人財と組織の育成を支援する「合同会社5W1H」のニューズレター

「納得できるように、物事を主体的に変えていく力」を持った人・組織こそが、「意義深い人生を送る能力」を持った人(から成る組織)であり、「贅沢さとは異なる豊かさを享受し、QOL(人生の質)向上を実現する能力」を持った人・組織である

「『隠れた部分』の吟味プロセス」が「目標設定の成否」を握る!?(第197号)

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2016年12月2日のFacebookページ記事:「システミック? 『症状・障害の解消』や『弱点克服』を超えて!」の中で、「機械などを扱う仕事と異なり、『思考・感情・行動・環境』が相互に影響を及ぼし合い、『状況や状態の変わるクライアントと共に、ダイナミックに協働するコーチング』では、線形思考と併せて非線形思考を取り入れること、『システミック』な視点から、目的と手段について確認することも重要となります。」と書き、図解「『システミック』(systemic:全体論的な)とは?」をご紹介していました。

『システミック』(systemic:全体論的な)とは?

図解:『システミック』(systemic:全体論的な)とは?

今回は、「システミック」という視点から、「『簡潔でわかりやすく、数値化されている目標の設定』は、『適切で効果的な目標設定』とは限らない」という話をご紹介しようと思います。

「問題」と「課題」と「目標」の区別については、ニューズレター第155号:「『課題設定』≠『目標設定』; 『飛んで火に入る夏の虫』!?」(ブログ版)(PDF版)をご参照ください。

 

「目標」は「願望」とは異なります

今回のニューズレターでは、「『簡潔でわかりやすく、数値化されている目標の設定』は、『適切で効果的な目標設定』とは限らない」という話の「核となっているアイディア」の一端についてご理解いただければと思っています。 そこで、解説をなるべく簡素化するために、取り上げる「目標」の例を、「5年以内に1億円を入手する」として話を進めようと思います。

…本来であれば、「売上高、利益率、販売数、管理費に占めるIT費用の割合、新製品開発率、社員定着率、特許取得数、レスポンス・タイム、リード・タイム、平均故障間隔棚卸資産回転率、従業員1人当たりの売り上げ…」などを用いたりして、現実味のある話がよいかもしれませんが、さまざまな読者がいらっしゃることを踏まえて、目標を簡素化させていただきました。 個別の具体的な事例については、各種セミナー等でお尋ねください。

さて、まずあなたは「5年以内に1億円を入手する」という目標について、どんなことを感じられたでしょうか?

表現は、「簡潔でわかりやすく、数値化や期限設定もされている」ため、良い目標だと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 確かに、自分自身の事情について充分に理解した上で、あれこれ納得済みで、この表現を定めた方であれば、この目標に向かってさまざまな行動を起こし、目標を達成されるでしょう。

しかし、「さまざまな事柄を充分に吟味せず、この表現を掲げただけ」であれば、「この目標の達成はかなり難しい」だろうと予想されるのではないでしょうか?

大切なのは、「次のような内容について吟味・納得できているか?」ということです。

「1億円」というのは、「売上」でしょうか、「利益」でしょうか、それとも「税引き後の個人所得」でしょうか? 「個人目標」なのでしょうか、「与えられた目標」なのでしょうか? 「具体的な行動計画」などが表現されていないので、「目標」ではなく「願望」になってしまっていないでしょうか? 「他の何よりも優先される目標」あるいは「5年間かけて達成する、たったひとつの目標」なのでしょうか? 「仕事仲間の協力や、家族の了承」は得られている目標なのでしょうか? … などといった内容について、しっかり考慮されているかどうかが、目標達成の成否に大きな影響を及ぼします。

「5年以内に1億円を入手する」という表現で意図している「本当に望む状態」の実現可能性を高めるには、この表現には出てきていない「隠れた部分」について、吟味しておいた方が良さそうだと感じていただけたでしょうか? 続けて、「隠れた部分」について、いくつかの切り口から見てまいりましょう。

 

「目標」と「手段」を区別しましょう

例えば、本人が「個人目標」として「5年以内に1億円を入手する」ことを掲げようと思っている状況を想定してみましょう。

「協創対話」(合同会社5W1Hコーチング)のような場面では、ご本人の言い方や表情などを観察した上で、<もしかすると>次のような質問を選んで尋ねるかもしれません。

a) それは、「銀行残高の『数字』が1億円分増えて『表示』される状態」だとか、「偽造防止の加工等が施された『紙の束』とい『物体』を1億円相当分入手する状態」だとか、いろいろな解釈がありそうですが、具体的にはどういうことをイメージされていますか?

