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人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「戦国時代の茶会」と「福利厚生費などが不要の人財」(第104号)

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こんにちは、合同会社5W1H代表の高野潤一郎です。

今回は、「情報が爆発的に増大する環境下で、私たちは今後、何を意識すると良さそうか?」といった事柄に関して、「直感的に理解できる線形的変化」と「直観的な理解が求められる指数関数的変化」などの切り口から、私の考えをお伝えしたいと思います。

 

「情報」はどれくらい増えているのか?

IT(情報技術)、電氣通信(電子機器による遠距離通信)および民生技術(消費者向け技術)に特化した市場調査と分析を行うIDC(International Data Corporation)が、情報管理ソフトウェアおよびストレージ製造のEMCコーポレーションの協賛で、毎年「Digital Universe Study」という報告書を発行されているのをご存知の方も多いのではないかと思います。2010年の報告書では、「世界のデジタル情報量が、今後10年間で44倍に増加するという見通し」が紹介され、2011年の報告書では、「今後10年間で、世界のサーバーの数は10倍に、企業のデータセンターによって管理される情報の量は50倍、データセンターが対処しなければならないファイル数は少なくとも75倍に増大し、世界のデジタル情報量が35ゼタバイト[ ZB:10の21乗バイト=1000EB(エクサバイト)=100万PB(ペタバイト)=10億TB(テラバイト);1ZB ≒ 世界中の砂浜にある砂粒の数とも言われる ] 以上になるという見通し」が紹介されています。

では、このように情報が「爆発的に増大」する環境下で、私たちは今後、何を意識すると良いのでしょうか?

話を先に進める前に、一旦、「爆発的な増大」について軽くおさらいしておくことにしましょう。

 

「直感的に理解できる線形的変化」と
「直観的な理解が求められる指数関数的変化」

ニューズレター第99号「ノーベル経済学賞と、社内コーチの限界」の中では、


力学で扱う「変化のレベル」の例
  変化0:動かないままでいる(静止、平衡状態)
  変化1:異なる場所へ移動する(等速度)
  変化2:速度を変化させる(加速度
  変化3:加速度を変化させる(躍度もしくは加加速度


という話を紹介していました。

私たちが、「加速度的に」「ネズミ算的に」「雪だるま式に」「複利計算で」「爆発的に」といった表現を目にしたり耳にしたりする際には、ほとんどの場合、対象としているモノの変化が「指数関数的」な成長(=定数を「掛ける」ことで繰り返し増大する種類の成長)であり、容易に先の展開が予測できる「線形的」な成長(=定数を「足す」ことにより繰り返し増大する種類の成長)ではないことを指しています。

「線形的」成長と「指数関数的」成

図表1:「線形的」成長と「指数関数的」成長

 

図表1を見るとわかるように、指数関数的な成長では、初期段階の変化がゆっくりと平坦なために、見過ごされがちなのですが、のちのち、対処が間に合わなくなるほど急激に変化し、まったく思いもよらなかった結果に至るといったことがしばしば発生します。これについては、「重要だけれども緊急ではない」からという理由で、注意して意識を払う対象として取り上げず、対処を「後回し」(先送り、先延ばし)にしていたために、手の施しようのない大問題が発生するという事例(健康管理、体質改善、家族関係、能力向上、語学学習、小さなミスが積み重なって起きた大事故など)を思い出すと、理解していただきやすいのではないでしょうか?[ 指数関数的(加速度的)成長の率、すなわち、指数(加速度)自体が指数関数的(加速度的)に成長する場合には、「躍度」もしくは「加加速度」といった視点での考慮も必要となります。…事例としては、「ムーアの法則」などが挙げられます。 ]

指数関数的成長曲線の折れ曲がり地点のように、物事(さまざまなシステム)が一氣に変化する瞬間を表す概念・言葉として、「臨界点」(critical point、tipping pointなどの訳語;分野や文脈によっては、臨界値、閾(しきい)値、特異点などとも呼ぶ:身近な例では水の融点や沸点など)があります。「臨界点」に関しては、1982年のノーベル物理学賞が、Kenneth G. Wilsonさんの「相転移に関連した臨界現象の理論」に贈られたことで知名度が上がり、最近では、「臨界点の兆しは、通常は複雑系としての均衡を保っているフィードバック・ループに負荷がかかった状態になると出現する。さまざまな種類のフィードバックがどのように相互作用し合っていて、変化の臨界を越える閾値はどこかにあるのかを見出すことが重要である。」として、気象予測や経済予測など幅広い分野で、さらなる研究が進められています。

