、研修担当者の方とあれこれ話していました。 その中で、(事前提出課題を見ても、研修中の受講生のやり取りを見ていても)「受講生の質が落ちているように感じる」とお伝えした上で、「研修の継続的な改善を図る上では、こういった定点観測の視点も大切ではないか?」という話をしていました。 その場の話はそういった程度で終わったのですが、研修担当者の立場になってみれば「『○○と感じる』などという主観的・抽象的な情報を研修講師から伝えられても、次にどう動けばいいのかわからなくて困るだろうな」と思いました。 そこで手始めの取り組みとして、本記事配信後に「フレームワーク質問力®」研修を実施予定のA社様、B社様、C社様の蓄積データ(事前提出課題)を利用して、人財育成について考えてみようと思い立ちました。 今回は、その辺りの話をご紹介しようと思います。 ご興味をお持ちの方は、どうぞ読み進めてください♪

 

NHK調査結果(人事担当者情報)と
合同会社5W1H調査結果(研修参加者情報)

コミュニケーション上の課題」についての調査報告にはいろいろものがあるかと思いますが、ここでは、比較的新しくて代表的な例として、企業や自治体向けにことばコミュニケーション研修を実施している(一財)NHK放送研修センター日本語センターさんが2012年に実施された「ビジネス・コミュニケーション調査」を取り上げてみようと思います。図表1をご覧ください。

ビジネス・コミュニケーション調

図表1: 「ビジネス・コミュニケーション調査」
[ 出典:(一財)NHK放送研修センター日本語センター、2012年6~7月に東証1部上場企業の人事担当者向けに実施、121社から回答;ご担当の花田和明様のご了承を得て一部引用掲載 ]

ニューズレター第143号「図解フィードバック」と「話し言葉という線形情報」でもお伝えしていたように、弊社では、「問題症状 ≠ 課題」「問題発見 ≠ 問題設定」という切り口や「因果関係の精査」を重視しているため、「『課題のトップ』や『進めるうえでの課題』は『顕著な問題症状』と読み替え、『活性化の取組み』と『コミュニケーション課題の解決に向けた取り組み』の関係は不明」という立場で、この調査結果を参照したいと思います。

続いて、弊社「フレームワーク質問力®」研修の参加者からご提出いただいた「事前課題」を基に、「頻出するコミュニケーション上の ”問題症状” を引き起こす “近因” 」を整理してみましたので、図表2でご確認ください。

頻出するコミュニケーション上の「問題症状」を引き起こす「近因」

図表2:頻出するコミュニケーション上の「問題症状」を引き起こす「近因」
[ 出典:手始めに、図表2のような形での情報公開を許可してくださったA社様、B社様、C社様(内訳:製造業2社、サービス業1社)において、過去3年間に実施した「フレームワーク質問力®」研修の事前提出課題(コミュニケーションを図る上で、実際に頻出している問題)を活用して作成。合同会社5W1H により、独自分析・集計した結果を簡略化して表示。今後は、要望があった場合に各社向けに分析・集計の予定。]

図表2の「確認不足」には、例えば、思い込み・先入観・レッテル貼り・決めつけ、理解しようとする姿勢の欠如、理解したつもり、目的・手段・成果イメー ジ・判断基準などの不充分な共有、都合の良いように解釈、言葉の定義・意味の確認不足、相手に尋ねずネット検索、相手と関わりたくない、上長への質問は失 礼に当たるという考えに基づく遠慮など、数十に渡る項目(症状遠因など)が含まれています。

同様に、「大局観・戦略の欠如/事前準備不足」には、コミュニケーション目的よりも対人関係・場の雰囲氣・自己評価への影響を優先する姿勢、指示内容に違和感を覚えても放置、会議などの形骸化、目的の明確化が不充分なために話が発散したり相手のペースに乗ったりしてしまう、特定の状況を事前に構想・デザインする力の欠如、現場を軽視した空理空論など、

視点変更の意識・能力不足」には、相手の立場で考えない、複眼思考への不慣れ、思考の柔軟性の欠如、視野が狭い、視座が低い、原因・犯人探しだけで成功例や解決策を探求しない姿勢、1対1対応で考えてばかり(確率・統計の視点の欠如)、最初から二者択一で検討、1つあるいは2つ上の職位の視点の欠如、複数の視点を統合して結論を出す力の欠如など、

”相手に合わせた”情報伝達・収集の意識・能力不足」には、伝えたつもり、情報処理スタイルの相違を軽視・無視、プリ・フレーミングなし、自分のやり方を強要、目的・状況・相手に応じた伝達方法変更の配慮なし、相手の行動のトリガー・心理抵抗・二次利得への配慮なし、専門知識を共有しない相手に向けた略語の乱発など、

