人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「学習を妨げる認識」や「知ったかぶり」を修正するプロセス?(第109号)

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こんにちは、合同会社5W1H代表の高野潤一郎です。

先日、某企業にて「『組織学習の種類』と『コーチングの種類』の関係」についてお話させていただく機会がありました。そこで、今回は、「学習する組織」というコンセプトに詳しい聴衆の方に受けが良かった「シングル・ループ学習、ダブル・ループ学習、トリプル・ループ学習」の解説図をご紹介しています。ご興味をお持ちいただけましたら、この先も目を通してみてください。

 

シングル・ループ学習、ダブル・ループ学習、
トリプル・ループ学習

早速ですが、冒頭で触れた解説図についてご紹介いたします。

組織学習の種類

図表1: 組織学習の種類

 

3種類のループ学習

図表2: 3種類のループ学習

 

図表1は、「『組織学習の種類』と『コーチングの種類』の関係」についてお話させていただいた時に「『学習を妨げる認識』や『知ったかぶり』を見つけて修正する組織学習のプロセス」の説明図としてホワイトボードに描いたものです。(より汎用的で有名な図表2を基にしつつ、私が「学習の場のファシリテーター」としての役割を果たし、聴衆の方々とのやり取りを進めていく際の「たたき台」として描いた図とご理解いただくのが良いかと思います。)

図表1に登場する、「シングル・ループ学習」「ダブル・ループ学習」という用語については、第49号第99号などでも登場しましたが、本ニューズレターでは「トリプル・ループ学習」という用語は初めてかもしれませんね。「学習する組織」という概念を生み出す基になったことでも知られる、これらの概念は、組織行動論などで知られるハーバード大学名誉教授のクリス・アージリス(Chris Argyris)さんらによって、30年以上前から提唱されているものです。それぞれの詳細については多くの方が情報発信されているので、ご興味をお持ちの方はそれらをご確認いただくこととして、下記では、これまでにニューズレターでご紹介していた表現・上記ファシリテーションの際に指摘していたポイントについて、コーチングやファシリテーションと関係が深い内容を選んで列挙しています。

 

シングル・ループ学習(single-loop learning)

  • 「問題症状を生み出している、明白で直接的な原因」や「どんな解決策が効果を発揮しそうか」について探求する
    →大切だが、注意しないと、対症療法を繰り返しがち
  • 問題認識を変えずに、現在のモノの見方のままで、(時には、不満を抱えていても無理してでも)言動や環境といった「現実を変えること」(第1次変化)に焦点を当てる
  • 現在の延長線上にある解決策の追求を主とし、改善を図る・効率を高めるなど現状認識を変えないままで、現実を変えようとする
  • シングル・ループ学習を基礎とするコミュニケーションでは、指示・命令・指導が多くなり、当事者たちが受け身になりやすい
  • 特定領域(コンテンツ)に依存しているので、さまざまな要素が影響を及ぼし合う複雑な対象を扱うには適さないことがある
     →例:スポーツ・コーチング(という名のイメージ・トレーニングや、当該スポーツ経験者によるメンタリングなど)は可能だが、ビジネス・コーチングには不適など

など

 

ダブル・ループ学習(double-loop learning)

  •  「問題症状を生み出している、内在的で根本的な真因」や「どんな解決策が効果を発揮しうるか」について探求する
  • これまでとは異なるモノの見方を手に入れ「認識を変えること」(第2次変化)に焦点を当てる
    …当事者の認知や思考のプロセスを変える
  • 問題認識の土台や前提を問い直し、関係者だけでは思いつかなかった認識や戦略へのジャンプを導く
  • 心理抵抗や葛藤なども含めて、状況を整理し、本当に取り組むべき問題が何なのかを設定(再定義)するなど、「現状認識を変えた上で、現実を変えよう」とする
  • ダブル・ループ学習を基礎とするコミュニケーションでは、質問が多くなり、当事者たちが主体的に考えて行動するようになっていきやすい
  • 社会的な制約(ソーシャル・ブロック)や心理学的制約(メンタル・ブロック)についても扱う
  • 自分の思考のクセを知り、より正確に現実を直視するように努めることで、意思決定の質が向上する
    →特定領域(コンテンツ)に依存しない、領域横断的な能力(メタ・スキル)が向上する


など

 

トリプル・ループ学習(triple-loop learning)

  • 「原因や真因を生み出している、心構え・組織文化」や「解決に向けて影響力を発揮しうる対策」について探求する …場づくり;組織の再編成;問題の発生を未然に防ぐのに有効な、質問をし合う風土の醸成など
  • 関係者それぞれが、これまでの自分たちの学び方について振り返ることなどによって、「学び方について学ぶ」ことも、トリプル・ループ学習の範疇に入る …こういった側面もあるため、「トリプル・ループ学習は、ダブル・ループ学習についてのダブル・ループ学習に相当する」と解釈される場合もある
  • どのルールを変えるべきかといった話にとどまらず、組織の判断基準やルール自体についても熟考を重ね、自組織の在り方・取引先との関係などに関する認識や信念についても再考・再評価する

など

 

ちなみに…先日の、図表1を用いたファシリテーションの場では、「自分が所属する部署内の情報を相手の部署に充分に出さなかったり、相手が本音で語っていなさそうだと感じても内容について詳細を確認しなかったりするなど、組織内で適切なコミュニケーションを行っておらず、仕事相手の考えを勝手に推測し合っている現状」が明るみに出てきて、「ダブル・ループ学習が進まず、シングル・ループ学習に止まっている実態が表面化」したことをきっかけに、議論が深まっていきました。

現在、あなたやあなたが所属される組織では、どんな種類の学習をされているでしょうか?

