人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

上司によるコーチング?で困っています…。(第131号)

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(「号外」で年始のご挨拶を差し上げておりましたので、今回は)寒中見舞い申し上げます、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

本日、IT系の会社で部長を務めていらっしゃるYさんが、弊社流コーチングを体験してみたいと「スナップショット・セッション」をご利用になり、「上司によるコーチング?で困っています…。」というテーマを扱いました。「新春アンケート」の回答の中には、「事例の紹介」というご要望もありましたので、今回は、Yさん本人のご承諾を得て、Yさんのセッション内容の一部をご紹介しようと思います。(Yさん、ご承諾ありがとうございました!)

 

個別面談をしてくださるのはありがたいのだけど…

背景として、Yさん自身はコーチングの学習や利用の経験はなく、Yさんの上司に当たる執行役員のTさんは、所属会社の契約先のコーチング・スクールでコーチングを学ばれ、コーチを名乗る資格をお持ちとのことでした。 そして、上司のTさんは、部下を育成したいという思いが旺盛で、定期的に個別面談の機会を設けてくださるのだそうです。

詳細は省略しますが、「Yさんは、上司のTさんから次のような質問をされて随分戸惑った」そうです。そこで、「社内に相談できる人もいないし、利害関係のない社外のコーチとなら、自分の考えを整理できそうか確認したい」と考えられ、スナップショット・セッションの利用を思いつかれたということでした。

Q1: 2013年のYさんの部署の目標は達成できると思いますか?
Q2: 達成できると思えるようになるには、どうすればいいですか?

ちなみにYさんは、Q1については「難しいと思います」、Q2については「(Yさんの)部下への指示をこれまで以上に明確にすること、定例会議で進捗状況を把握し適切なフォローアップを行うことで対応しようと思います」とお答えになったそうですが、心の中では「しかし、こんな一般的な抽象論だけでは『達成できる!』と思えるまでには至っていない。部下より先に自分が『達成できる!』と思えるようになるには、どうしたらいいのだろう?」と悩んでいらっしゃるということでした。

さぁ、あなたがYさんからこういった話をうかがったとしたら、どういった切り口から話を進めて行かれるでしょうか? 有効なアプローチは、1つだけではないと思います。 次に読み進める前に、是非、「30秒でも良いので」考えてみてください。

 

合同会社5W1H流コーチング、フレームワーク質問力では?

ここでは、私が実際にスナップショット・セッションで、どのように話を進めて行ったのかについて、「Yさんの現状」(Yさんが認識している状況)について把握する段階の話の一部を取り上げてご紹介します。

Q1: 2013年のYさんの部署の目標は達成できると思いますか?
Q2: 達成できると思えるようになるには、どうすればいいですか?

Q1は、「設定された目標は適切である」という前提の下で、「関係者・関係部署・キーパーソンなどの同意が得られていない段階」でなされるだろう質問であり、この段階では、上司のTさんの質問の「意図」は不明ですね。 ただ、「関係者の同意が得られていない」とすれば、「『設定された目標が不適切だ』という認識が関係者の間にある」という推測が成り立ちそうです。こういった推測について、Yさんはどう思われますか?

「上記の推測が適切だと思う」という趣旨のYさんの発言(承認・同意)を得た後、私は、

修正Q1: 2013年のYさんの部署の「目標」は、どういった「目的」を達成するために有効あるいは必須だと考えられたのでしょうか?

などと「目標設定の背景」を確認したり、「目標設定プロセスを進める際に、関係者をどの程度巻き込んだのか」について尋ねたりしました。(そして、それらは、Yさん自身が上司のTさんに尋ねて構わない質問だったことをお伝えしました。)

従来の日本の学校教育では、「与えられた問題」自体には間違いはなく「いかに効率的に正解にたどり着くか」ということばかりを重視してきていますが、「課題設定能力を育む」ことが大切だと考える弊社「コーチング学習プログラム」では、「投げかけられた質問あるいは質問者が、常に正しいと思わないでください。その質問が適切かどうか(考えることが適切な対象かどうか;適切な「What」かどうか)を確認することが大事です。」とお伝えしています。

※参考記事
•    第126号:「正解がない」のではなく「適切な問いがない」? 鉄道と四輪駆動車
•    第109号:「学習を妨げる認識」や「知ったかぶり」を修正するプロセス?