さて、ここまでお読みいただいておわかりのように、指数関数的な変化を示す事柄に対処する際、私たちには、その変化を「直感」的(※1)に理解することは困難であり、数量化・グラフ化・図解化などを通して「概念化」した上で、「直観」的(※2)な理解を得ることが大切となります。(…指数関数的変化を直感的に理解できるように、線形的変化として描写し直すのに、「対数」(両対数グラフや片対数グラフなど)が用いられます。)

※1 直感 
説明や論証抜きで(五感以外の感覚が働いて)感覚的にピンとわかること。

※2 直観 
判断・推理などに依らず瞬間的に対象の本質を(視覚的に)捉えること、またその内容。

 

つまり、「XとYが直接的な因果関係」にある場合には、「直感的な線形的理解」に基づく対応(例:「短期的」に目指す結果を出すことを目指すパフォーマンス・コーチングなど)が求められますが、さまざまな要素が影響を及ぼし合う対象を扱う場合には、「直観的な指数関数的理解」に基づく対応(例:「臨界点」を超えるような「継続的学習の累積」や、「図解」や「問題の再設定」を特徴とする弊社流コーチングなど)が求められます。

ここでは、「指数関数的な時間発展を遂げ、ある臨界点を境に、急激な変化をもたらす事柄(さまざまなシステム)」に対処する際には、それがビジネスの場面であれ、コーチングやファシリテーションの場面であれ、問題解決や意思決定の場面であれ、「図解」などを用いて対象を「直観的に理解」し、「負荷がかかったフィードバック・ループ」など(←レバレッジ・ポイント、”てこ”の作用点に相当)がどこにあるかを把握することが大切であるとする、弊社の主張をご理解いただければ幸いです。

※3 参考情報
症状に飛びつかず、診断する; CPP参加者コメント
優れた経営者・リーダーは「ベストプラクティス」を鵜呑みにしない
幸福なうつ状態とグローバル人財育成競争;土壌を豊かにする!

 

「大量の情報」を処理する能力は充分なのか?

さて、「線形的な変化」と「指数関数的な変化」についておさらいした上で、「情報が爆発的に増大する環境下で、私たちは今後、何を意識すると良いのか?」に話を戻しましょう。まずは、「大量の情報を処理する能力」について考えてみましょう。

(独)理化学研究所脳科学総合研究センターのウェブサイトには、次のような記述があります。


脳を構成する主役は「神経細胞」である。神経細胞は、電気信号を発して情報をやりとりする特殊な細胞だ。その数は大脳で数百億個、小脳で1000億個、脳全体では千数百億個にもなる。
一つの神経細胞からは、長い「軸索」と、木の枝のように複雑に分岐した短い「樹状突起」が伸びている。これらの突起は、別の神経細胞とつながり合い、複雑なネットワーク「神経回路」を形成している。神経細胞は、細胞体と軸索と樹状突起で一つの単位として考え、「ニューロン(神経単位)」とも呼ばれる。
~    ~    ~    ~    ~
大脳には数百億もの神経細胞があり、それぞれ平均数万個のシナプスを持っている。
~    ~    ~    ~    ~
軸索の末端は、こぶ状に膨らんだ形をしており、「シナプス」と呼ばれる。シナプスは次の神経細胞と密着しているのではなく、数万分の1mmほどのすき間「シナプス間隙」がある。
~    ~    ~    ~    ~
シナプスでは、電気信号を化学物質の信号に変えて次の神経細胞に情報を伝達しているのである。電気信号が伝わってくると、シナプスにある小胞から「神経伝達物質」という化学物質が、シナプス間隙に分泌される。神経伝達物質が、次の神経細胞の細胞膜にある受容体に結合すると、電気信号が生じて情報が伝達されるのだ。シナプス間隙の伝達にかかる時間は、0.1~0.2ミリ秒ほどである。
(出典:http://www.brain.riken.jp/jp/aware/index.html


