人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「組織の問題」=「コミュニケーション不全」!?(第121号)

follow us in feedly

Send to Kindle

こんにちは、合同会社5W1Hの高野潤一郎です。

先日配信した「号外」では、リマインド・シリーズのモニター受講者募集のご案内を差し上げていました。

一部再掲


■マネジャーの「徹底的コミュニケーション」学習プログラム:「リマインド」シリーズ
~急がば回れ!組織として、「経験学習の場」を整備する~

忙しいマネジャーの中には、「知識の一括伝授」よりも「少量学習→相互啓発→現場実践→振り返り」の繰り返しで学ぶ研修スタイルの方が適している方も多いのではないか?という考えに基づいて構成したのが、さまざまな内容の「徹底的コミュニケーション」について学ぶプログラム、「リマインド」シリーズです。

やりっ放し→忘却」といった研修投資の無駄を避けるため、「リマインド・シリーズでは、(曜日と時間帯を決めるなど)定期的・継続的に学ぶ仕組み」を採用し、研修以外の日常業務においてさまざまな「徹底的コミュニケーション」の実践を意識し続けること、そして、「現場での(1週間の)実践経験を踏まえた振り返り」によって「受講者どうしの相互啓発」と「地に足の着いた経験学習」を促すことを重視しています。

詳細: http://www.5w1h.co.jp/training/remind.html

(お得な「モニター受講」の申し込み締め切りは、2012年8月31日(金)です。)


このように、リマインド・シリーズでは、第120号「経験学習:『体験』を『経験』に変える『概念化』」の内容を踏まえて、「組織が抱える問題の解決に向けた、コミュニケーションに関する学習プログラム」を提案しています。

今回は、このリマインド・シリーズについて、ウェブサイトに書いていなかった側面から、少し補足しておこうと思います。

 

「組織の問題」をどう捉えているか?

本稿では、あくまでも私の限られた経験(企業研修中に扱う、現場で実際に起きている問題の事例;エグゼクティブ向けのコーチングで扱った事例;企業に出向いて行ったファシリテーションで扱った事例など)に基づいて、「組織の問題」をどう捉えているのかについて、現在の私が考えているところをざっくりとご紹介できればと思います。

問題発見 ← 問題症状の把握

組織のヴィジョン・ミッション・価値観・ウェイ・戦略・事業計画の実現を妨げる問題症状には、本当にさまざまなものがありますが、繰り返し登場する問題症状として、例えば次のようなものが挙げられます。

  • 総論賛成、各論反対」「同床異夢」の人々が、「対症療法のつぎはぎ施策」を繰り返している
  • 安易な理解で「現場主義」という言葉を振りかざし、自分の仕事にしか関心を持たない…「全体最適」よりも「部分最適」を優先する仕事の姿勢(システム思考の欠如);ムダがないことは良いことだと「効率」(生産性や能率)ばかりを追求し、「イノベーション」を生み出す種となる試みを排除する姿勢;明確な意図や計画なくOJT (On the Job Training) に頼る姿勢
  • 個々人の能力(の平均値)は高いけれど、組織全体としての業績は低い…メンバーどうしあるいは部門・部署どうしの「つながり」を生み出し、仕事の「意義」を確認し「意欲」を持続させ、「化学反応」「相乗効果」の発現が見込める「仕組み」(場、プロセスなど)の欠如

など

問題設定 ← 問題構造の把握

フレームワーク質問力® のプロセスに従い、「問題発見」後、どのように「問題設定」を行なっていったかという詳細は省きますが、上記のような問題症状を生み出す背景、すなわち、組織のヴィジョン・ミッション・価値観・ウェイ・戦略・事業計画の実現を妨げているさまざまな事情・障害・心理抵抗の背景には、主に次の3つがありそうだと考えています。

A) 目的・目標達成にとって、不適切な前提(暗黙の条件、業界の常識など)を採用していること…確認不足、目的・目標ごとの前提の調整不足(不適切な問題設定

B) ”目的・目標達成に有用な” コミュニケーションの「量」が不足していること…「話の量自体は多いけれど、組織の目標達成に関係の深い話の占める割合が少ない」「関係者間で認識のズレがある」など