<解説> この質問は、「紙幣や硬貨といった『お金』というモノ自体を集めるのが好きな『コレクター』(収集家)」なのか、それとも、「価値ある物事と交換するための『手段』として、まずお金を手に入れることが重要だが、『お金自体が欲しいわけではない』のかを見極める」際には役立つ質問です。 普通はこういった質問は選びませんが、「『わかったつもりにならない』のが大事!」というこれまでの主張を「象徴」する例として挙げてみました。

b) 「5年以内に1億円を入手する」ことで、どんなことが可能になるのですか?

<解説> これは、「お金の入手は『手段』に過ぎない」という前提・推測に基づく質問です。 「5年以内に1億円を入手できれば、『定年退職後の生活に漠然とした安心感を得られる』から」なのか、「5年以内に1億円を入手できれば、『○○の手術・入院費用が完済できて、新しい生活を楽しむことができるようになる』から」なのか、「5年以内に1億円を入手できれば、『○○に充分な資金援助/投資が可能になる』から」なのか、「5年以内に1億円を入手できれば、『親や先生や友人たちが間違っていたこと/自分の能力を証明できる』から」なのか、「5年以内に1億円を入手できれば、『独立して起業する準備が完了する』から」なのか…という、「本当に達成したい『目標』を明らかにする」のに役立ちます。

a) やb) のような質問によって、「目標」と「手段」との区別について考えてみてはいかがでしょう? (「目的」と「目標」の区別については、図解を用いて解説することが多いです。寄り道が長くなるので、関心をお持ちの方は、これも各種セミナー等でお尋ねください。)

 

「暗黙の条件」から「大切にしたい事柄」を顕在化させましょう

続いて、「目標達成に向けたさまざまな取り組み」を「継続」していくために、大切なものを顕在化させて、普段から意識するようにしてみましょう。

c) 「5年以内に1億円を入手する」というのは、犯罪に手を染めようが、友人を失おうが、どんなことがあっても達成させる目標なのでしょうか? あなたが目標を達成するにあたって大切にしたい事柄守りたいルールなどには、どんなものがあるのですか?

<解説> 私たちは、普段「自覚」していないかもしれませんが、数多くの条件を「前提」に考えたり話したりしているものです。

例えば、「『お盆や年末年始など、人並みの休暇が得られるなら』、5年以内に1億円を入手したい」とか、「『1日に10時間以上働かなくて済むなら』、5年以内に1億円を入手したい」とか、「『嫌いな相手に頭を下げなくていいなら』、5年以内に1億円を入手したい」とか、「『不法なことや恐ろしい思いをすることをやらなくていいなら』、5年以内に1億円を入手したい」とか、「『働く場所や時間を自由に選んでいいなら』、5年以内に1億円を入手したい」とか…実は、さまざまな暗黙の条件」無意識のうちに設定しているものです。

5年間もあると、途中でビジネス環境が変わったり、お客様の嗜好が変わったり、色々な出来事が起きたりと、状況に変化があることが予想されます。 そこで、(戦争や天災、疫病の大流行などといった例外的な場合でない限り)状況が変化しても目標達成に向けた取り組みを「継続」していくためには、「大切にしたい価値観や信念、判断基準や自分なりのルール」にはどんなものがあるのか?といったことを明らかにしておくことが、非常に重要になってきます。

 

「新たな状況」が引き起こしそうな「副産物」などについて確認しましょう

今度は、この「『目標達成』が引き起こす『新たな状況』がもたらしそうな事柄」について、事前確認を行いましょう。

d) 「5年以内に1億円を入手」する「過程」で、あるいは、「結果」として生じることを「予測」すると、どんな「考えや氣持ち」が湧き起こってきますか?

