人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

状況判断は「複数の視点」で、状況対応は「○○」で!(第144号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

本日の時点で1万人以上の方にご覧いただけている、Facebookページ記事:メラビアン?;マインドセット比較「官僚主義 vs 起業家」では、「場面ごとの『定型会話』『定型フレーズ』を記憶するだけで対応しようとするのではなく、相手と自分の『フレーム』(物の見方、解釈の切り口)に氣づいて、目的達成や問題解決に向けて、思考とコミュニケーションを進めることが大切」であるという趣旨の内容について、事例を挙げていました。 「コミュニケーション相手との関係性や場を大切にしながらも核心を突く質問を繰り出し、目的達成や問題解決に向けて、スピーディーに仮説を立てる(想像力を発揮して構想する)」という、状況判断・状況対応に関心をお持ちの方も多そうですので、今回はこの辺りの話をニューズレターでもご紹介してみようと思います。 興味をお持ちの方々に目を通していただければ幸いです。

 

「状況判断力・状況対応力」向上のニーズ

2008年の世界金融危機、2012年後半から2013年前半にかけての欧州における政府債務危機、近年の新興国における景氣減速の動き…。世界的な金融緩和や各種政策対応が採られた結果、先進国間・新興国間でも景氣にバラツキが目立つようになってきたものの、世界経済全体としてみると、現在は世界経済の弱い回復が始まっているとの見方が濃厚という状況のようです。 こういった経済情勢の下、ビジネスの分野では、かつてのように「戦略、目標、短期的業績」によってのみ企業が評価される風潮に代わって、「プロセス、持続性、長期的業績」が高く評価される風潮が強まっていると言われています。 別の言い方をするならば、「変化の激しい時代こそ、一歩引いて長期的な視点で考えること、ブレないことが評価される」「事前に正解のわからない不確実な時代、事業環境変化の激しい時代だからこそ、『長期的な方針は堅持』しつつも、『迅速な状況判断や柔軟な状況対応が適切に行える』ことへの関心が高まっている」ということなのではないでしょうか。

今回はこの、「状況判断」や「状況対応」を中心に採り上げて考えていきたいと思います。

いろいろ話を展開していく上で、「状況」とはどんなものか?ということについて、まず触れておこうと思います。例えば、図表1をご覧ください。

コンテンツだけで価値は生み出せない!
図表1:第139号より
「コンテンツだけで価値は生み出せない!」 を再掲

「状況」というのは、基本的には「固定されたもの・精度高く予測できるもの」というよりは、図表1に登場するさまざまな要素とそれらの絡み合いによって大きく変化する「流動的なもの・不確定要素が大きいもの」であるものであると認識した方が安全であったり適切であったりする場合が多いのではないか、と私は考えています。今号ではそういった意識に基づいて私見を展開していくのだと予めご了承いただければ幸いです。

 

鳥の目・虫の目・魚の目 と 総合的な状況判断

最初は、「状況判断」について見ていきましょう。 一般に、「状況判断」というと、「観察力」「情報収集力」「分析力」について語られることが多いのですが、もう1つ別の事柄についても意識を向けていただくのが大切ではないかと思っています。 図表2をご覧ください。くどくど説明する必要はないと思います(笑)。

どのフレーム(切り口)から状況判断を行うのか?
図表2:どのフレーム(切り口)から状況判断を行うのか?

続けて、関連する図表3、4をご覧ください。

鳥の目、虫の目、魚の目
図表3:鳥の目、虫の目、魚の目

「対症療法の繰り返し」で事態を悪化させないためには「問題設定」が重要
図表4:第143号より  「対症療法の繰り返し」で事態を悪化させないためには「問題設定」が重要 を再掲

フレームワーク質問力の研修やエグゼクティブ・コーチングを実施させていただくと、多くの方が、普段のコミュニケーションや問題解決のプロセスを、「たった1つの視点からの解釈だけに基づいて行っているために、望ましい成果が得られていなかった」ことに氣づかれ、驚かれます。 適切な「状況判断」を行うためには、図表3でお示ししたような「鳥の目、虫の目、魚の目」などを活用して、物事を多角的に捉える(他にも例えば、「一局面」だけに囚われず「大局」を見るなど)というプロセスを経た上で、現状認識することが、(図表2、図表4の事例を見ておわかりのように)非常に大切です。

