人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

システム思考と動的な質問力; コンテンツだけマネても役に立たない理由(第139号)

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こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

今回は、先日実施した、合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」(CLP)DAY10(システム思考の基礎と図解)で出ていた話に触れつつ、「システム」という切り口から「質問力=真実・解決策を探求する能力」について、現在の私見をご紹介していこうと思います。ご興味をお持ちの方は、どうぞ読み進めてください♪

※1 ここで言っている「システム思考」とは、「さまざまな要素の複雑なつながりを「システム」として捉え、構造の全体像を俯瞰し、その複雑な挙動を理解して、システムそのものの改善を図るものの見方」(…「システム思考」ジョン・D・スターマン/東洋経済新報社)を指しています。システム思考には、多くの学派がありますが、CLPでは、システム思考のごくごく初歩的な内容についてだけ扱っています。 [システム思考の諸学派に関心をお持ちの方は、Richardson, G. (1991) “Feedback Thought in Social Science and Systems Theory”, University of Pennsylvania Press; Lane, D. (1994) “With a little help from our friends: How system dynamics and “soft” OR can learn from each other, System Dynamics Review 10(2-3), 101-134”などでご確認ください。]

コーチングへのシステム思考の活用

システム思考は、コーチングの対象として取り上げる事柄およびクライアント(コーチングを受ける人や組織)のメンタル・モデル(※2)の「概念化」「図解」(…さまざまな要素の因果関係・相関関係の可視化;遅延時間発生箇所の明確化など)を推進するため、プロセスの見直しと変更、レバレッジ・ポイントの発見などに役立ちます。

※2 メンタル・モデル(mental model)
CLPで扱う「システム思考」の文脈では、メンタル・モデルは、「システムにどのような因果関係のつながり構造があるか、システムの境界をどこに設定するか(どの変数をモデルに含み、どの変数を含まないか)、想定する時間域はどのくらいかについての考え方」(…コーチングで扱う対象をどのようなフレームで捉え、考えているのか)を指すものとしています。[ 出典:合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」テキストより簡略化して転載 ]

コーチングへのシステム思考の活用

図表1:コーチングへのシステム思考の活用

ここでは、「システム思考に基づく図解」のイメージを把握していただくために、「クチコミ効果」についての「ループ図」と「ストック&フロー図」の例を挙げておきます(詳細説明は割愛いたします)。

クチコミ効果

図表2:クチコミ効果
 [ 出典:第7期MOS第10回フォローアップ資料を一部改変 ]

弊社流コーチングの現場では、上記のような図解を基に、例えば「顧客からの称賛を増やすにはどうすればいいか?」などについて、個別具体的な対話がなされる場合があります。(丸や矢印がいくつかあるだけの簡単な図や、情報を整理した表で済ませるなど、さまざまな場合があり、必ずしも毎回キッチリとした図解をする必要はないと考えています。)そしてもし、「称賛発生率」に流入してくる矢印には「満足度」しかないが、「顧客からの称賛を吸い上げやすくする仕組みやツール」などについても考慮すべきではないか?などといった話が発生すれば、さらに、図解をより適切なものに書き換えることで、クライアントの目的達成・問題解決の支援(真実・解決策の探求)を行います。

このように、予定調和の解に落とし込もうとする「指導」などとは異なり、弊社流コーチングにおける対話では、目指す地点あるいは方向性は一貫して保ちつつも、クライアントとコーチのやり取り(相互作用、協働)次第でその内容がダイナミックに変化・発展します。また、こうでなければ、クライアントだけでは思いつかなかった「従来の延長線上にない解」を出すのは難しいのではないかと考えています。

(これまでのニューズレターでお伝えしてきているように、弊社流コーチングは、取り扱う対象や専門分野に依存せず、普遍的に適用できる「クリティカル・シンキング」と「対人スキル」を同時に学べる内容となっています。)

 

システムを意識して、コミュニケーションについて考える

フレームワーク質問力®」セミナーや研修では、「コミュニケーションは、『言葉』のやりとりではなく、『意味』のやりとりである」(「お互いに意味を共有しているつもりで、それぞれ別の解釈を採用している」という状況も多い)という内容について掘り下げて解説を加えています。詳細解説は、セミナー/研修に譲るとして、上記の考え方を概説した図表を下記にお示しします。

コンテンツだけで価値は生み出せない

図表3:コンテンツだけで価値は生み出せない!