<解説> 「5年以内に1億円を入手したい」けれど、『本当は、ワーク・スタイルやライフ・スタイルを大幅に変更することは避けたい』とか、「5年以内に1億円を入手したい」けれど、『これまでの自分を否定して、お金の亡者になってしまうのではなく、目標達成後も、身近な人々に好かれる今の私のままでいたい』とか、「5年以内に1億円を入手したい」けれど、『今のままの能力/人脈では、決してそんなことは起きないだろう』とか、「5年以内に1億円を入手したい」けれど、『仕事に掛かりっきりで、子供の日々の成長を見逃したら後悔しそうだ』とか…目標達成によって「起きて欲しいこと」や「起きて欲しくないこと」など「新たな状況を予測」することによって、エコロジー・チェック」(※)を行います。

エコロジー・チェック(Ecology Check)
エコロジー・チェックをする」というのは、システム内における各要素の動的平衡一貫性といったことについて吟味することを指します。 より具体的には、「目標達成に関係する人それぞれが欲しい結果を得る状況(Win-Win)になっているか」、「望ましくない結果が『副産物』として生まれそうにないか」、「家族、友人、職場、社会など『全体の調和』を考えて、目標設定の段階で何かを削除したり、追加したりする必要がないか」などについて「総合的に確かめる」ことです。 エコロジー・チェックによって、「目標自体」や「目標達成方法」を修正することがあります。

 

「『隠れた部分』を吟味するプロセス」を「身体化」させましょう

ここまでお読みいただいて、いかがでしょうか。 前段までの、「5年以内に1億円を入手する」という目標を例に挙げた話で、「『簡潔でわかりやすく、数値化されている目標の設定』は、『適切で効果的な目標設定』とは限らない」ということ、「最初の表現には登場していなかった『隠れた部分』について、吟味しておくことが、『目標達成を効果的にする』ためには重要だ」ということについて、おわかりいただけてきたのではないでしょうか。

2016年12月5日に、Facebookのいくつかの公開グループに投稿した記事では、次のような内容をご紹介していました。

(前略)こう考えると…私たち自身の「働き方」や「生き方」は、「ひとつひとつの要素」について別々に考えた方が良いときもあれば、「システム = さまざまな要素が互いに作用し合いながらも、全体として挙動をする1つのまとまり」だ!と捉えた方が適切な場合も多いのではないでしょうか?

「さまざまな物事がつながり、関係を深めている」状況に適したコミュニケーション、すなわち、「境界を超える対話」「分野横断的な対話」では、「情報伝達」以外の重要度が高くなります。

例えば、「価値観や考え方が異なる人の話(詳細よりも構造)が精密に聴ける(能動的に確認できる)」こと、「自分が当該分野のことについて『知らない』『わからない』と言える」こと、「目的達成などに向けて、現状をどう捉え、異なるリソースをどう用いるのが良いかについて、粘り強く探求できる姿勢」などです。

もし、あなたが「こういったコミュニケーション(弊社でいう「協創対話」)について学ぶ機会」や、「『システム全体を客観的に捉えて観る』ことに、あまり慣れていなくて、今までとは異なる『複数の切り口』から『状況を捉え直す』ような話ができる相手」をお探しでしたら、下記のような機会やサービスのご利用も検討なさってみてください。(後略)

今回取り上げている「目標設定」に絡む話であっても、やはり、それを「絵に描いた餅」で終わらせず「効果的な目標」とするには、「多角的な質問を通して『隠れた部分』を明らかにし、より『納得』がいき、関係者が『実際に望ましい行動を起こす形に修正』していく『思考や対話のプロセス』」が大事だとおわかりいただけるのではないでしょうか。

「仕事や生活の状況や、自分の心身状態もダイナミックに変化する環境での目標設定」は、「思考・感情・行動・環境が相互に影響を及ぼし合うものだという、システミックな視点」に基づいて行わなければ、実践的で効果的なモノにすることは難しいことは、既にご理解いただけたのではないかと思います。

では、こういった「思考や対話のプロセス」「できる」ようになるには、どうすればよいのでしょうか?