また、目の前の出来事を多角的に捉える(複数の視点・切り口から捉える)だけでは不十分な場合があることにも留意する必要があります。 それは、「目の前の事象」(個々の出来事)に加えて「事象の背景にある、目に見えないもの」(複数の出来事に共通するパターンや関連性など)について把握するということです。 …事例としては、第127号「事例概説:英語を話し、マラソンを完走し、あの彼と親密になりたい」や第116号「対症療法に飛びつかず、総合的な『診断』を重視して結果を出す!」などをご参照ください。

相手の話をすぐに「わかったつもり」にならず、安易に結論に飛びつかず、目的達成や問題解決に向けて適切な「状況判断」を行おうとするのであれば、ここに挙げたように、「観察力」「情報収集力」「分析力」を発揮することに加え、「複数視点からの状況把握」「事象の背景にある『隠れた構造』や『事象の時間経過に伴う変化』に配慮した状況把握」を踏まえた「分析」が必要となってきます。

前回配信した第143号:「図解フィードバック」と「話し言葉という線形情報」では、「話し言葉という線形情報だけを用いて(電話だけを用いたコーチングで)、課題の再設定を適切に行えますか?」といった話について詳しく書いていました。 今回の話を踏まえると、「『適切な状況判断』に必要な事柄を、すべて電話だけで行うのは、かなり大変そうだ」と思うのは私だけでしょうか? あなたはどのようにお考えになりますか?

 

目的・意図・前提の確認、アブダクション と 状況対応

冒頭では、『長期的な方針は堅持』しつつも、『迅速な状況判断や柔軟な状況対応が適切に行える』ことへの関心が高まっていると書いていました。 前段の「状況判断」に続けて、今度は、「状況対応」について見ていきましょう。 「柔軟な状況対応」のイメージについては、図表5の「変革型」のイラストを見ていただくのが良いように思います。

状況判断」の際には「わかったつもりにならない!安易な結論に飛びつかない!」ということが大切でしたが、「状況対応」の際には、「特定の手段に固執しない!」ことが大切になってきます。 特定の「手段」に固執せず、手段を柔軟に変更できるようになるには、明確な「目的」を把握できていることが大前提となります。 「私(たち)は、本当にA地点からB地点に向かうということでいいのか?」などと、「目的・意図・前提の確認」を丁寧に行っておくこと(しばしば言語化されずに隠れている相手のフレームの存在に氣づき、互いのフレームのズレを調整し、納得できるフレームを共有して、取り組み課題に対する共通感覚を醸成すること)が、柔軟な状況対応を可能にする準備段階として重要となります。

改善型と変革型
図表5:第143号より 「改善型と変革型」を再掲

これに関連して補足すると、マネジメント分野では、マギル大学経営大学院のクレグホーン寄付講座教授およびINSEADの客員教授ヘンリー・ミンツバーグさんが、「戦略は、さまざまな対話を通じてその姿を変えながら『創発的』に形づくられていく」といった趣旨の発言をされていることが知られています。 …経営/事業「目的」達成のための、経営/事業「戦略」(あるいはそれらの下位構造となる各種「戦術」)という「手段」は、柔軟に変更されつつ形づくられていくという話ではないでしょうか。

さて、「目的・意図・前提の確認」に続いて「状況対応」で大切になってくるのは、(目的達成や問題解決の)「可能性を見い出す力」(発想力;アブダクション(※1);フレーム・チェンジ;ラテラル・シンキング)だと考えています。自分(たち)の思い込み(認知バイアス、自ら設けた制約条件など)から脱却して、新たな可能性を見い出すには、「客観的なモニタリング」や「図解」などの活用が有効です。

※1  アブダクション
(abduction; 仮説的推論、仮説形成; 発想推論; リトロダクション:retroduction; 遡及的推論などとも呼ばれる)
与えられた命題が正しいか誤りかを決定することを目的とし、宣言的知識を導き出す推論 [ ロジカル・シンキングとして紹介される、「演繹的推論」(deduction)と「帰納的推論」(induction)…着実な論理展開に適した推論] と異なり、(知覚対象の観察や実験を含む)経験を説明する仮説を形成する推論アブダクションと呼びます。…「フレームワーク質問力」で軽く紹介し、「コンフリクト・マネジメント入門」で、「前提からの脱却」や「仮説と検証」に適した推論として、より詳しくご紹介しています。