C) ”目的・目標達成に有用な” コミュニケーションの「質」が不足していること…「『相手の人格』と『その人の意見』を分けて考えるのに慣れておらず、率直に、本音で語らない」「価値ある少数意見を吟味せず、安易に多数決で物事を決める」など

A)は、「その目的・目標は組織にとって本当に有用か、同じ概念・表現を同じ意味で共有できているか、現状認識は適切か、従来のやり方にとらわれずに考えてもやはりその方法が効果的か」など、「目的・目標が持つ意味、重要な前提や作業仮説の確認」を行わずに、行き当たりばったりの「作業」だけをこなすことによって、望ましくない結果を生じてしまったり、水面下で徐々に問題を悪化させてしまったり、大幅なやり直しが生じたり、仕事への意欲が持続しなかったりするなどして、組織が持つ力を効果的に発揮することが叶わないことを指しています。

例:HRM(Human Resource Management:人的資源管理)やHCM(Human Capital Management:人的資本マネジメント)(※1)といった言葉で表現される「人財マネジメント」分野の「前提」について採り上げてみましょう。

ある組織では、「人財マネジメント=人事・労務分野における、制度の管理」であると考え、また別の組織では、「人財マネジメント=人財を経営戦略上の重要な資源と捉え、ジェネラル・マネジャー(経営の専門職)の視点から行う、人財育成や組織開発など」であると考えていたりします。では、こういった前提の差が生む、企業研修についての判断の違いには、どんなものがあるのでしょうか?

大まかな傾向としては、「人財マネジメント=人事・労務分野の制度管理」であると考える組織では、短期間における経営の効率(ムダの排除)を優先して考え、例えば「不況だから、半期に1度の研修を年に1度に変更しよう/今年は取りやめにしよう」などといった判断が採択されやすくなります。一方、「人財マネジメント=ジェネラル・マネジャーの視点から行う、人財育成や組織開発など」であると考える組織では、「ウチの会社は、○○をいう価値を生み出す組織だ。世の中の動向と弊社の強みを検討した結果、今後△年は□□事業を主軸に据えることにした。その方針を踏まえて、◎年後の□□事業部には、▽が強い社員が▽▽人、◇を任せられる社員が◇◇人必要となる見込みだ。この組織編成が可能になるように、今から人財の獲得・育成に取り組んでいこう!」などという方針の下、「経営戦略に適っている限り、不況であっても、決して研修は削らない。戦略の実行を可能にする上で、現段階における研修への投資は不可欠であり、研修には、『効率性』ではなく『効果性』を期待する。」などといった判断が採択されやすくなります。

あなたは、こうした「前提の差が生む、企業研修についての判断の違い」について、どのように感じられるでしょうか?

※1 
組織において人財関連の話題が出ると、採用・昇進・報酬・教育・退職などの「制度」の管理といったハード面に軸足を置くことの多いHRM(Human Resource Management:人的資源管理)という言葉と、モチベーション・リーダーシップ・コミュニケーション・コンフリクト・組織文化など「人と組織の行動」マネジメントといったソフト面に軸足を置くことの多いHCM(Human Capital Management:人的資本マネジメント)といった言葉が登場します。(…ここでは「わかりやすさ」を優先し、あえて違いを強調して、HRMとHCMを区別しています。)HRMとHCMを意識して区別する組織はまだ少なく、どちらも、組織のヴィジョンや経営目標の達成に向けて、人財の獲得・活用・育成・管理などを中長期的視点から戦略的に行っていこうとする考え方を指し、ひっくるめて、「人財マネジメント」などと呼ばれることが多い状況です。

B)は、「コミュニケーションが増えれば、組織が活性化する」という思い込みについて述べています。確かに、適度の「人間関係を円滑にするような話」は重要な「組織活動の潤滑油」ですが、「あの後、カレシとどうなったの~?」などと「油」を売ってばかりでは、組織が持つ力を効果的に発揮することはできません。また、「意識の共有が不十分のため、同じ理解をしているつもりで各関係者がバラバラな取り組みを行なっている」あるいは「自分(たち)は特殊であると考え、関係者の了承を取らずに、標準化されているはずの手順を軽視/無視する」などといった状況を招いている場合などもあります。