その他」には、話し合う前から対立イメージ・感情を持っていて相手を目的達成・問題解決のパートナーだと見なさない姿勢、個人よりもチームで取り組む仕事が増えてきているにも関わらずセクショナリズムが障害となっている、プロジェクト全体の歩調を合わせるための仕組みの欠如など、多くの情報が含まれています。

図表1は「人事担当者から得た情報」に基づく集計結果で、図表2は「研修参加者から得た情報」を弊社の切り口で整理した集計結果です。どんな調査も、その調査の目的や母集団などによって、多かれ少なかれバイアスがかかった情報が出てくるものだと承知した上で、あえて、2つの図表を比べて考えてみました。

すると、人事担当者(事業戦略実現上、間接的な関係者)がコミュニケーション上の問題症状のトップに挙げている「報告・連絡・相談が不足」という項目は、研修参加者(事業戦略実現上、直接的な関係者)のリストの(少なくとも)上位には挙がって来ないものであることがわかります。 …組織内で「立場による現状認識の乖離」が発生していないか確認する必要があるかもしれませんね。

「報告・連絡・相談が不足」という項目の内、「報告・連絡」に関しては「一方向の情報発信・伝達」といった側面が強く、「『確認』という『双方向のやり取り』」とは少し異なる内容のように感じています。(…「不足」という場合、「どんな基準に達していないのか?」という「判断基準」が明確になっていないと、状況改善のための具体的な施策が打てません。) また、「相談が不足」という状況の背景には、「確認不足」の下位項目として挙げた「相手に尋ねずネット検索、相手と関わりたくない、遠慮」など、「対人関係・組織風土を基盤とする要因」が存在することが推察でき、「ただ単に『コミュニケーション ”量” が足りない』(※)から増やせばよい!という話ではなさそうだ」と認識しています。

例えば、「丁寧な確認(を重ねること)」を自ら止めてしまっている背景を理解して、適切に対処するには、「人間理解」(認知的・心理学的な理由ほか)が求められるかもしれませんし、近因として挙げた「大局観の欠如や準備不足」のさらに背景には、「仕事観」(働くことに対する考え方・意味づけ、コミットメントほか)などの遠因があるのかもしれません。

つまり、「報告・連絡・相談が不足している ”ように思う” ので、コミュニケーションの機会を増やすようにしましょう!話す量を増やしましょう!」などといった場当たり的な対症療法を繰り返して徐々に深刻な状況に陥るのを避け、「本当の意味で、コミュニケーション課題を解決する」には、「問題症状を発見するのみならず、問題構造の把握に努め、目的や使用可能なリソースに応じた適切な課題設定を行うこと」[…フレームワーク質問力®のアプローチ] が大切であると考えています。

※一口に「コミュニケーション」と言っても、「仕事を進めるために直接関係する内容のやり取り」もあれば、「仕事仲間との関係を円滑にするためには有効だけれど、仕事を進めること自体には直接関係のないやり取り」というのもあります。「コミュニケーションDAY」といった機会を設けることは、後者のコミュニケーション量を増やすことに役に立っても、前者のコミュニケーション量を増やすことの役には立たないかもしれないということを認識する必要があるように思います。やはり「適切な課題設定」が重要ではないでしょうか?

 

研修実施で得られる情報を収集・分析し、「組織としての学習」に活かす

ニューズレター第121号でお伝えしていたように、弊社は「組織の問題 ≒ コミュニケーション不全」という問題意識を持っており、ビジネスを行う上で「コミュニケーション上の課題を解決すること」は非常に重要なテーマであると考えています。(ちなみに、図表2で挙がっていた主要項目は、すべてフレームワーク質問力® および合同会社5W1H流コーチング学習プログラム内で取り扱う内容となっています!)

そのため、コミュニケーション課題の解決に当たっては、(「きっと、こういう研修(体系)を実施すると良いのではないか?」と想像力を発揮したりすることも大切かもしれませんが)「事実に基づいて考え、課題解決に向かう姿勢」を持つこと(Fact-based Problem Solving)も大切ではないかと思っています。…「報告・連絡・相談が不足している ”ように思う” ので、コミュニケーションの機会を増やしましょう!」といった、独りよがりの解釈短絡的な対応を繰り返し、あるとき氣づくと、手が着けられないような深刻な事態に陥ってしまっていたということのないようにしたいものです。

では、コミュニケーション課題の解決に有用な「具体的な判断や行動を選択する際の根拠となりうる情報」(立場や役割の異なるそれぞれの人が「事実」と認識している情報)としては、どんなものがあるでしょうか?