上記を踏まえてざっくり計算すると、大脳に収められているニューロン間結合(シナプス結合)は約100兆であることがわかります。100兆ものシナプス結合を同時に作動させることができる、脳の超並列処理は「パターン認識力に優れる」などといった特徴を備えていますが、頭蓋骨内の容量が急激に増えることは望めないという生物学的な制約があります。一方、上述のように「情報が爆発的に増大する環境」の下で生活を送る私たちは、毎日数千の広告にさらされ(…街を歩いていてもインターネットに接続していても、知らず知らずのうちに、この程度は目にしたり耳にしたりしているようです)、それ以外にも各種携帯端末などから文章・音声・動画を入手し、職場や通勤通学の途中では天候や道の状況などに加え、数多くの人々の表情を読み取ったりもしており、「情報処理をストレスだと感じる人々が増えている」などと耳にする機会が増えてきています。(一説には、現段階で、人間の知識量も毎年およそ2倍となっているとするものもあるようです。)

また、「神経内での活動電位の伝達速度は、0.1m/s~100m/s以下までの間で変化する」(出典 http://neuroscience.uth.tmc.edu/s1/chapter03.html、「哺乳類の運動ニューロンの伝達速度は10~120m/sだが、無髄感覚ニューロンでは5~25m/sである」(出典 http://www.ucblueash.edu/koehler/biophys/4d.htmlことから、哺乳類の脳で使われている電氣化学信号の処理速度はおよそ数十m/sであり、電子回路を用いた機械の情報処理速度と比較すると、数百万倍程度遅いとされています。

このため、(ヒトが得意な情報処理能力として「パターン認識」などがありますが)情報が爆発的に増大する環境の下では、コンピューターなどの持つ情報処理能力(記憶容量、正確さ、スピードなど)との「棲み分け」や「統合」(ヒトと機械システムの融合など)、「自分が取り組むこと」「自分の能力を高めるために『臨界点を超えるまで取り組む』と決めていること(=自分で自分の能力を高めると決断していること←指数関数的成長に対応:後述)」「情報処理に取り組まない事柄」「他者に任せること」「他者/他社と協働して取り組むと良いこと」「機械などに任せること」などについて、きちんと考えることの重要性が増してくると予測できます。

コンピューティング能力の指数関数的成長

図表2:コンピューティング能力の指数関数的成長

(出典:「The Singularity is Near」(2005), Ray Kurzweil; 原出典:“25 Years of Computer History”; Linley Gwennap, “Birth of a Chip” BYTE (December 1996); “The CDC 6000 Series Computer”;“A Chronology of Computer History”; Mark Brader, “A Chronology of Digital Computing Machines (to 1952)”; Karl Kempf, “Electronic Computers Within the Ordnance Corps” November 1961,; Ken Polsson, “Chronology of Personal Computers”; “The History of Computing at Los Alamos”; the Machine Room; Mind Machine Web Museum; Hans Moravec, computer data; “PC Magazine Online: Fifteen Years of PC Magazine”; Stan Augarten, Bit by Bit: An Illustrated History of Computers (New York: Ticknor and Fields, 1984); International Association of Electrical and Electronics Engineers (IEEE), Annals of the History of the Computer 9.2 (1987): 150–53 and 16.3 (1994): 20; Hans Moravec, Mind Children: The Future of Robot and Human Intelligence (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1988); René Moreau, The Computer Comes of Age (Cambridge,Mass.: MIT Press, 1984). )

 

あなたは、「自分が取り組むこと」「自分の能力を高めるために『臨界点を超えるまで取り組む』と決めていること(後述)」「情報処理に取り組まない事柄」「他者に任せること」「他者/他社と協働して取り組むと良いこと」「機械などに任せること」などについて、どんな基準を持って判断していますか?