第143号では、「図解フィードバック」を行う利点として、「1つ1つの出来事や言動をバラバラに捉えて対処法を検討するのとは異なり、話し手と聞き手が協働して『パターン』や『つながり』に意識を向け、状況や課題を深く理解するようになる→『システム思考』や『仮説思考』の誘発」「自分の認知バイアスに氣づき、状況や課題についての解釈を変更する可能性(イノベーションの種)が生まれる」といった項目を挙げていたことを思い出してみてください。

前段の「状況判断」でも「図解」の有効性について触れていましたが、「状況対応」でも「新たな可能性を見い出す」際の思考あるいは対話において、「図解」が新たな「発想」を刺激し、優れた「洞察」をもたらしやすくするために有効であると感じています。 さらに、「状況判断」の際の「わかったつもりにならない!」という切り口、「状況対応」の際の「思い込みから脱却する!」という切り口では、共に、(客観的モニタリングなど)「客観視」(メタ認知)も重要であると感じていることをお伝えしたいと思います。

ここまでの話にお付き合いくださったあなたは、「状況判断力・状況対応力を向上させる」上で「図解」(言語情報を視覚情報に変換した上での活用)「客観視」(他者・異なる視点の活用)が果たす役割について、どんなことを考え始められたでしょうか?

 

「図解を用いた対話と内省」(経験学習)を通して、実践的な知恵を高めていく

「状況判断」や「状況対応」を中心に採り上げてきた今号の終わりとして、今度は、状況判断力や状況対応力といった「実践的な知恵」を身につけるための方法について考えていきましょう。

以前のニューズレターにも書いたように、漫然と、さまざまな「体験」を重ねるだけでは、「視座を高め、視野を広げ、視点を適切に選ぶ力」や「知恵」を育むことはできません(※2)。 「『内省』によって、『体験』を『経験』に昇華させる」必要があります。 また組織としては、「『発見的過程』を自力で進めることができる人財を育成する」(図表6)のに役立てるためにも、個人的な体験を「言語化、概念化」することによって、組織で「一般化→共有」させる必要があります。

※2 第120号 経験学習:「体験」を「経験」に変える「概念化」

「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力®」の対応関係
図表6: 第128号より 「知識のファネル」(The Knowledge Funnel)と「フレームワーク質問力®」の対応関係 を再掲

インテル社の社長・会長・CEOを務め、IEEE栄誉賞の受賞者としても有名なアンドリュー・グローヴさんは「変化のシグナルを読むには、深い議論しかない」とおっしゃっています。 これまでご紹介してきた話を踏まえて、グローヴさんの言葉を解釈するならば、「普段の『観察』と継続的・定期的な『対話』によって、身近なところで既に発生している『兆候』を発見し、それらを世の中の大きな『潮流』に関連づけながら、自分(たち)が直面している状況の変化について理解することが大切」となるように思うのですが、あなたはどう思われるでしょうか。

体験を経験に昇華させたり、自分の慣れ親しんだ言動のパターンについて把握したりする「内省の機会」、「図解」や「客観視」(他者・異なる視点の活用)を活用して「総合的な状況判断を行う機会」、さまざまな「状況判断」や「状況対応」を通して、「観察・分析・判断・行動・内省」などを重ね、「自己の成長を促す(『自己変革能力』を高める)機会」「市場競争力としての『学習する力』や『自分(たち)の市場価値』を高める機会」(※3)を確保するような「経験学習を促進する仕組み」を、あなたは日常生活、組織としての活動に取り入れていらっしゃるでしょうか?

※3 第136号 昨日まで「専門家」、今日から「素人」の時代に「自分の市場価値」を高める!