図表1のような、広く一般向けの調査結果は、多数の人々がどんな意識を傾向として持っているのかという大きな傾向を捉える段階での利用に適していますが、各企業あるいは各部署が具体的な施策を打つには、まだ情報の具体性が乏しく、判断や行動の根拠となる情報として利用するのは難しいかもしれません。

どういうことかというと…例えば、図表1の「個人のコミュニケーションスキルの低下」に登場している「コミュニケーション・スキル」が、具体的にどういった事柄を指しているのか、アンケートに回答された人事担当者の認識が合致していたのかどうかはわかりません。 図表2の「"相手に合わせた"情報伝達・収集の意識・能力不足」とは直接関係が深いかもしれませんが、人によって、「確認不足」や「大局観・戦略の欠如/事前準備不足」や「視点変更の意識・能力不足」をコミュニケーション・スキルに含むかどうか、判断が分かれそうです。 こういった状態では、”自社に適した”人財育成・組織開発上の施策を講じることができません。

一方、研修参加者自身が選び出した「コミュニケーションを図る上で、実際に頻出している問題」のような情報(現場で仕事に携わる当事者が事実と認識している情報)を収集・分析・整理すれば、「具体的な判断や行動を選択する際の根拠となりうる情報」として、”自社に適した”人財育成・組織開発上の施策を講じるために活用することができるのではないでしょうか? …図表2というのは、フレームワーク質問力®」研修の事前提出課題を活用して分析・整理した事例ということになります。

この記事を読んでくださっているあなたが所属されている会社では、”自社に適した”人財育成・組織開発上の施策を講じていらっしゃりそうでしょうか? 例えば、「論理的コミュニケーション」は、図表2の大きな項目としては登場しません。頻出する現場の課題として「論理的思考力の不足」を挙げた人は、全体の約2%に過ぎず「その他」に分類されています。 「コミュニケーションの活性化」は、「業績向上のための原因」なのでしょうか? それとも「何か望ましい状態の結果」なのでしょうか? それ自体が目的なのでしょうか? それとも何かに役立つ手段なのでしょうか?…どうか、周囲に流されないでください! 自社にとって何が大切で有効なのか、よく考えてみる必要がありそうではないでしょうか?

「今年の研修のトレンド!」「(目新しいカタカナやアルファベット表記)研修」「大手企業も導入!」「流行の~」「話題の~」「(特定の条件が揃ってうまくいった)ベスト・プラクティス」とか言われるものを追いかけてばかりいるのではなく、「自社の課題を浮き彫りにして、適切な取り組みを行うこと」も重要ではないでしょうか?(※記事が長文になりすぎるのを避けるため、今号では、「タレント・マネジメント」のアプローチについては割愛させていただきます。)

競争力の源泉が『企業の学習能力』に移り変わる時代」になってきているとも言われる現代では、次から次に登場する流行の手法や新刊本を追いかけて振り回されるのではなく、「自分あるいは自社にとっての課題を適切に設定すること」や「組織学習の観点から研修を活用すること」の有効性について検討されてはいかがでしょうか?

組織学習の種類

図表3:組織学習の種類
[ 出典:ニューズレター第109号「学習を妨げる認識」や「知ったかぶり」を修正するプロセス?より再掲 ]

3種類のループ学習

図表4:3種類のループ学習
[ 出典:ニューズレター第109号「学習を妨げる認識」や「知ったかぶり」を修正するプロセス?より再掲 ]

さて今回は、「研修の継続的な改善を図る上では、定点観測の視点も大切ではないか?」、研修担当者の立場になってみれば「『○○と感じる』などという主観的・抽象的な情報を研修講師から伝えられても、次にどう動けばいいのかわからなくて困るだろうな」と思ったという話から始めて、「組織学習に向けた研修活用法:個人が採り上げる問題を分析→組織の課題を顕在化」といった内容について、私見を紹介して参りました。あなたはどんな印象をお持ちになり、何をお考えになるでしょうか? あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。

もし、記事中に登場していた、「『唯一絶対解』なんてない時代だから、『納得解』を共に創り上げていく」という方針の「フレームワーク質問力®」研修の導入や、貴組織に合った人財育成計画策定・実施のお手伝いを行う「人財育成コンサルティング」について、興味をお持ちになったようでしたら、下記リンク先情報をご確認の上、お氣軽にご相談ください。
法人向け研修  ● 人財育成コンサルティング

質問・支援型コミュニケーションが学べる、「合同会社5W1H流コーチング学習プログラム」(CLP)への編入あるいは貴組織での実施についてはこちらからご確認いただけます。(分割払いもあります)

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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