あなたは、以前読んだ本を時間が経ってから読み返して、昔と違う印象を持ったという経験はないでしょうか?以前とは違う箇所が心に響いたとか、昔はよくわからなかったところが今になったらよくわかるとか…。「本」という内容が固定化された「コンテンツ」自体は一緒でも、本を読む自分がさまざまな体験を経て変化・成長することによって、同じ本の「読書体験」から異なるモノを受け取るという経験をお持ちの方、多いのではないでしょうか。

あるいは、自分自身の心身状態相手との関係性によって、同じ言葉でも、疑ってかかったり、素直に受け取れたりすることも、あるのではないでしょうか?

ニューズレターでは解説を割愛しますが、図表3は、「コミュニケーションとは、本人・相手・コンテンツ・体験・場(プラットフォーム)・人間関係・コンテクストなどといった要素のつながり、および、それらの複雑な挙動によって起こる事象である」という見方を示しています。

すなわち、コミュニケーションの改善を図るには、「他の人や組織でうまく機能したコンテンツをそのままマネすればいいというわけではない」ことを示しています。(例:ある営業パーソンが、特定のフレーズで新規顧客の大量獲得に成功したと聞くと、それをマネて「営業場面では、このフレーズを用いて、こういうトークをしろ!」といった教育が行われる場合があります。しかし、例えば、社交的な性格の持ち主が使ってうまくいったトークを、内氣な人物が頑張ってマネしても、成果が出ないどころか、逆効果をもたらすことがあります。「コンテンツ」(特定の質問フレーズなど)だけを抜き出して、丸暗記して使ってもその効果にバラつきが出るという事態の背景には、「コミュニケーションを、システムの視点から理解していない」「コミュニケーションでは、相手や状況によってダイナミックに変化させることが大切だと、本当の意味で理解していない」といった理由があります。 また、他社の「ベスト・プラクティス」をそのままマネしてもなかなかうまくいかないというのも、システムの視点から考えれば、不思議なことではありません。)

コンテンツだけマネても、コミュニケーションの改善には役に立たない」(真実・解決策の探求を適切に行うには、質問フレーズをたくさん知っていればいいというものではない)という理由、ご理解いただけましたでしょうか?

数学の公式や定理といった「コンテンツ」を暗記していても、練習問題・応用問題が解けないのでは、数学を学習する意味がありません。同様に、コミュニケーションでは、状況(各種条件、使えるリソースほか)に応じて、「コンテンツを適切に運用する能力」を身につけることが大切であるという考え方に基づいて設計しているのが、「フレームワーク質問力®」であり、その内容を基礎に置いて創り上げているのが弊社提供の各種コンテンツ・サービス(合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」となっています。

(質問フレーズの暗記など、硬直化したコンテンツの機械的活用を奨励する)「静的な質問力」ではなく、システム思考の視点に立ったコミュニケーションの理解に基づき、(状況把握や相手の状態観察、精聴などに基づいて質問を選び組み立てるアプローチを奨励する)「動的な質問力」を身につけることが大切だという主張、あなたはどのようにお感じになるでしょうか?

※3 これまで、いくつかの大手企業の人財育成担当者が見えられ、弊社「質問力」の「コンテンツ」に興味をお持ちいただけたことがあります。しかし、本号でお伝えしているような内容を体験されたこともあってか、「Eラーニング向けのコンテンツ化」は容易ではないと判断されたようで、この方面の話はそのままとなっています。

※4 「研修」では、「知識」より「知恵」に焦点を当てよ!
本号の内容に関連の深い記事を、弊社SNSの2013年2月25日に投稿していました。
Google+ページ 】 http://gplus.to/5W1H/
Facebookページ 】 http://www.facebook.com/5W1H.LLC
興味をお持ちの方は、本号と併せてご覧ください。

さて今回は、先日実施した、合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」(CLP)DAY10(システム思考の基礎と図解)で出ていた話に触れつつ、「システム」という切り口から「質問力=真実・解決策を探求する能力」について、現在の私見をご紹介して参りました。 あなたはどんな印象をお持ちになり、何をお考えになるでしょうか? あなたの「QOLの向上」にとって、何か少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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