次のQ2は、「自分が、達成できると思えることであれば、達成できる(思えなければ、達成できない)」という前提を相手の意識に刷り込む質問で、相手の意識の焦点を「どうすればいいか(適切な「How」探し)」に向かわせます。

このような質問で「自分が、できると思えることにだけ取り組む」といった姿勢を助長するのでは、「安心領域」から抜け出して「新たな領域に挑戦する」ような人は育ちませんし、異業種や競合他社と結びついた形のプロジェクトを発案し実行に移すような人も育ちません

同様に、すぐに「ほんの小さなことでもいいので、今すぐできることは?」などと尋ねるのが有効なのは「セラピーやカウンセリング」が適切なステージの人(や、本質的問題解決に向かわず「対症療法」を求める人)であることにも注意してください。こういったアプローチは、「心理学的な健全さ」を備えたステージの人向けの「コーチング」とは異なるのだという理解が広まることを願っています。(…コーチングを学ぶ団体選びをされている方であれば、「御社で提供されているコーチングが基盤にしていらっしゃるのは、どんな心理学ですか?」などとお尋ねになれば、「病理学的心理学に分類される心理学に基礎を置くものなのか、自己実現心理学やポジティブ心理学などのようにコーチングに適した心理学を基盤とするものなのか」の見極めもつけやすくなるかと思います。ご参考まで。)

さて、こういった視点に配慮して、私はQ2の代わりに、

修正Q2:その目標を達成するために、あらゆるリソース(資金、人脈、技術、時間、知識、経験、スキルなど)を用いることができるとすれば、何種類の手段を思いつきますか? その中からどれか1つを選ぶとすれば、どういった基準で、どれを選びますか?

などといった形の質問をされても、やはりTさんとの面談時と同じように戸惑われるでしょうか?と、Yさんにお尋ねしました。

するとYさんからは、「随分印象が違います。どの人・組織と手を組めば、その目標をできるようになるかについて具体的に考えることになりますし、こういった質問であれば自分の部下のアイディアも引き出しやすくなりそうです。」といった趣旨のコメントが返ってきました。

そして…もちろん、「修正Q1」を用いて、上司のTさんとの間で「目的」や「目標」に関する確認を重ね、納得・同意できる「目的」の実現に適切だと思える「目標」を探求・設定した上であれば、より望ましい効果が期待できるのではないでしょうか?…などといった話をYさんに差し上げていました。

すると、Yさんは、「コーチと言っても、やり方が全然違うんですね。もし、こういったやり取りのできる考え方やコミュニケーションが身につけば、上司との会話の密度も高くなりますし、部下のパフォーマンスを高めるのにも役立ちそうだと感じます。是非、自分がコーチングを学ぶことや、コーチングを活用することを検討したいと思います。」とおっしゃって、セッションを終了いたしました。

【 一般的な「コーチ」の資格を持つという、上司Tさんの質問 】

Q1:2013年のYさんの部署の目標は達成できると思いますか?

Q2:達成できると思えるようになるには、どうすればいいですか?
      ↓
合同会社5W1H流コーチング、
フレームワーク質問力を踏まえた質問の例 】

修正Q1:2013年のYさんの部署の「目標」は、どういった「目的」を達成するために有効あるいは必須だと考えられたのでしょうか?

修正Q2:その目標を達成するために、あらゆるリソース(資金、人脈、技術、時間、知識、経験、スキルなど)を用いることができるとすれば、何種類の手段を思いつきますか? その中からどれか1つを選ぶとすれば、どういった基準で、どれを選びますか?

今回は、「事例の紹介」というご要望にお応えする形で、「上司によるコーチング?で困っています…。」というテーマを扱ったセッションのさわりをご紹介いたしました。あなたはどんな印象をお持ちになったでしょうか?

合同会社5W1H流コーチングとは、「相手の氣分を良くして終わりでなく、実際に問題を解決するコーチング」です。

  •   「話をただひたすら聴くだけでは、話し手の氣分がわずかな時間の間良くなるだけで、何も建設的に物事が進まない」と感じ、実際の目的達成・問題解決・意思決定に役立つコーチングが学びたいという方
  •  「目的」や「意図」を確認せず、慌てて「行動」や「環境」に表層的な変化を起こそうとするコーチングを学んで、物足りなさや不満を抱えている方
  •  知識の獲得に止まらず、技量の向上に向けた投資が重要だと考える方

もしあなたが、上記に該当するような方であれば、是非、1月19日(土)にスタートする、合同会社5W1H流 「コーチング学習プログラム」でご一緒できればと思っています。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

P.S.
昨年末に弊社流「質問力」について取材をしていただきました。そこで話した内容の一部が、2013年3月号(2013年1月25日発売)の「BIG tomorrow」という雑誌に出るらしいので、興味をお持ちの方はそちらの記事もご参照いただければ幸いです。

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