 

臨界点(閾値)を超えるまで取り組むこと

(ニューズレター第102号では、「型」と「形」の話も書いていましたが…)ヒトの脳にある「型」を定着させようとすると、その信号処理のパターンを習慣化させることが必要となります。(この場合には、脳内の神経細胞の再組織化にはタンパク質の合成を支えるために必要な遺伝子の発現などを考慮すると、最低2週間くらいに渡って継続的な取り組みが必要となります。)このように、筋肉トレーニングでも記憶でも、神経や筋肉細胞などが増えたり強化されたりするには、学習の臨界点(閾値)を超える必要がありますし、それに要する時間を無視することはできません。(…もちろん、自分の現在の能力や信念などを変えないまま、目先の短期的な行動だけを変えること・対症療法ならすぐにできるかもしれませんが、ここでは、中長期に渡る本質的な変化や成長を望む場合の話をしています。)ところが、何か新しいことを学び始めた最初の頃は、自分でも学習効果が自覚しやすいためやる氣があるのですが、その後しばらくすると、プラトー」状態(plateau:一時的に進歩が足踏みする状態)に入って伸びが自覚しづらくなり、本当の意味で習得・体得する前に、学習を止めてしまう方が多いことを残念に思っています。この辺りの話についてご興味をお持ちでしたら、下記の羽生善治さんの話と併せて、「達人のサイエンス」をお薦めいたします。


仮に今、一生懸命に研究をしたとしても、一ヵ月後には絶対に結果は出ない。普通は二年とか三年、どんなに早くても一年はかかります。~どんなに過去の実績がある人でも、今努力しなければ、すぐに置いていかれてしまう。基本的な蓄積は必要ですが、そこにどんどん積み重ねていった上積みの部分がすごく大事なんですね。~将棋の世界では、長い目で見ると、自分の得意な形で戦うことが一番リスクが高いんですよ。その瞬間だけ見れば、それでいいでしょう。でも、この世界がどんどん変化していくことはわかっているので、自分自身も少しずつ変化とか進歩をめざしていかないと、二年、三年、そして五年が経ったときに、大きく後れをとってしまうことになるんです。~自分から意識的にリスクの高い選択肢を選ぶくらいのほうが、バランスがとれるような氣がします。
(出典: 棋士 羽生善治 @NHK「プロフェッショナル」~仕事の流儀~)


 

さて、あなたが、自分の能力を高めるために「臨界点を超えるまで取り組む」と決めていることは何でしょう?(…上述の話をお読みになった方は、「数日間の企業研修」等に参加しただけで、「何かの ”能力” が身につく」というのは幻想でしかないことに同意いただけるのではないでしょうか。新たな視点を手に入れることや普段の生活に戻ってトレーニングを続けると良いことのヒントを得る場などとして、企業研修等を活用するのが現実的ではないでしょうか。)

まだしっかりと考えたことのない人向けの参考情報として、人財育成コンサルティングの場面でよく相談に出てくる「3つのスキル」(専門的スキル・対人関係スキル・概念化スキル)について、組織内の階層と対応させて示した図を紹介しておきます。

人財育成で話題にのぼる3つのスキルと組織内階層

図表3:人財育成で話題にのぼる3つのスキルと組織内階層

 

確かに、ビジネスパーソン「仕事を遂行する上でのスキル」を向上させるためには、「他者とのコミュニケーション」の在り方について考え、改善を続けることが大切ですが、それとは別に、「人間としての総合力」のようなものを向上させるための取り組みも重要であり、それには、「自分自身とのコミュニケーション」(内省)や「内省を促進する場」が必要となります。こういった側面については、あなたはどのように考えていらっしゃるでしょうか?

 

「情報処理の質」を高く保つ仕組みは確保できているのか?

さて、「情報が爆発的に増大する環境での、大量の情報を処理する能力」について考えてきましたが、今度は、「情報処理の質を高く保つ仕組み」について考えてみようと思います。

私たちが触れる情報は、ただ単にその量が増えてきているだけではなく、以前に比べると、込み入った情報(処理するのに手間がかかる複雑な情報)も増えてきているように感じています。あなたの場合にはいかがでしょうか。以前よりも忙しさが増し、「直感的に理解できる線形的変化」と比較して「直観的な理解が求められる指数関数的変化」への対応が求められる場面が増えているといったことはないでしょうか?