また、図表1・図表2をご覧になって、どんなことをお感じになったでしょうか。さらに、「ダブル・ループ学習が進むと、シングル・ループ学習にも望ましい影響が及ぶ」可能性について、どのようにお考えになるでしょうか?

 

ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキング

学習の種類について触れたところで、今度は、「ロジカル・シンキング」(論理的思考法)と「クリティカル・シンキング」(批判的思考法)の違いについても、現在の私の考えを紹介してみようと思います。もう一度、図表2をご覧ください。

シングル・ループ学習」では、「物事に『適切に取り組んで』いるか?」すなわち「方法の適切さ」を重視しています。「思考法」という切り口から言えば、「論理の展開に、矛盾や飛躍などが無いかどうかの確認」「命題の繋がり方(…部分)」を重視しており、これは「ロジカル・シンキング」に相当しそうだと考えています。

一方、「ダブル・ループ学習」では、「『適切な物事』に取り組んでいるか?」すなわち「目的・目標の適切さ」を重視しています。そして「トリプル・ループ学習」では、「何が適切で、何が適切でないかについて、『どのように判断している』のか?」すなわち「目的・目標選びの哲学・信念・価値観など」を重視しています。これらは、「思考法」という切り口から言えば、「仮説の妥当性についての批判的な検証」「どのような切り口(フレーム)で、対象について解釈・検討するのが適切かを考えること(…全体)」を重視しており、これは「クリティカル・シンキング」に相当しそうだと考えています。 …別の会社では、「クリティカル・シンキングには『客観的妥当性の確認』という側面があり、これがロジカル・シンキングとの違いとなっている」と解説されたりもしているそうですが、上記の通り、弊社では、異なる見解を選択しています。(例:企業理念や経営者の意思決定などは、客観的・科学的な正しさよりも、主観的・哲学的な適切さなどが基盤となる場合が多いことなどを思い出してみてください。)

あなたは、「ロジカル・シンキング、クリティカル・シンキング」と「シングル・ループ学習、ダブル・ループ学習、トリプル・ループ学習」の関連付け案について、どのようにお考えになるでしょうか?

こういった視点を得ることで、あなたやあなたの組織における学習をより効果的・効率的なものにしていくのに、どのように役立てることができるでしょうか?

 

正解がない時代に適した「学習の種類」
「思考法」と「ファシリテーション」「コーチング」

第67号では、

  • コーチングの定義の違い
  • すべての事柄に対して、いつも先生が生徒にモノを教えるという教育スタイルは通用せず、先生が生徒と一緒に(例えば、身近な環境問題に関する解決策などを)考えるスタイルが台頭してきており~(中略)~教育現場で『先生』がいなくなり、ファシリテーター(変化・成長・学習の促進者)』に置き換わっていくような時代

などについても書いておりました。

今回お伝えしている内容と併せて考えると、次の2つの表現も可能なように思います。

  • 唯一絶対解がある場合に有効な、「ロジカル・シンキング」「シングル・ループ学習」の有効性は変わらないけれど、唯一絶対解が無く、仮説と検証の繰り返しによって、変化・成長・学習の「ファシリテーション」が重要性を増してきている情勢では、クリティカル・シンキング」と「ダブル・ループ学習とトリプル・ループ学習」の有用性がますます高まっている
    ※「コンフリクト・マネジメント入門」や「質問力(後編)」では、思考法について扱う中で、「演繹的推論」「帰納的推論」に加え、仮説的推論発想推論などとも呼ばれる「アブダクション」も紹介しています。
  • パフォーマンス・コーチング」では、「ロジカル・シンキング」「シングル・ループ学習」や「臨場感覚の想起・想像(イメージ・トレーニング)」;「自己開発コーチング」では、「クリティカル・シンキング」「ダブル・ループ学習」や「ダイアローグ」(弊社定義:話の内容のみならず、関係者の思考プロセスや感情に意識を払い、特定の立場や手段に固執せず、率直な意見交換を行うことによって、目的を達成しようとするコミュニケーションの方法);「意識改革コーチング」では、「クリティカル・シンキング」「トリプル・ループ学習」に加えて「ダイアローグ」「組織のヴィジョン・ミッション・信念・価値観の明確化とそれらの共有・浸透」「組織の再編成」などが主要な役割を果たす。
    ※「組織の再編成」について、私の考え方に興味をお持ちの方は、弊社Google+ページへの投稿記事:「事業計画」「組織開発」と「人財育成」を関連付けて考える!?をご確認ください。…夜の勉強会配布資料(私が担当の回)のPDFファイルがご覧いただけます。

主に、前者が「ファシリテーション」についての表現、後者が「コーチング」についての表現となっています。 そして、弊社では、

あなたは、「正解がない時代に適した『学習の種類』『思考法』と『ファシリテーション』『コーチング』」という切り口について、どのような印象をお持ちになり、どんな行動に反映されるのでしょうか?

 

さて今回は、

といった話を通して、「『組織学習の種類』と『コーチングの種類』の関係」に関するファシリテーションを行った時の話題の一部をご紹介してきました。あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか?
第108号でお伝えしていた「ユダヤ人のシャバットをご紹介し、『絵筆を持つ手をしばらく止め』て『自分と向き合う』ことが大切ではないか、『質問するよう教育されていない日本人』にとってコーチング・ファシリテーションは有用ではないか、という考え」について思い出していただき、併せて、思考を深めていただくのも良いかもしれません。

 

何か少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

P.S.
ニューズレターよりコンパクトな情報について掲載している弊社 Google+ページもご活用ください♪

弊社の Google+ページ
Grow through Inquisitive Mind, Change through Dialogue and Questioning Culture!

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