2016年11月25日のFacebookページ記事:「『わかる』を『できる』に変える、『身体化プロセス』を学ぶ」では、下記のような内容をご紹介していました。

  • 「わかる」を「できる」に変えるには、「手続き記憶」に昇華させるだけの「プロセス」と「振り返り」が重要!
  • 「自分で使える知識」とは「誰かに与えてもらえるもの」ではなく、「大切な要素は何かを明らかにし、その要素どうしを適切に関連づけた全体像(システム)を自分なりに構成する」という「動的な『探求プロセス』を通して、自分なりに『(再)発見』するもの」だということです。 「自分で発見する」というプロセスを経ているからこそ、「自分で使える」ようになるのです。
  • 新たな出来事に遭遇して「なぜ?」と疑問に思ったことを整理して図解したり、「新しく獲得した情報をどう捉えれば、自分の知識体系と整合性が取れるのだろうか」と考えて、実験したり、データを取って検証したり、「新たな知識を用いて類題を解いて」みたり…という「手続き」「探求プロセス」を経て、「身体化(手続き記憶化)」させる(古い脳の領域にまで踏み込ませる)こと、「(脳の特定部分の局所的な変化だけではなく)要素間のネットワーク(およびその用い方)のアップデート」を行うことが求められるというわけです。

「『わかる』を『できる』に変える、『身体化プロセス』の話」、どのように受け止められたでしょうか?

「目標」を「願望」や「手段」と区別したり、「暗黙の条件」や「副産物」などの「隠れた部分」を吟味したりすることによって、いずれにしろ手間と時間をかけて行う「目標設定」や「面談」の効果を高めることができるようになったら、あなたや関係者には、どんな便益がありそうでしょうか?

しかも、泳ぎ方や自転車の乗り方を身につけるように、「自分の置かれる環境が変わっても一生用いることができるスキル」として身につけることができるのであれば、どの程度の価値を感じられるでしょうか?

今回、「目標設定」の例を通して一部ご紹介したような「協創対話」(合同会社5W1Hコーチング)を身につけることに関心をお持ちの方、弊社流の「目標設定」セミナー等に興味をお持ちの方は、下記のような機会をご利用ください!


合同会社5W1H流コーチング学習プログラム
~適切な課題設定と視点変更を重視する「協創対話」を学ぶ~

まずは、モジュール1『フレームワーク質問力®』の内容や質、雰囲氣を確かめてから、モジュール2に進むことが可能です。

●12月23日(祝・金)~12月24日(土)
フレームワーク質問力®
…1月14日(土)開始の「モジュール2」前に開催される「モジュール1」は、この日程が最後です。「モジュール2」以降の参加を検討されている方は、こちらの日程にご参加ください。

パーソナル・コーチングとエグゼクティブ・コーチング

パーソナル・コーチング(ライフ・コーチング)
~与えられた困難な状況の下で、いかに可能性を切り開き、適応していくのか ほか~
現在、「12月~1月限定『特別プラン』」のお申し込みを受け付け中です!

エグゼクティブ・コーチング
~「状況変化に合わせた自己刷新を促す人財開発」と「タレント・プールを充実させる組織開発」を担う~

●12月29日(木)
アイデンティティ・アップデート
~環境適応するように自己認識が変わると、態度・言動・関係・結果も自然に変わる~

●1月9日(祝・月)
【目標設定セミナー】舵取りコミットメント
~日常の好ましい意思決定の積み重ねで、自分を望ましい航路に導く~


さて今回は、「システミック(全体論的な)」という視点から、「『簡潔でわかりやすく、数値化されている目標の設定』は、『適切で効果的な目標設定』とは限らない」という話について、具体的な目標例(5年以内に1億円を入手する)や質問フレーズ a)~d) なども用いてご紹介してまいりました。 

あなたは「仕事や生活の状況や、自分の心身状態もダイナミックに変化する環境で効果的な『思考や対話のプロセス』、および、その『身体化』」に関して、どのように感じ、どんなことをお考えになったでしょうか? 周囲の方々とお話になってみてくださいね。 それでは、次回のニューズレターでまたお会いしましょう♪

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