これまでの話で、「自分が取り組むこと」「自分の能力を高めるために『臨界点を超えるまで取り組む』と決めていること」「自分が取り組まないこと」「他者に任せること」「機械などに任せること」などについては、いくつか考えるヒントになりそうな情報を差し上げてきたのではないかと思っています。そこで、今度は「他者/他社と協働して取り組むと良いこと」に関係のありそうな話に進みます。

もう一度、図表3を見てみましょう。一般的に、組織内では、階層が下であればあるほど「因果関係について直観的な理解がしやすい、比較的狭い領域の事柄(部分)についての、具体的かつ詳細な取り組み」が求められ、階層が上に行けばいくほど「組織内外の要素が複雑に関係し合った、分野横断的で広範な範囲に渡る事柄(全体)についての、抽象度が高い概念的な取り組み」が求められていることがわかります。これは、組織の階層が上に行けばいくほど、自分の態度や言動の影響が、目の前にいる人物に対して直接的に及ぶだけでなく、間接的につながっている、会ったこともない人にまで及び、時間差を生じてジワジワとその反応が出てくるといった事態にも備える必要があるということを指しています。組織の上層部の人々というのは、迂闊(うかつ)な、あるいは、感情的な言動で、不要な誤解などが生じないよう、コミュニケーションの取り方にも心配りが必要な立場の人であるとも言えるでしょう。

このように、組織の上層部に位置する人々、あるいは、各階層や各プロジェクトなどにおいてリーダーやマネジャーとしての役割を果たすことが期待される人々は、充分な情報が揃わない内に「(指数関数的な変化を伴うような)複雑な事柄に対しての、迅速な意思決定や問題解決」が求められています。しかも、感情のまま、自分の心身状態の赴くままに「腹を割って、本音で語り合える対等の相手」を見つけることにも苦労されることが多いようです。

情報が増え、情報の複雑さも増し、意思決定や問題解決に割ける時間が減少し、利害関係や政治的駆け引きなどとも無縁で腹を割って話せる相手を見つけるのにも苦慮している人々は、どのようにして、「情報処理の質を高く保つ」よう工夫されているのでしょうか?

 

上記のように考えたとき、頭に浮かんだのは、「戦国時代の茶会」でした。各階層や各プロジェクトなどにおいてリーダーやマネジャーとしての役割を果たすことが期待される人々と、戦国時代の武将たちに似た側面があるように、私には思えたのです。


15世紀中頃~17世紀中頃、ヨーロッパ人による「植民地主義的な国外進出」が展開され、「大航海時代」といった名称でも呼ばれています。同じ頃、「封建制」(土地を仲立ちとして結ばれた主従関係に基づく社会の仕組み。主君が家臣に領地を与えて保護するのに対し,家臣は家来として仕えることを誓い,従軍の義務を負った。)の社会であった日本でも、領地の拡大を求めて戦争が繰り返されました。そして、織田信長が「戦国時代が続く理由の1つは、大名が有限な領地を巡って争うことにある。戦乱の世を終わらせ、天下を統一するには、土地以外のモノを仲立ちとして結ばれる主従関係作りも重要である。」と氣づいたとする説があります。そして、織田信長が堺を直轄地としたときに茶頭として雇われた千利休らが保護され、大名や武士の間に茶道の素晴らしさ・茶道への関心を植え付けていくことで、家臣への褒美を領地ではなく茶道具にすり替えていったとされています。

織田信長の側の意図とは別に、戦国時代に茶道が千利休によって確立されることを可能にした背景には、大名や武士たちにとって、茶道あるいは茶会が魅力的なものとして受け入れられていったという事実があります。「茶禅一味」「一期一会」などという言葉があるくらいで、禅宗を背景として成立した茶道は、作法や道具よりもその精神世界が重んじられる芸事であったと言われています。茶室に入る時には、躙口(にじりぐち:茶室にある、高さと幅がそれぞれ60cmほどの小さな出入口。「にじる」というのは両拳をついて膝で進むような動き方。刀を差したままでは入りにくい。)を通ることで外の世界のけがれを落とし、地位・身分の高い人にも頭を下げさせることで、「茶室は外とは別の世界」という考え方を体感させたことも、明日死ぬかもしれないという殺伐とした状況の、戦国時代の大名や武士にとって、さまざまな利害関係や危険といった世事から離れ、心静かに本来の自分に戻り、研ぎ澄まされた「唯今」を味わえる場だったのかもしれません。