C)は、立場や役割など視点の違いから生じる意見が、議論に有効なもの(健全な意見の対立など)であっても、「意見の対立があっては、人間関係に影響を及ぼす」と考えることに慣れ、率直な意見交換ができていない状況について述べています。「納得はしていないけれど、反論せずに渋々従い、うまく行かないと、人の失敗をあざける」というメンバーばかりだと、組織が持つ力を効果的に発揮することはできません。

例:会議などの場で、「上司の “意見” 」(≠上司という “人物” )に少しでも否定的な見解を示すと、仕事を進めていく上で、困難が生じるに違いないといった考えを持つ思考パターンに慣れた人は、目的・目標達成に有用そうな異見を言うよりも、自己保身を優先し、面従腹背・面従後言といった対応を選択しがちになります。

A)、B)、C)と見てきた内容について改めて整理すると、「『組織の問題』とは、(組織の存在理由に合致した、明確な目的・目標の達成にとって適切な)『コミュニケーションの不全』である。」と言ってもいいのではないかと思えてきます(※2)。
…「リーダーシップ」「マネジメント」「ファシリテーション」「交渉」「仕組みづくり」「人財育成」など、その場面その場面で用いる表現が変わっても、結局、「組織の問題」を中長期に渡るスパンで本当に解決するためには、「組織におけるコミュニケーション」に真正面から向き合う必要があることには違いがないだろうと考えています(※3)。

※2
組織ではなく、個人を対象とする際には、より個別具体的な対応、例えば、「リーダーシップ開発コーチング」などで、私生活での悩み、信念・人生観、メンタル・モデルや思考法についても扱うことが有効であると考えています。

※3
このように考えてくると、多くの組織で「ヒューマン・スキル研修」として分類されている「コミュニケーション」研修が、「若手~中堅が受講対象」と限られていることに違和感を覚える方も増えてくるのではないでしょうか?あなたが所属する組織では、「経営層」のコミュニケーション技量を継続的に上げていくために、どんな施策を選択されているでしょうか?また、あなたが所属されている組織あるいは部門・部署が、「効率性」よりも「効果性」や「イノベーション」の促進に貢献するような研修の導入を検討されているなら、「階層別」以外の切り口で研修体系を組み直されるのも有効かもしれません。

 

組織活動の成果を高める、組織の「体質改善」の提案

さて、前段では、「組織の問題とは、コミュニケーションの不全である」という、現在の私の解釈についてご紹介しました。

HCMの観点から、組織活動の成果を高める(結果として、業績を上げる)には、急進的な「組織改革」的アプローチもあれば、漸進的な「組織開発」的アプローチもあります。

そんな中、「納得できるように、物事を主体的に変えていく力を持った人・組織を増やすこと」を旨とし、A)~C)のような問題設定を行う弊社は、「多くの組織が抱える問題 = コミュニケーション不全」の解決に貢献するため、「経験学習の場の整備によって、組織の体質改善を図る」というアプローチ(個人向けと、集団/組織向け)を提案したいと考えています。

個人向けアプローチとしては、前出の「リーダーシップ開発コーチング」、あるいは、合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」などで、「メンタル・モデル」や「思考法」の確認をしつつ、「個人としての継続的能力開発」に取り組まれることをお勧めしたいと思います。

組織開発と人材開発

第117号 図表3「組織開発と人材開発」を再掲

コーチングに関しては、多くの方がいろいろ情報発信しておられますし、私もこれまでいろいろ書いてきたので、今回は、次の有名な話だけご紹介して終わりにします。(※4)

「優れたコーチは、経営者に耳の痛いことも言ってくれる。経営者は、会議の場を独占し、部下に恐れられている。部下は萎縮して経営者に何も言えなくなっているため、客観的な立場でものを言ってくれる存在を社内に持つことは不可能だ。経営者は、コーチを活用すべきだ。」
ジャック・ウェルチ[ John Francis Jack Welch Jr.:世界最大級のコングロマリット(複合企業)である、General Electric(略称:GE)社の最高経営責任者(1981年から2001年)を務め、「伝説の経営者」と呼ばれる ]