コンピテンシーに関する4つの切り口

コンピテンシーの評価は、状況や判断基準次第
② 求められるコンピテンシーは変化する
③ 個人としてより、集団としてのコンピテンシーが重視される傾向
④ 業績達成に有用なコンピテンシーは、予め一通りに決定できない

図表7: 第134号より
コンピテンシーに関する4つの切り口」を再掲

例えば、「母国語のように英語を自在に操れる」ことには、確かに「価値」があることだと思いますが、英語が母国語・共通言語の世界に飛び込めば、「母国語のように英語を自在に操れる」こと自体には何の「付加価値」もありません。 つまり、”付加” 価値を生むのは、「その人、そのチーム、その組織にしかできない貢献」なのです。 このように考えると、「付加価値の創出」の1つの大切な側面として「他者とは異なる、新たな考え方(フレーム、視点)の提供」が挙げられ、他者とは異なる「新しい考え方」を身につけるには「コミュニケーション」(特に「図解を用いた対話と内省」)が重要な役割を果たすように感じています。

そして、新しい考え方を身につけることは、自分を成長させ、新しい自分に生まれ変わること(自己変革)であり、付加価値創出の道を切り拓いていくことに繋がるのだと、私は考えています。 (システム思考の「ストック&フロー」という考え方に倣って)何かの体験を通して心を動かされたことについて多角的に振り返ること、関心を持つ対象について時間をかけて熟考することを倦まず弛まず実践していくことで、思考が蓄積されて(ストックが増えて)熟成し、あるとき、何かのきっかけで(臨界値を超えるなどして)その人独自の付加価値を創出する(フローが生まれる)のだと、さまざまな経験を通じて信じるようになりました。 すなわち、私は、主体的・継続的に「図解を用いた対話と内省」に取り組むことで、自己変革や付加価値創出への道が開けるという立場を選び、そういった方針に基づいて、各種サービスやコンテンツを提供差し上げているということになります。 今回の記事に目を通していただき、どこかしら共感を覚えるところがあった方々・関心をお持ちいただけた方々と何かの機会にお目にかかれることを楽しみにしたいと思います。

今号の内容に興味をお持ちいただけた方は、是非、実践的な知恵(状況判断力、状況対応力)を高める一助として、「図解を用いた対話と内省」を強く奨励している「フレームワーク質問力」(法人向け)(個人向け)や「合同会社5W1H流コーチング」を学習されること、また、そうした考えに基づいて提供させていただいているエグゼクティブ・コーチングやパーソナルコーチング の活用を検討くださいませ。

さて今回は、状況判断力や状況対応力を向上させることに関心をお持ちの方に向けてということで、さまざまな図表をお示ししながら、「図解を用いた対話と内省」の重要性についてお伝えし、これが「自己変革力の向上や付加価値創出への道を開く」ことに繋がるという、私自身の経験を踏まえた考え方をご紹介して参りました。 あなたはどんな印象をお持ちになり、何をお考えになるでしょうか? あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

【 お忘れなく! 】
合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」【早期割引】期限が9月16日(月・祝) までと近づいてきています。今回の話に興味をお持ちの方々は、是非、こちらから、詳細情報を確認なさってみてください♪

P.S.1
号外でお伝えしていた、「フレームワーク質問力」研修のアンケート結果は、もうご覧いただけましたか?

弊社は小さな会社ですが、大学生や主婦・中小企業・大学の方々ばかりでなく、ありがたいことに、複数のフォーチュン・グローバル500企業様ともお取引きさせていただいております。今回は、医薬品の研究・開発・製造・販売を手掛け、製薬・バイオテクノロジー関連で世界有数の実績を誇る某外資系企業で実施した「フレームワーク質問力」研修のアンケート結果について、公開の許可を頂戴しましたので、ニューズレターをご購読のみなさまにもシェアさせていただきます。

良い面も悪い面もそのままの形で掲載しておりますので、「フレームワーク質問力」研修の導入に興味をお持ちの企業の方(大企業の人財育成担当のみなさま、中小企業の経営者のみなさまなど)は、下記リンク先より、じっくりと内容をご確認くださいませ。

●アンケート結果は、こちらからご覧いただけます。

【補足】「フレームワーク質問力」研修の実施につきましては、業種・業態・企業規模・受講者の階層・地域などに関わらず、ご相談に応じております。研修実施の際には、組織や受講者のニーズに合わせてテキストの例文を変えるなど、カスタマイズさせていただいております。ご興味をお持ちの方は、こちらから、お氣軽にご相談くださいませ。

P.S.2

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