 

すでに、ビジネスパーソンにとっては、「人間としての総合力」のようなものを向上させるための取り組み、「自分自身とのコミュニケーション」(内省)や「内省を促進する場」が必要と書いておりましたが、そういった側面からも、戦国武将にとっての「茶会」(…ただの氣晴らしなどの場とは少し違うのを感じ取っていただけますか?)が、精神の均衡を保ったり、「情報処理の質を高く保つ仕組み」として機能したりするのに役立っていたのではないかと推測された方がいるのではないでしょうか。私は下記の2つの側面が浮かんだために、戦国武将にとっての「茶会」が、現代のビジネスパーソンにとっての「コーチングの場」であるようにも思えました。(…これは、私が仕事としてコーチングを実施しているせいもあると思います。)

  1. 慌ただしい日常業務から離れた場での腹を割った対話を通して、自分(思考のクセ)を知り、より正確に現実を直視するようになり、意志決定の質が向上する。(…社内のブレインや、感情を持った人を動かすという側面をあまり重視しないコンサルタントとは異なり、認知行動心理学を基盤としたトレーニングを受けたコーチならではの「洞察」や「協働」によって、こういったことが可能となります。)
  2. 構想を練る時間を定期的に確保し、緊急ではないが重要な事柄に取り組むことで、問題の発生を未然に防げるようになる。(…社外コーチは、人事考課や後継者選びといった利害関係や、業界の常識などから離れ、中立的な立場からの直言が可能です。)

情報が増え、情報の複雑さも増し、意思決定や問題解決に割ける時間が減少し、利害関係や政治的駆け引きなどとも無縁で腹を割って話せる相手を見つけるのにも苦慮している方々は、「人間としての総合力」のようなものを向上させるための取り組み、「自分自身とのコミュニケーション」(内省)や「内省を促進する場」を確保することで、情報処理の質を高く保つ仕組みとすることについて、どのようにお考えになるでしょうか。

 

「福利厚生費などが不要の人財」を使いこなさないのはなぜか?

上記で、「コーチングの場」という話を出しましたので、ここでは、「福利厚生費などが不要の人財」である「社外コーチ」の活用についての話をご紹介しようと思います。

経営者の方と話している時に、私はよく、「社内の人間にダイアローグを通して洞察を得るためのサポートを頼む場合、その相手の給与と間接費などから、その人を拘束することによって発生するコストを算出してみると良い」とお勧めしています。各個人が企業活動にもたらす成果を顕在化させていないために、社内人件費と社外の人間によるコーチング、ファシリテーション、あるいは顧問などの費用が比較できず、コスト・パフォーマンスを低下させている場合があることに氣づくのではないでしょうか。

 


【 注意 】 「コーチング」は「業務委託費」!(「コーチング研修」は「教育研修費」)

後ほど、図表4でご紹介するような図を用いつつ、精緻な対話を展開できる実力を備えたコーチ、すなわち、さまざまな要素が影響を及ぼし合う対象を扱う場合に、数量化・グラフ化・図解化・言語化などを通して「概念化」を行い、「直観的な理解」に基づく対応ができるコーチは極めて少数に限られるなどといった現状もあり、(もちろん私が知る範囲に限られますが、)「コーチング研修」と称するコンテンツのほとんどは、「コーチング的会話」の研修になってしまっていると認識しています。

また、先日NHK クローズアップ現代で放映された「”コーチ”をつける社長たち」で紹介されていた事例に関しては、「あれこそがコーチングだ」という人々と「あれはコーチングではなく、コーチング的会話に過ぎない」という人々がいらっしゃるようで、私も何人かからコメントを求められました。私は、あれが「コーチング」かどうかは別として、少なくとも「コーチング的会話」を行う時間を仕組みとして組織に導入することで部署間の連携を促進している会社が出始めていること、また、人事考課等に直接関与しない人物に本音を話す場を設けたのは非常に素晴らしいことではないでしょうかと回答していました。