※4
コーチングとは別の方法で、「個人としての継続的能力開発」に取り組みたいという方は、「視座を高め、視野を広げ、視点を適切に選ぶ力を育みたい人のための『教養醸成の会』(CGG)」や、「人や組織の学習と変化」をテーマとして扱う「変化促進研究会」(C研)などの利用もご検討いただければ幸いです。

そして、集団/組織向けアプローチとして、これまでの「コンフリクト・マネジメント入門」セミナーなどに加え、本稿でご紹介してきたような考えを踏まえ、組織活動の成果を高める、組織の「体質改善」に役立つ提案として、リマインド・シリーズを新たに用意させていただきました。

リマインド・シリーズの特徴としてわかりやすいと思うので、ここで、「受講によって期待される効果」の欄に書いていた文章を一部引用して紹介いたします。


  • 他の受講者と定期的に顔を合わせ、「数字で表しづらい仕事の中身」や「対人関係上の悩み」などといった「非公式な情報の共有」を図ることができます
    …単なる情報交換にとどまらず、問題意識を共有する/異なる立場・役割の背景にある考え方を理解し共感(≠同意)する/寛容さ・包容力を高める/「自分が相手にとって価値ある存在である」と確認し合う/組織内ネットワーキングを促進するなどといった効果が期待できます。→「個人学習」にとどまらず、相互啓発により「組織学習」を推進するため、「ヴィジョン・ミッション・価値観・ウェイ・戦略・事業計画の実現」に向けた好影響が期待できます。
  • 「問題の発生や深刻化を未然に防ぐ有用なコミュニケーションの場」を、(個々人の主体的な努力に頼るのではなく)組織として設けることができます。 …プレイング・マネジャー化し、疲弊している部長・課長クラスの人財を、組織として公式にサポートすることができます。

本稿で展開してきた「組織の問題とは、コミュニケーションの不全である」という認識に立ち戻って、上記の「リマインド・シリーズの受講効果がもたらす価値」(…「やりっ放しで終わりの集合研修」で得られる効果との比較)についてイメージしてみてください。これまでとは異なる研修効果が期待できそうでしょうか?

 

さて今回は、「納得できるように、物事を主体的に変えていく力を持った人・組織を増やすこと」を旨とする弊社が、「組織の問題」を「コミュニケーション不全」であると捉え、その問題の中長期に渡る本質的な解決を目指して、「経験学習の場の整備によって、組織の体質改善を図る」というアプローチ(個人向けと、集団/組織向け)を模索し続けており、今回新たに、「リマインド・シリーズ」を弊社ラインナップに加えたのだという経緯についてご紹介して参りました。

あなたが所属されている組織が、すぐに、今回ご紹介したようなさまざまなアプローチを採用・導入されるかどうかは別としても、「個々人の能力(の平均値)は高いけれど、組織全体としての業績は低い」という問題症状を抱える組織において、「組織力を発揮する方法」を考える際に、A)~C)といった仮説を「作業仮説」として扱い、個々の組織のさまざまな活動において、作業仮説がが当てはまるかどうかを検証することは有益ではないでしょうか?

流行のビジネス書などでは、「偶発的にうまく行った、例外的なベスト・プラクティス」を、あたかも、「誰にでも適用可能なアプローチ」であると誤解させるような内容の物語が好まれる傾向にあるようですが、弊社としては、現代のように唯一最善解のない時代には、「観察」「質問力」「3種類の推論」などを武器に仮説を立て、「仮説と検証のサイクル」を次々と回しながら、「受講者どうしの相互啓発」を促し、「地に足の着いた経験学習」を進めるアプローチを重視する姿勢で、「納得できるように、物事を主体的に変えていく力を持った人・組織を増やすこと」に貢献していきたいと考えています。

 

あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか? 何か少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

今回のブログ記事で、少しでも「いいね!」と思えた箇所があったようであれば、
応援クリック」をお願いいたします。

お読みくださったあなたの応援が、次の記事を作成する意欲となります!

Send to Kindle

follow us in feedly