■ 「業務委託費」などでコーチを招聘する場合:

「教育研修費」などの予算がタイトで、新たに講師を呼んだりするのが困難な場合には、「業務委託費」などの枠で、「顧問」などとしてコーチを招くことも可能です。新人や若手を1人採用しても年間数百万円、2人採用すると千数百万円は掛かります。それと比較すれば、福利厚生費なども不要で、組織に有益な貢献が期待できる社外の人財として、実力のあるコーチと顧問などの契約することは、高い費用対効果が望めます

弊社の組織向け―コーチング
個人向けコーチング

■ 「リーダーシップ開発」「後継者育成」と「経営」について:

ニューズレター第97号では、

次世代のリーダーを生み出す土壌を豊かにすることは、競争優位、事業規模、利益のすべての面で企業自体の成長を促すことに繋がる

→ 企業を経営するとは、次の経営者を育てることでもある

→ 「リーダーシップ開発コーチング」を実施することは、経営の健全化につながる

という考え方をご紹介していました。


 

上記では、コスト・パフォーマンスの側面から、もっと社外の実力のあるコーチ(=福利厚生費などが不要の人財)を活用する企業が増えてもいいのでは?という切り口の話を紹介しました。

さらに、ニューズレター第99号では、

従来の延長線上にある「想定内の変化や改善」を望むのであれば、(業界の常識にどっぷり浸かっている)「社内コーチ」が効果を発揮するが、「業界の常識の否定によって、問題を再設定し、イノベーションに向かう」ことを望むのであれば(素朴な疑問や"そもそも論"を多用し、ゼロ・ベースで考えることを促進する、認知心理学的アプローチの素養がある)「社外コーチ」の方が有効なことの方が多い。

といった主張を紹介しておりましたが、例えば、現在開催中の「夜の勉強会」では「システム思考」に関するテキストを用いた学習を進め、「夜の勉強会」参加者は、図表4のような概念化のスキルについても学習を重ねていっています。

 

第7期MOS第7回配布資料(高野担当回)より一部転載

図表4:第7期MOS第7回配布資料(高野担当回)より一部転載

 

図表4のような図の利用は、対症療法を繰り返すのではなく、本質的な問題解決に臨む際の対話(「問題の再設定」など)で大きな効果を発揮します。経験や勘に頼る、電話コーチングとは異なり、図解・問題の再設定を重視するコーチングでは、クライアントの納得はもちろん、プロセスや成果に対する高い評価をいただけています。

  • 認知心理学的アプローチの素養があり、
  • 図解・問題の再設定などに関する学習も重ね、
  • 人事考課や後継者選びといった利害関係や業界の常識などから離れた中立的な立場からの直言が可能で、
  • 新人や若手を採用するよりも費用を抑えることが可能な上に、
  • 福利厚生費などが不要の人財

としての「社外コーチ」の活用が日本で普及していないのは、なぜなのでしょう。

あなたは、「指数関数的変化」「大量の情報を処理する能力」「情報処理の質を高く保つ仕組み」についてどのように考えるのでしょう? そして、「情報処理の質を高く保つ仕組み」として「福利厚生費などが不要の人財」である「社外コーチ」を活用するという案についてはどのようにお考えになるでしょうか?

 

さて今回は、

  •  「情報」はどれくらい増えているのか?
  • 「直感的に理解できる線形的変化」と「直観的な理解が求められる指数関数的変化」
  •  「大量の情報」を処理する能力は充分なのか?
  •  臨界点(閾値)を超えるまで取り組むこと
  •  「情報処理の質」を高く保つ仕組みは確保できているのか?
  • 「福利厚生費などが不要の人財」を使いこなさないのはなぜか?

といった話を通して、「情報が爆発的に増大する環境下で、私たちは今後、何を意識すると良さそうか?」「人間としての総合力」のようなものを向上させるための取り組み(「内省を促進する場」の確保など)について考える機会を持っていただければと考えています。
途中、「戦国時代の茶会」なども飛び出しましたが、あなたは、どのような印象をお持ちになり、何を考えられたでしょうか?

 

何か少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、また次回のニューズレターでお会いしましょう♪

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